薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
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プロマックによる銅欠乏、ザイロリックによるDIHSなど〜平成28年11月22日添付文書改訂指示

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(ここからが記事本文になります)

平成28年11月22日、厚生労働省医薬・生活衛生局は、新たな副作用が確認された医薬品について、添付文書を改訂するよう日本製薬団体連合会に通知しました。
今回は、プロマック(成分名:プラプレジンク)による銅欠乏症、ザイロリック(成分名:アロプリノール)による薬剤過敏性症候群、ネシーナ等(成分名:アログリプチン)、トラゼンタ(成分名:リナグリプチン)、テネリア(成分名:テネリグリプチン)による類天疱瘡などの追記が指示されています。
特にポラプレジンクによる銅欠乏症については、投与中止が遅れたケースがあったため、周知徹底の案内も出されています。
  
※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。
  
  

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使用上の注意の改訂指示(平成28年11月22日)

PMDAへのリンクを貼っておきます。
www.pmda.go.jp
  
  

ポラプレジンクによる銅欠乏症

添付文書改訂の対象となる主な商品名は以下のとおりです。

  • プロマック顆粒15%
  • ポラプレジンク顆粒15%
  • プロマックD錠75
  • ポラプレジンクOD錠75mg

  
添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に以下の文章が追記されます。

銅欠乏症:本剤は亜鉛を含有するため、亜鉛により銅の吸収が阻害され銅欠乏症を起こすことがある。栄養状態不良の患者で銅欠乏に伴う汎血球減少や貧血が報告されているため、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。

  
直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、銅欠乏症関連症例が9例(うち、因果関係が否定できない症例は8例だったが、4例は適応外使用)報告されているようです。
死亡例はないようですが、重篤な汎血球減少を来して輸血を要し、本剤の投与中止が遅れた症例が報告されたいたため、同日付で「ポラプレジンクの「使用上注意」改訂周知について(依頼)」(薬生安発1122第2〜3号)が出されています。
https://www.pmda.go.jp/files/000215031.pdf
  
主に以下の点について注意を行なうように記載されています。

  • 本剤は亜鉛を含有するため、亜鉛により銅の吸収が阻害され銅欠乏症を起こすことがあることに留意すること 。
  • 栄養状態不良の患者で銅欠乏に伴う汎血球減少や貧血が報告されているので、患者の症状や臨床検査値に注意すること 。
  • 異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。

  
  

銅欠乏症の原因と症状

銅欠乏症というものをあまり耳にすることがなかったので簡単に調べてみました。
通常、銅は食品を介して人体に取り込まれます。
ですが、今回、ポラプレジンクによる銅欠乏症が起こったように、亜鉛を過剰に摂取した場合、銅の吸収が阻害されてしまうことがあります。
他には、鉄を過剰に摂取した場合や、長期間にわたって経腸栄養を摂取した場合、極端な偏食によって起こる可能性があります。
  

銅欠乏による貧血

体内に入ってきた銅はセルロプラスミンと結合します。
銅と結合したセルロプラスミンの働きにより、2価の鉄イオンは酸化され、3価の鉄イオンとなります。
その結果、鉄はその輸送タンパク質であるアポトランスフェリンに取り込まれ、血液中に運ばれます。
銅が欠乏した結果、セルロプラスミンが働かず、鉄輸送が阻害される結果、鉄欠乏性の貧血が生じてしまいます。
  
  

ホルマリンによるショック・アナフィラキシー

ホルマリン関連製剤については、歯科適応をもつものと持たないものとで改訂内容が異なります。
先に症例についてまとめます。
直近3年度の国内副作用症例の集積状況でのショック・アナフィラキシー関連症例の報告はそれぞれ以下のとおりです。

  • ホルマリン:0例
  • ホルマリン・クレゾール:2例(うち、因果関係が否定できない症例は1例)、死亡例はなし
  • クレゾール・ホルマリン・チョウジ油・酸化亜鉛:0例
  • ホルマリン・グアヤコール:0例

  
  

ホルマリン製剤

添付文書改訂の対象となる主な商品名は以下のとおりです。

  • ホルマリン

  
添付文書に「禁忌」の項を新たに設けられ、以下の内容が追記されます。

〈歯科領域の場合〉
「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」

  
また、「副作用」の項に新たに「重大な副作用」として、以下の文章が追記されます。

〈歯科領域の場合〉
ショック、アナフィラキシー:ショック、アナフィラキシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、蕁麻疹、そう痒、呼吸困難、血圧低下等の異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。

  
  

ホルマリン含有製剤

添付文書改訂の対象となる主な商品名はそれぞれ以下のとおりです。

  • ホルマリン・クレゾール
    • クリアエフシー
    • ホルムクレゾールFC
    • ホルモクレゾール歯科用消毒液
    • 歯科用ホルマリンクレゾール
    • 歯科用ホルムクレゾール
  • クレゾール・ホルマリン・チョウジ油・酸化亜鉛
  • パルパックV

  • ホルマリン・グアヤコール
  • ホルマリン・グアヤコールFG

  •   
    添付文書に「禁忌」の項を新たに設けられ、以下の内容が追記されます。

    本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

      
    また、「副作用」の項に新たに「重大な副作用」として以下の文章が追記されます。

    ショック、アナフィラキシー:ショック、アナフィラキシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、蕁麻疹、そう痒、呼吸困難、血圧低下等の異常が認められた場合には、適切な処置を行うこと。

      
      

    アロプリノールによる薬剤性過敏症症候群

    添付文書改訂の対象となる主な商品名は以下のとおりです。

    • ザイロリック錠50mg
    • ザイロリック錠100mg
    • アロプリノール錠50mg
    • アロプリノール錠100mg
    • アノプロリン錠50mg
    • アノプロリン錠100mg
    • アリスメット錠50mg
    • アリスメット錠100mg
    • アロシトール錠50mg
    • アロシトール錠100mg
    • ケトブン錠50mg
    • ケトブン錠100mg
    • サロベール錠50mg
    • サロベール錠100mg
    • ノイファン錠50mg
    • ノイファン錠100mg
    • リボール錠50mg
    • リボール錠100mg
    • リボール細粒20%

      
    添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に以下の文章が追記されます。

    薬剤性過敏症症候群:初期症状として発疹、発熱がみられ、更にリンパ節腫脹、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現、肝機能障害等の臓器障害を伴う遅発性の重篤な過敏症状があらわれることがある。また、1型糖尿病(劇症1型糖尿病を含む)を発症し、ケトアシドーシスに至った例も報告されている。観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。なお、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)等のウイルスの再活性化を伴うことが多く、投与中止後も発疹、発熱、肝機能障害等の症状が再燃あるいは遷延化したり、脳炎等の中枢神経症状があらわれたりすることがあるので注意すること。

      
    直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、薬剤性過敏症症候群に伴う1型糖尿病関連症例が2例(うち、因果関係が否定できない症例1例)報告されています。
    また、死亡例が2例報告されていますが、因果関係が否定できない症例はなかったようです。
      
      

    薬剤性過敏症症候群とヒトヘルペスウイルス6の再活性化と1型糖尿病の発症

    薬剤性過敏症症候群(Drug-Induced Hypersensitivity Syndrome : DIHS)は重度の薬剤アレルギーの1種です。
    DIHSの大きな特徴として、発症後10〜30日の間にヒトヘルペスウイルス6(Human HerpesVirus-6:HHV-6)の再活性化を伴うことが挙げられます。
    また、DIHSでHHV-6の再活性化を伴う場合、自己抗体によるものではない1型糖尿病を発症したケースがあることが知られています。
      
      

    アログリプチン・リナグリプチン・テネリグリプチンによる類天疱瘡

    添付文書改訂の対象となる主な商品名はそれぞれ以下のとおりです。

    • アログリプチン安息香酸塩
      • ネシーナ錠25mg
      • ネシーナ錠12.5mg
      • ネシーナ錠6.25mg
    • アログリプチン安息香酸塩・ピオグリタゾン塩酸塩配合剤
      • リオベル配合錠LD
      • リオベル配合錠HD
    • リナグリプチン
      • トラゼンタ錠5mg
    • テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物
      • テネリア錠 20mg
    • アログリプチン安息香酸塩・メトホルミン塩酸塩配合剤
      • イニシンク配合錠
      
    添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に以下の文章が追記されます。

    類天疱瘡:類天疱瘡があらわれることがあるので、水疱、びらん等があらわれた場合には、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。

      
    直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、類天疱瘡の症例報告はそれぞれ以下のとおりです。

    • アログリプチン安息香酸塩:6例(うち、因果関係が否定できない症例2例)、死亡1例(うち、因果関係が否定できない症例0例)
    • アログリプチン安息香酸塩・ピオグリタゾン塩酸塩配合剤:1例(うち、因果関係が否定できない症例0例)、死亡0例
    • リナグプチン:15例(うち、因果関係が否定できない症例10例)、死亡0例
    • テネリグプチン臭化水素酸塩和物:14例(うち、因果関係が否定できない症例7例)、死亡0例
    • アログリプチン安息香酸塩/メトホルミン塩酸塩:0例

    アログリプチン安息香酸塩/メトホルミン塩酸塩=イニシンク配合錠は発売前なので症例がなくて当然ですね。
      
      

    類天疱瘡

    過去にも調べたことがありましたが、類天疱瘡とは、基底膜部(表皮と真皮の境の部分)に対する自己抗体(抗表皮基底膜部抗体)ができてしまった結果、基底膜部が破壊され、表皮と真皮の接着が悪くなり、水疱が引き起こされるもののようです。
    天疱瘡とまとめて自己免疫性水疱症とも呼ばれます。
    テトラサイクリン/ミノサイクリン・ニコチン酸アミドの内服併用、副腎皮質ステロイドの内服や外用、レクチゾールの内服、ロキシスロマイシン内服などの治療が行われるようです。
      
      

    ゾレドロン酸水和物によるファンコニー症候群

    添付文書改訂の対象となる主な商品名は以下のとおりです。

    • ゾメタ点滴静注4mg/5mL
    • ゾメタ点滴静注4mg/100mL
    • ゾレドロン酸点滴静注4mg/5mL
    • リクラスト点滴静注

      
    添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項の急性腎不全、間質性腎炎に関する記載に以下のように下線部が追記されます。

    急性腎不全、間質性腎炎、ファンコニー症候群:急性腎不全、間質性腎炎、ファンコニー症候群(低リン血症、低カリウム血症、代謝性アシドーシス等を主症状とする近位腎尿細管障害)等の腎障害があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。

      
    直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、ファンコニー症候群関連症例はそれぞれ以下のとおりです。

    • ゾメタ点滴静注4mg/5mL、ゾメタ点滴静注4mg/100mL:11例(うち、因果関係が否定できない症例は7例)、死亡0例
    • リクラスト点滴静注液5mg:0例

    リクラストは発売前なので症例がなくて当然ですね。
      
      

    ファムシクロビルによるショック・アナフィラキシー

    添付文書改訂の対象となる主な商品名は以下のとおりです。

    • ファムビル錠250mg

      
    添付文書の「副作用」の「重大な副作用」の項に以下の文章が追記されます。

    ショック、アナフィラキシー:ショック、アナフィラキシーがあらわれることがあるので、観察を十分に行い、蕁麻疹、血圧低下、呼吸困難等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

      
    直近3年度の国内副作用症例の集積状況で、ショック、アナフィラキシー関連症例が3例(うち、因果関係が否定できない症例3例)報告されています。
    死亡例はありません。

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