薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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国内6剤目のSGLT2阻害剤カナグル錠

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平成26年4月25日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会で田辺三菱製薬のカナグル錠(一般名:カナグリフロジン)の承認を了承しました。
カナグル錠は田辺三菱製薬と第一三共の共同販売で国内6剤目のSGLT2阻害薬となります。

米国初のSGLT2阻害剤

カナグリフロジンは日本薬学会で創薬科学賞の対象となったことも記憶に新しいですが、米国FDAで最初に承認(2013年3月)されたSGLT2阻害薬でもあります。
田辺三菱が開発したカナグリフロジンですが、米国ではinvokanaという商品名でヤンセン・ファーマシューティカルズ社が製造しています。
アメリカ国内では、2013年8月の時点でジャヌビアの処方シェアを抜き1位となっています。
欧州では、カナグリフロジンと速報性メトホルミンの合剤VOKANAMET(1日2回服用のようです)が承認されていますし、米国でも承認間近のようです。

安全基準の厳しい米国で最初に承認されたということが創薬科学賞の受賞理由にもなっていますし、売りとなるところでしょうか。

ちなみに、世界初は欧州で承認されたダパグリフロジン(フォシーガ/Forxiga)です。
ダパグリフロジンとメトホルミンの合剤もXigduoという名前で欧州で承認を受けています。
米国FDAでは、ダパグリフロジンは膀胱がん・乳がんに関するデータの再提出を求められ、承認が遅れてしまい、その間にカナグリフロジンが承認されました。

カナグリフロジンの特徴

SGLT2阻害剤

SGLT2阻害剤については何度も紹介しています。
SGLT2阻害薬その1〜スーグラ承認 - 薬剤師の脳みそ
SGLT2阻害薬その2〜SGLT1/2阻害薬 - 薬剤師の脳みそ
国内2番目のSGLT2阻害剤 フォシーガ - 薬剤師の脳みそ
ルセフィ錠にデベルザ錠・アプルウェイ錠~続々登場のSGLT2阻害剤 - 薬剤師の脳みそ
国内初のSGLT2阻害剤 スーグラ発売~服薬指導や特徴を考えてみる - 薬剤師の脳みそ

SGLT(Sodium-Glucose Transporter:ナトリウムグルコース共輸送担体)には1型と2型が存在します。
近位尿細管における尿の再吸収の90%は2型であるSGLT2がになっています。
一方のSGLT1は主に小腸に存在しており、阻害することで消化器障害を引き起こしてしまいます。
そのため、選択的にSGLT2を阻害する薬剤の開発が進められました。

SGLT1の阻害

ですが、SGLT2を阻害すればするほど、SGLT1の活性が高まることもわかっています。
SGLT1を完全に阻害すると消化器障害を引き起こしてしまいますが、部分的に阻害(partial inhibit)すれば副作用を回避することが可能ということがわかっています。
なので、SGLT2の阻害剤かつSGLT1のpartial inhibitorであれば、より強い効果を発揮するのではないかということが予想されます。

SGLT1部分阻害剤としてのカナグリフロジン

カナグリフロジンはSGLT1のpartial inhibitorとしての活性を持つことが知られています。
ですが、高用量においてその活性が発揮されるようなので、承認された用量でその効果があるかは不明です。
開発中ですが、レキシコンのLX4211はSGLT1/2阻害剤ということですが、それと比べればカナグリフロジンのSGLT1に対する作用は弱いのではないかと予想されます。

カナグルの用法・用量

1日1回100mgを朝食前または朝食後に経口投与

とのことです。
今のところ、フォシーガ以外はすべて朝食前または朝食後の服用ということになりますね。

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