薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
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アミオダロンによる無顆粒球症など〜平成30年6月5日 添付文書改訂指示

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(ここからが記事本文になります)

平成30年6月5日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品について、添付文書の使用上の注意を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回は7つの成分に対して改訂指示が出されています。
  
※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。
  
  

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使用上の注意の改訂指示(平成30年6月5日)

PMDAへのリンクを貼っておきます。

  
メトロニダゾールによる肝機能障害とコケイン症候群については別記事に少し詳しくまとめています。
pharmacist.hatenablog.com
  
  

アミオダロン塩酸塩(アンカロン)による無顆粒球症、白血球減少

アミオダロン塩酸塩の「使用上の注意」の改訂について
  
添付文書改訂の対象となる医薬品の名称は以下のとおりです。

(リンクはそれぞれの添付文書)
    

添付文書改訂内容

添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に以下の内容が追記されます。
無顆粒球症、白血球減少:無顆粒球症、白血球減少があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止する等の適切な処置を行うこと。
  

症例報告

直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、アミオダロン塩酸塩の影響が疑われる無顆粒球症、白血球減少関連症例が3例報告されており、そのうち1例は因果関係が否定できないものでした。
死亡例の報告はありません。
  
  

ペグフィルグラスチム(ジーラスタ)・フィルグラスチム(グラン)・レノグラスチム(ノイトロジン)による大型血管炎

ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)、 フィルグラスチム(遺伝子組換え)[バイオ後続品を含む]及びレノグラスチム(遺伝子組換え)の「使用上の注意」の改訂について
  
添付文書改訂の対象となる医薬品の名称は以下のとおりです。

(リンクはそれぞれの添付文書)
  
いずれも顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF*1)で、がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制などに使用されます。
    

添付文書改訂内容

添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に以下の内容が追記されます。
大型血管炎(大動脈、総頸動脈、鎖骨下動脈等の炎症):大型血管の炎症が発現することがあるので、発熱、CRP上昇、大動脈壁の肥厚等が認められた場合には、本剤の投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
  
大型血管炎とは?
大型血管炎について少し調べてみました。
血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版) Guidelines for Management of Vasculitis Syndrome(JCS 2017)
2.診療ガイドライン作成の方針
2.1 対象疾患
原発性血管炎は一般に CHCC2012を用いて表記され、罹患血管サイズに基づいて大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎に分類される。大型血管は大動脈とその主要分枝およびこれに対応する静脈と定義され,大型血管炎には高安動脈炎と巨細胞性動脈炎が含まれる。
高安動脈炎と巨細胞性動脈炎は難病指定を受けています。
自己免疫的な機序により発症する疾患のようですが、薬剤により免疫系に以上が起こり発症するのでしょうか?
  

症例報告

ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)
直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)の影響が疑われる大型血管炎関連症例が16例報告されており、そのうち11例は因果関係が否定できないものでした。死亡例の報告はありません。
  
フィルグラスチム(遺伝子組換え)
直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、フィルグラスチム(遺伝子組換え)及び他バイオ後続品の影響が疑われる大型血管炎関連症例が2例報告されており、そのうち1例は因果関係が否定できないものでした。死亡例の報告はありません。
  
レノグラスチム(遺伝子組換え)
直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、レノグラスチム(遺伝子組換え)の影響が疑われる大型血管炎関連症例が2例報告されており、2例とも因果関係が否定できないものでした。死亡例の報告はありません。
  
  

エベロリムス(アフィニトール)による創傷治癒不良

エベロリムス(販売名:アフィニトール錠 2.5mg、同錠 5mg、同分散錠 2mg、同分散錠 3mg)の「使用上の注意」の改訂について
  
添付文書改訂の対象となる医薬品の名称は以下のとおりです。

(リンクはそれぞれの添付文書)
  
哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR:mammalian Target Of Rapamycin)阻害剤で悪性腫瘍治療薬として使用されています。
同成分のサーティカンは「臓器移植における拒絶反応の抑制」に対して使用されており、 2018年2月改訂ですでに重大な副作用に「創傷治癒不良」が追加されています。
    

添付文書改訂内容

添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に以下の内容が追記されます。
創傷治癒不良:創傷治癒不良や創傷治癒不良による創傷感染、瘢痕ヘルニア、創離開等の合併症があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
  

症例報告

直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、エベロリムスの影響が疑われる関連症例はありません。
今回の改訂理由については以下のように説明されています。
同一有効成分を含有するサーティカン錠0.25mg、同錠0.5mg、同錠0.75mgにおける製造販売承認事項一部変更承認審査において、臨床試験結果及び専門委員の意見を踏まえ、「重大な副作用」の項に「創傷治癒不良」が追記されたことから、専門委員の意見も踏まえた調査の結果、同一有効成分かつ高用量となるアフィニトール錠2.5mg、同錠5mg、同分散錠2mg、同分散錠3mgにおいても同様の改訂をすることが適切と判断した。
  
  

エフトレノナコグ アルファ(オルプロリクス静注用)によるショック、アナフィラキシー

エフトレノナコグ アルファ(遺伝子組換え)の 「使用上の注意」の改訂について
  
添付文書改訂の対象となる医薬品の名称は以下のとおりです。

(リンクはそれぞれの添付文書)
    

添付文書改訂内容

添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に以下の内容が追記されます。
ショック、アナフィラキシー:ショック、アナフィラキシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
  

症例報告

直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、エフトレノナコグ アルファ(遺伝子組換え)の影響が疑われるショック、アナフィラキシー関連症例が1例報告されており、因果関係が否定できないものでした。
死亡例の報告はありません。
  
  

メトロニダゾール(フラジール、アネメトロ、ヘリコバクター・ピロリ二次除菌パック)による肝機能障害

メトロニダゾール含有製剤(経口剤及び注射剤) の「使用上の注意」の改訂について
  
添付文書改訂の対象となる医薬品の名称は以下のとおりです。

(リンクはそれぞれの添付文書)
  

添付文書改訂内容

添付文書の「慎重投与」の項に以下の内容が追記されます。
コケイン症候群の患者
また、「重要な基本的注意」の項には以下の内容が追記されます。
肝機能障害があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を実施するなど、患者の状態を十分に観察すること。
さらに、「副作用」の「重大な副作用」の項に以下の内容が追記されます。
肝機能障害:肝機能障害があらわれることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。コケイン症候群の患者で重度の肝毒性又は急性肝不全が発現し死亡に至ったとの報告がある。
  

症例報告

メトロニダゾール(経口剤及び注射剤)
直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、メトロニダゾール(経口剤及び注射剤)の影響が疑われる肝機能障害関連症例が4例報告されており、そのうち2例が因果関係が否定できないものでした。死亡例の報告はありません。
  
各配合剤(ランソプラゾール・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール、ラベプラゾールナトリウム・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール)
直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、メトロニダゾール各配合剤の影響が疑われる肝機能障害関連症例はありませんでした。

*1:Granulocyte-Colony Stimulating Factor

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