薬剤師の脳みそ

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オプジーボに肺癌の適応、ルコナック新規爪白癬外用薬等の承認了承

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平成27年11月30日、厚労省の薬食審医薬品第二部会が開催されました。
今回の部会ではオプジーボの肺がんへの適応拡大が承認されています。
薬局では新規爪白癬外用薬ルコナックが気になるところです。

オプジーボが肺がんへの適応取得

  • 商品名:オプジーボ点滴静注20mg、オプジーボ点滴静注100mg
  • 成分名:ニボルマブ(遺伝子組換え)
  • 申請者:小野薬品
  • 追加される効能・効果:切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
  • 追加される用法・用量:通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回3mg/kg(体重)を2週間間隔で点滴静注する。

PD-1免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ

免疫チェックポイント分子PD-1

活性化された免疫細胞(T細胞やB細胞)の表面には、PD-1(Programmed cell death-1)と呼ばれる、免疫細胞のアポトーシス(細胞自己死)に拘わる分子が存在しています。
PD-1は免疫のブレーキ役(免疫チェックポイント)として免疫応答を調節しています。
PD-1に特異的に結合する物質(リガンド)とて発見されたのがPD-L1とPD-L2です。
活性化された免疫細胞表面のPD-1にPD-L1が結合すると、免疫細胞としての反応が抑制されてしまいます。

がん細胞はPD-1を介して免疫細胞を抑え込む

がん細胞は免疫反応によって倒せることが知られていますが、体内でがん細胞が増殖に傾いたとき、つまり、がんになったときは、がん細胞に対する免疫反応が十分に行われていない状態です。
がん細胞の表面にPD-L1が発現していると、免疫細胞ががん細胞を抗原と認識していても、免疫反応は抑制されてしまい、免疫細胞はがん細胞を攻撃する力を失ってしまいます。

ニボルマブの作用機序

ニボルマブはPD-1の細胞外領域(PD-1リガンド結合領域)に結合することで、PD-1とPD-L1の結合を阻害します。
その結果、免疫反応にかかっていたブレーキが解除され、がんを抗原とする抗原抗体反応を増強、悪性腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。

クレナフィンに続く爪白癬外用薬ルコナック

  • 商品名:ルコナック爪外用液5%
  • 成分名:ルリコナゾール
  • 申請者:佐藤製薬
  • 効能・効果:爪白癬
  • 追加される用法・用量:1日1回罹患爪全体に塗布する

ルリコンとルコナックの違い

ルリコナゾールといえば、ルリコンですね。
ルリコン液がすでに発売されていますが、爪白癬への適応はありません。
今のところわかる違いは、ルコナックは5%、ルリコンは1%ということです。
濃度の違いにより、爪組織への吸収を高めた・・・ということなのでしょうか?

ルリコナゾールの働き

ルリコナゾールはイミダゾール系抗真菌薬です。
真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの合成を阻害することにより抗真菌作用を示します。

レミケードに川崎病に対する適応追加

  • 商品名:レミケード点滴静注用100
  • 成分名:インフリキシマブ(遺伝子組換え)
  • 申請者:田辺三菱製薬
  • 追加される効能・効果:川崎病の急性期

川崎病

川崎病は、主に4歳以下で発症する全身性血管炎を主症状とする疾患です。
急性期では免疫グロブリン大量点滴静注(IntraVenous ImmunoGlobulin:IVIG)療法が標準的治療に位置づけられていますが、約15%が初回IVIG療法に不応ともされています。

川崎病とTNF-α

川崎病の患児では血清中のTNFα濃度が上昇していることが知られています。
インフリキシマブは、抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体なので、川崎病の症状を改善することが可能です。

皮膚T細胞性リンパ腫治療薬タルグレチンカプセル

  • 商品名:タルグレチンカプセル75mg
  • 成分名:ベキサロテン
  • 申請者:ミノファーゲン製薬
  • 効能・効果:皮膚T細胞性リンパ腫

皮膚T細胞性リンパ腫

リンパ球が皮膚で活性化しながら増殖するのが皮膚リンパ腫ですが、皮膚T細胞性リンパ腫はT細胞非ホジキンリンパ腫です。
日本の皮膚T細胞性リンパ腫の患者数は推定約2000人です。

ベキサロテンの働き

ベキサロテンは合成レチノイドで、レチノイドX受容体に結合することで、アポトーシス誘導や細胞周期の停止作用を発揮します。
その結果、腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。

メタコリンを用い検査薬

  • 商品名:①プロボコリン吸入粉末溶解用100mg、②ケンブラン吸入粉末溶解用100mg
  • 成分名:メタコリン塩化物
  • 申請者:①三和化学研究所、②参天製薬

効能・効果:気道過敏性検査

メタコリンによる気道過敏性検査

コリン作動薬であるメタコリンを用いた気道過敏性検査は非典型的な臨床像を呈する気管支喘息の確定診断や、喘息治療のモニタリング及び喘息重症度の客観的な評価に用いられる検査法として確立しています。
これまでは研究用試薬を用いて行われていたが、日本アレルギー学会が開発要望した結果、三和化学研究所と参天製薬が開発を行いました。

報告品目

レブラミドが未治療の多発性骨髄腫にも使用可能に

  • 商品名:レブラミドカプセル2.5mg、レブラミドカプセル5mg
  • 成分名:レナリドミド水和物
  • 申請者:セルジーン
  • 変更される効能・効果:「再発又は難治性の多発性骨髄腫」 → 「多発性骨髄腫」

コセンティクスが膿疱性乾癬に使用可能に

  • コセンティクス皮下注150mgシリンジ、コセンティクス皮下注用150mg
  • 成分名:セクキヌマブ(遺伝子組換え)
  • 申請者:ノバルティス ファーマ
  • 追加される効能・効果:既存治療で効果不十分な膿疱性乾癬


まとめ

今回の第二部会で審議されたものは薬局では扱う機会の少ないものばかりですが、ルコナックは調剤する機会がありそうですね。
ただ、オプジーボのように薬剤師であればしっかり知っておきたい薬剤も多いので勉強しておきたいところです。
適応拡大が多かったので、対象となる患者さんにとって、うれしいニュースとなればいいですね。

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