薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
2020年11月からURLが変更となりました。(新URL https://yakuzaishi.love)
  

カナリア配合錠の承認了承〜国内初のDPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬配合剤

m3.comで基礎知識を高めよう
薬剤師の脳みそではm3.comへの登録をお勧めしています。
メルマガやアプリで医薬ニュースを閲覧できるので、毎日医療ニュースに触れることができます。しっかり読む時間がなくても少しずつ知識をたくわえることができ、それが基礎的な力になります。未登録の方は無料登録できるので、是非、下のリンクから登録してください。

(ここからが記事本文になります)

平成29年6月9日、厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会が開催され、新薬6製品の承認が了承されました。
今回は、その中からカナリア配合錠についてまとめます。
カナリア配合錠は国内では初となるDPP-4阻害剤とSGLT2阻害剤の配合剤です。
さあ、何と何の合剤かわかりますか?
ちなみに、成分はテネリグリプチン臭化水素酸塩水和物/カナグリフロジン水和物テネリグリプチン。
この組み合わせの配合剤は世界初になります。
  
  

f:id:pkoudai:20170613215533j:plain
  
  

カナリア配合錠の承認了承

  • 成分名:テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物/カナグリフロジン水和物
  • 製品名:カナリア配合錠
  • 申請者:田辺三菱製薬
  • 効能・効果:2型糖尿病(ただし、テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物及びカナグリフロジン水和物の併用による治療が適切と判断される場合に限る。
  • 用法・用量:「通常,成人には1日1回1錠(テネリグリプチン/カナグリフロジンとして20mg/100mg)を朝食前又は朝食後に経口投与する。」

  
  

テネリア錠とカナグル錠の合剤

さて、答えです(笑)
カナリア配合錠=カナグル錠100mg+テネリア錠20mgです。
非常に覚えやすいネーミングですね。
ありがたいです。
合剤はわかりやすい名前にして欲しいですよね。
ソニ◯ス?リオ◯ル?イニシ◯ク?
  
これまで、日本国内ではDPP4(DiPeptidyl Peptidase-4:ジペプチルプロテアーゼ4)阻害薬とSGLT2(Sodium-GLucose coTransporter 2:ナトリウム・グルコース共輸送体2)阻害薬の合剤は発売されていないので、カナグル配合錠が初になります。
ちなみに、海外ではDPP4阻害剤とSGLT2阻害剤の配合剤は複数発売されています。

  • Glyxambi:リナグリプチン5mg(トラゼンタ錠)+エンパグリフロジン10mg(ジャディアンス錠)、リナグリプチン5mg+エンパグリフロジン25mg
  • Qtern:サキサグリプチン5mg(オングリザ錠)+ダパグリフロジン10mg(フォシーガ錠)

また、日本国内では、ジャヌビア錠(成分:シタグリプチン)+スーグラ錠(成分:イプラグリフロジン)の合剤が開発中です。
  
  

カナリア錠の作用機序

テネリア錠(DPP4阻害剤)とカナグル錠(SGLT2阻害剤)の作用機序ということになります。
簡単に復習しておきますね。
  

DPP4阻害剤テネリアの作用機序

食事を取るとそれに反応して消化管からGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1:Glucagon-Like Peptide-1)というホルモンが分泌されます。
このGLP-1は食後に高くなった血糖値を制御する働きを持っています。

  1. 膵臓β細胞からインスリン(糖の取り込みを促進する)の分泌を促進
  2. 膵臓α細胞からのグルカゴン(肝臓に作用し血中への糖の放出を促進)の分泌を抑制

ですが、GLP-1はDPP-4という酵素の働きによって速やかに分解されてしまいます。
DPP4阻害剤であるテネリア(成分:テネリグリプチン)はDPP4の働きを阻害することでインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制することで血糖降下作用を発揮する薬剤です。
  

SGLT2阻害剤カナグルの作用機序

腎臓の尿細管では排出される糖の一部が再吸収されています。
SGLT2阻害剤であるカナグル(成分:カナグリフロジン)は糖の再吸収に関与しているSGLT2というトランスポーターの働きを阻害します。
その結果、糖の再吸収は抑制され、体内で過剰になっている糖を尿中に効率よく排泄し、血糖降下作用を発揮する薬剤です。
  
  

カナグル錠とテネリア錠を組み合わせるメリット

配合剤を考えるとき、元となる薬の用法が同じかどうかという問題があります。
2型糖尿病の治療薬として、様々な組み合わせの配合剤が発売されていますが、元となる薬の用法と配合剤の用法が異なるものについてはあまり使用されていない印象があります。
配合剤を開発する時点で用法が変化しても効果が著しく損なわれていないかどうかは検討されてはいますが、やはり使いにくく感じてしまいます。
その点、テネリア錠もカナグル錠も1日1回で効果を発揮する薬剤同士の組み合わせなので、配合剤への移行もスムーズに行えるのではないかと思われます。
SGLT2阻害薬は全て1日1回の用法ですが、DPP4阻害剤については1日1回のものと1日2回の用法のものが存在するので、組み合わせによっては配合剤への移行が進みにくいかもしれませんね。
そういう意味で考えるとカナグル錠とテネリア錠の組み合わせというのはいい組み合わせと言えます。
  
  

2型糖尿病に適応を持つ配合剤

最後に2型糖尿病に対する適応を有する配合剤をまとめておきます。
  
チアゾリジン系+BG薬(BiGuanide:ビグアナイド)

  • メタクト配合錠LD:ピオグリタゾン15mg+メトホルミン塩酸塩500mg

  (アクトス錠15mg+メトグルコ錠500mg)

  • メタクト配合錠HD:ピオグリタゾン30mg+メトホルミン塩酸塩500mg

  (アクトス錠30mg+メトグルコ錠500mg)
  
チアゾリジン系+SU剤( SulfonylUre:スルホニルウレア)

  • ソニアス配合錠LD:ピオグリタゾン15mg+グリメピリド1mg

  (アクトス錠15mg+アマリール錠1mg)

  • ソニアス配合錠HD:ピオグリタゾン30mg+グリメピリド3mg

  (アクトス錠30mg+アマリール錠3mg)
  
DPP4阻害薬+チアゾリジン系

  • リオベル配合錠LD:アログリプチン25mg+ピオグリタゾン15mg

  (ネシーナ錠25mg+アクトス錠15mg)

  • リオベル配合錠HD:アログリプチン25mg+ピオグリタゾン30mg

  (ネシーナ錠25mg+アクトス錠30mg)
  
グリニド系+αグルコシダーゼ阻害剤

  • グルベス配合錠:ミチグリニドカルシウム水和物10mg+ボグリボース0.2mg

  (グルファスト錠10mg+ベイスン錠0.2mg)
  
DPP4阻害薬+BG薬

  • エクメット配合錠LD:ビルダグリプチン50mg+メトホルミン塩酸塩250mg

  (エクア錠50mg+メトグルコ錠250mg)

  • エクメット配合錠HD:ビルダグリプチン50mg+メトホルミン塩酸塩500mg

  (エクア錠50mg+メトグルコ錠500mg)

  • イニシンク配合錠:アログリプチン25mg+メトホルミン塩酸塩500mg

  (ネシーナ錠25mg+メトグルコ錠500mg)
  
SGLT2阻害剤+DPP4阻害剤(未承認)

  • カナリア配合錠:カナグリフロジン100mg+テネリグリプチン20mg

  (カナグル錠100mg+テネリア錠20mg)

© 2014- ぴーらぼ inc. プライバシーポリシー