薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。何卒、ご理解ください。   

ロゼックスゲル~日本で初めて「がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減」に対する適応を持つ薬剤

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(ここからが記事本文になります)

2014年11月28日、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会でガルデルマが申請したロゼックスゲル0.75%(一般名:メトロニダゾール)の承認が了承されました。
ロゼックスゲル0.75%はその後、2014年12月26日付で製造承認を取得、2015年2月24日に薬価収載され、5月11日に発売となりました。
日本で初めて「がん性皮膚潰瘍部位の殺菌、臭気の軽減」を効能・効果とする医薬品です。
2018年3月1日にマルホがガルデルマから製造販売承認を承継を受け、現在はマルホが販売を行っています。
  
  

ロゼックスゲル
  
  

がん性悪臭とは?

再発・再燃ガンなど進行性の高い癌ではがん細胞が皮膚表面まで浸潤したり、皮膚組織に転移することによって癌性皮膚潰瘍が生じます。
癌性皮膚潰瘍は特に乳がんや胃癌で多く見られる(4%程度との報告あり)ことが知られています。
皮膚潰瘍部分は滲出液が多く、嫌気性菌が感染しやすくなっており、壊死に伴う臭気を放つことがあります。
癌性皮膚潰瘍による出血や悪臭は本人のQOL*1を低下させるだけでなく、看護や介護を行う家族や医療従事者等にも心理的苦痛を与えます。
  

がん性悪臭の原因は?

癌性皮膚潰瘍臭を起こすのは以下のような嫌気性菌であることが知られています。

  • Bacteroides fragilis
  • Prevotella属
  • Fusobacterium nucleatum
  • Clostridium perfringens
  • 嫌気性球菌 等

これらの菌の代謝産物である揮発性短鎖脂肪酸(酪酸、吉草酸等)と皮膚組織の腐敗によって生じるポリアミン類の臭気物質のプトレシン、カダベリンが臭いの原因であることが知られれいます。
  

メトロニダゾール外用剤による治療

嫌気性菌に対して静菌/殺菌作用を発揮するメトロニダゾール(MTZ*2)ががん性悪臭に対して有効であることが知られています。
経口投与による副作用のリスクを避けることや効果の点を考慮して外用剤が有用とされています。
実際に、メトロニダゾール外用剤による局所治療は世界保健機関(WHO*3)、米国臨床腫瘍学会(ASCO*4)のガイドラインで推奨されています。

  • Symptom relief in terminal illness(WHO Library Cataloguing in Publication data、 1998)
  • ASCO 公式カリキュラム「がん症状緩和の実際」(米国臨床腫瘍学会、2003)

ただし、ロゼックスゲルの登場まではメトロニダゾール外用薬(塗り薬)は存在せず、フラジール錠やフラジール膣錠を粉砕・溶解し、ワセリンや親水性軟膏などの基材と混合した院内製剤で対応していました。
そのため、2010年に日本緩和医療学会、日本緩和医療薬学会からMTZ*5外用剤の開発要請が上がり、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の推薦を受け、英国でMTZゲルを販売しているガルデルマが日本で開発を行ったのがロゼックスゲルです。
  
  

ロゼックスゲルってどんな薬?

ロゼックスゲルは日本で初めてがん性悪臭に対する適応を持つ薬です。
メトロニダゾールを成分とする唯一の塗り薬でもあります。
  

基本情報

  • 医薬品名(収載時薬価):ロゼックスゲル0.75%(101.40円/g)
  • 命名:メトロニダゾール(Metronidazole)の下線部(ro+z)に由来
  • 成分名:メトロニダゾール
  • 製造販売元:マルホ
    ※製造販売承認時はガルデルマだったが2018年3月1日にマルホが製造販売承認を承継
  • 承認日:2014年12月26日
  • 承認承継日:2018年3月1日
  • 薬価収載日:2015年2月24日
  • 発売日:2015年5月11日
  • 新医薬品の処方日数制限:解除済あり(2016年2月末日)

  

有効成分メトロニダゾールの作用機序

ロゼックスゲルの有効成分であるメトロニダゾールはニトロイミダゾール系に分類される抗菌薬です。
メトロニダゾールは嫌気性菌(もしくは原虫)内に取り込まれた後、ニトロレダクターゼによって還元され、ニトロソ化合物に変化します。
一つ目の作用として、このニトロソ化合物が嫌気性菌に対する殺菌作用(抗原虫作用)を示します。
また、ニトロソ化合物が生成される過程でヒドロキシルアミン付加体(ヒドロキシラジカル)が発生し、これがDNAを切断するなどの細胞障害活性を示すことで殺菌作用を発揮すると言われています。
  
ロゼックスゲルは皮膚潰瘍部分に塗布することで、患部の嫌気性菌に対して直接効果を発揮し、増殖を抑制します。
その結果、皮膚の壊死やそれに伴う悪臭の発生を抑制することが期待される薬剤です。
  
  

DI

ここからはロゼックスゲルの添付文書・インタビューフォーム・RMPについて詳しく見ていきたいと思います。

  

禁忌

禁忌はメトロニダゾール内服薬であるフラジール内服錠に準じたものになっています。
【禁忌(次の患者には投与しないこと)】

  1. 既往に本剤の成分に対する過敏症を起こした患者
  2. 脳、脊髄に器質的疾患のある患者(脳膿瘍の患者を除く)[中枢神経系症状があらわれることがある。]
  3. 妊娠3ヵ月以内の婦人(有益性が危険性を上回ると判断される疾患の場合は除く)

引用元:ロゼックスゲル 添付文書

「脳、脊髄に器質的疾患のある患者」ですが、これはメトロニダゾールの内服で「脳症、痙攣、意識障害、構語障害、錯乱、幻覚、小脳失調等の中枢神経障害」が重大な副作用として記載されているためだと思います。
中枢神経障害はロゼックスゲルの副作用には記載されていませんが、ロゼックスゲルは潰瘍部分に塗布すると言う使用方法から全身への移行が考えられます。
〔使用上の注意〕
2.重要な基本的注意
(1)本剤の皮膚潰瘍部位への塗布により全身吸収が認められるため、塗布部位が広範囲の場合等には、経口用又は点滴静注用製剤の投与により認められる副作用(末梢神経障害、中枢神経障害、白血球減少、好中球減少など)が、血中濃度の上昇により発現するおそれがある。異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
引用元:ロゼックスゲル 添付文書
と言うことで、内服薬ほどではないにしろ、同様の性質を持つことを想定しておく必要があります。
また、妊娠3ヵ月以内び投与に関しては、以下のように「6.妊婦、産婦、授乳婦等への使用」の項に記載されています。
6.妊婦、産婦、授乳婦等への使用
(1)胎児に対する安全性は確立していないので、妊娠3ヵ月以内は使用しないこと。(妊婦への経口投与により、胎盤関門を通過して胎児へ移行することが報告されている。)
引用元:ロゼックスゲル 添付文書
  

効能・効果

適応はすでに紹介した通りですね。
〔効能・効果〕
がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減
引用元:ロゼックスゲル 添付文書
  

用法・用量

用法・用量は以下の通りです。
〔用法・用量〕
症状及び病巣の広さに応じて適量を使用する。潰瘍面を清拭後、1日1〜2回ガーゼ等にのばして貼付するか、患部に直接塗布しその上をガーゼ等で保護する。
引用元:ロゼックスゲル 添付文書
これに関しては「2.重要な基本的注意」に注意事項が記載されれいます。
〔使用上の注意〕
2.重要な基本的注意
(2)患部を刺激することにより、潰瘍部位の血管が損傷し、出血を招くことがあるので、ガーゼの交換等の処置は十分注意して行うこと。
引用元:ロゼックスゲル 添付文書
  

ロゼックスゲルの使用方法と癌性皮膚潰瘍のガーゼ交換

癌性皮膚潰瘍の特徴として、微細血管が豊富な腫瘍が剥き出しになっており、壊死を起こし滲出液が多くなっています。
乾燥することでガーゼが潰瘍部分に付着してしまい、それを剥がそうとする少しの刺激で出血し、それがなかなか止まらない状態にあります。
そのため、ガーゼ交換の際に出血を起こさないように注意が必要になります。
このあたりを踏まえて、ロゼックスゲルについてはマルホから指導せん(ロゼックス®ゲル0.75%を使用される方へ)が用意されています。
ロゼックスゲルの使い方となっていますが、癌性皮膚潰瘍の際のガーゼ交換のマニュアルにもなっていますね。
ロゼックスゲルの使い方
ポイントは付着したガーゼを無理に剥がすことで潰瘍部分を傷つけないために、しっかり濡らしてからゆっくり剥がすと言うことですね。
資料には患者さん用の動画にリンクしているQRコードも掲載されています。
動画で見れるのはわかりやすくていいですね。
  

ロゼックスゲルの塗布量

ただ、この資料にはロゼックスゲルの塗布量は記載されていません。
塗布量については がん性皮膚潰瘍ケアチャンネル(ロゼックス®ゲル0.75% 製品サイト)FAQに目安が掲載されています。
Q 塗布量(使用量)はどのくらいですか。塗布量の目安について教えてください。
A 症状及び病巣の広さに応じて適量を使用してください。使用量について明確に規定されていません。
◆参考情報
弊社では10cm×10cmの潰瘍に約8gの投与量を推奨しております。約8gの目安としては、10cm×10cmの中央にロゼックス®ゲルを渦巻状に約3周、直径4.2cm~4.6cmの円を埋めるように出すと約8gとなります1)
なお、弊社Webサイトに患者さんの潰瘍サイズを入力し、1日投与回数(1回/日、2回/日)と投与日数を選択・入力するとだけで、ロゼックス®ゲルの1回投与量、1日投与量、処方本数の目安が簡単に分かる投与量カリキュレーターを掲載しています。是非一度ご覧ください。
https://www.maruho.co.jp/medical/ganseihifukaiyou/rozexgel/tool/calculator.html
1) 社内資料(ロゼックス®ゲルの投与量に関する検討)
引用元:がん性皮膚潰瘍ケアチャンネル FAQ 使用法
この他、FAQには滲出液が多い時の対策や皮膚への付着がひどい場合の対策についても回答されているので一度目を通しておくべきです。
  

そのほか使用する上での注意点

「2.重要な基本的注意」には他にも以下の内容が記載されています。
〔使用上の注意〕
2.重要な基本的注意
(3)刺激感を伴う皮膚症状が認められた場合は、使用回数を減らす又は一時的に本剤の使用を中止し、必要に応じ医師の指示を受けるよう患者に指導すること。
(4)本剤の使用中は、日光又は日焼けランプ等による紫外線曝露を避けること。本剤は紫外線照射により不活性体に転換され、効果が減弱することがある。
引用元:ロゼックスゲル 添付文書
塗布後の患部が紫外線に当たることはそうそうないとは思うのですが、紫外線により効果が減弱する可能性があることは頭に置いておきたいですね。
  

相互作用

上に記載したように潰瘍部に塗布することから内服同様の性質を持つ薬剤として考える必要があるため、相互作用も考慮する必要があります。
相互作用については一覧として列挙しておきます。
全て併用注意です。
併用注意(併用に注意すること)

  • アルコール:メトロニダゾールがアルコールの代謝過程においてアルデヒド脱水素酵素を阻害するため、血中アセトアルデヒド濃度が上昇
  • リトナビル含有製剤(内用液):リトナビル含有製剤(内用液)がアルコールを含有するため
  • ジスルフィラム:機序は不明だが精神症状(錯乱等)があらわれることがある
  • クマリン系抗凝血剤(ワルファリン等):メトロニダゾールがワルファリンの代謝を阻害するため、その血中濃度が上昇
  • リチウム:機序は不明だがリチウムの血中濃度が上昇し、リチウム中毒があらわれる
  • 5-フルオロウラシル:機序は不明だがメトロニダゾールが5-フルオロウラシルの全身クリアランスを低下させる
  • ブスルファン:メトロニダゾールがブスルファンの血中濃度を上昇
  • シクロスポリン:メトロニダゾールがシクロスポリンの血中濃度を上昇
  • フェノバルビタール:フェノバルビタールはメトロニダゾールの代謝酵素を誘導し、その血中濃度を低下させる

  

その他の注意

「9.その他の注意」には以下のように記載されているので念のため頭に入れておきましょう。
〔使用上の注意〕
9.その他の注意
本剤の長期の使用経験はないため、本剤を長期に使用する場合には、投与の継続を慎重に判断すること。また本剤の塗布時には、患部の状態を観察し、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。なお、動物にメトロニダゾールを長期経口投与した場合、マウスでは肺腫瘍が、またラットでは乳房腫瘍の発生が報告されているが、ハムスターの生涯投与試験では腫瘍はみられていないとの報告がある。
引用元:ロゼックスゲル 添付文書
  

RMPに記載されている内容について

RMPに記載されているリスクは以下の通りです。
  • 重要な特定されたリスク:潰瘍部位からの出血
  • 重要な潜在的リスク:末梢神経障害
一つずつまとめておきます。
  

潰瘍部位からの出血

使用方法の部分でも触れましたが、潰瘍部分からの出血が最重要リスクになっています。
重要な特定されたリスク:潰瘍部位からの出血
重要な特定されたリスクとした理由:国内臨床試験(がん性皮膚潰瘍の悪臭に対する治療における安全性及び有効性に関する14日間のオープン試験:第3相試験)において、潰瘍部位からの出血(皮膚新生物出血)の副作用が9.5%(2/21例)で報告されたため。 悪性腫瘍が皮膚に浸潤あるいは転移し、その後増大、自壊すると出血しやすくなる。さらにドレッシング材が表層に接すると固着し剥がす際に表層を断裂させる可能性がある。したがって、交換の機械的操作が誘引となり、出血のリスクが増大する。出血が大量となった場合にはショック、貧血、心不全、意識障害等の全身性の症状が出現し、重篤化する可能性もある。
引用元:ロゼックスゲル RMP
これについては薬剤の性質というよりがん性皮膚潰瘍の性質に近いとは思いますが、ロゼックスゲルを使用したことで出血を起こし、それが重篤になるというのは防がなければいけません。
  

末梢神経障害

重要な潜在的リスク:末梢神経障害
重要な潜在的リスクとした理由:海外の市販後において、メトロニダゾールの局所使用により、手足に末梢神経障害が発現した症例が12例報告されているが、大部分が回復又は軽快していた。また、メトロニダゾールの高用量(経口剤又は注射剤)を使用した場合に、重篤な末梢神経障害を発現することが知られており、本剤の広範囲への塗布により血漿中濃度が増加し、経口剤及び注射剤と同様の副作用が発現する可能性もある。なお、国内第3相臨床試験において、末梢性感覚ニューロパチーの有害事象1例(4.8%)が報告されている。
引用元:ロゼックスゲル RMP
潰瘍部分からの吸収を考えれば、高用量、長期間の使用になればそのリスクは高まるということを頭に置いておかなければいけませんね。
  
  

まとめ・雑感

今回は「がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減」に対する適応を持つメトロニダゾール外用薬 ロゼックスゲルについてまとめました。
内服(フラジール内服錠)、婦人科外用薬(フラジール膣錠)として古くから存在している薬ですが、原虫や嫌気性菌に対して殺菌的に作用することから幅広い範囲で使用されている薬です。
その性質に注目し、癌性皮膚潰瘍に対して使用される外用剤が開発されたというのは実に興味深いなと感じました。
薬局で勤務する中では頻繁に扱う機械のある薬ではありませんが、在宅医療が進む中、全く出会う機会のない薬ではないと思います。
治療というよりはQOLの改善に重点をおいた薬なので使用により返ってQOLが低下してしまうことがないように、適切に使用してもらえるような指導が重要になると思います。
そのためには、こちらがしっかり理解しておきたいですね。
  

皮膚科の自由診療でも使用されている?

今回、いろいろと調べている中で、皮膚科の自由診療でロゼックスゲルを紹介しているページをいくつか見つけました。
保険適応外で「酒さ」に使用しているクリニックがあるようですね。
酒さの原因となる寄生虫(Demodex folliculorum:ニキビダニ)に対してメトロニダゾールが効果を発揮するようで、実際に海外では酒さに対する適応を持つメトロニダゾール外用薬が販売されているようです。
ですが、日本においてロゼックスゲルは酒さに対しての適応は取得していないので注意してください。
  

参考にしたページや資料

*1:Quolity Of Life

*2:MeTronidaZole

*3:World Health Organization

*4:American Society of Clinical Oncology

*5:MeTronidaZole

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