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薬剤師の脳みそ~薬局薬剤師の勉強ブログ~

調剤(保険)薬局の薬剤師が脳内で考えていることや仕事の中で得た知識をまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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悪性黒色腫に対する新規分子標的薬の承認了承~BRAF阻害薬タフィンラーとMEK阻害薬メキニストなど

新薬承認情報

平成28年2月1日、厚労省の薬食審医薬品第二部会が開催され、新薬4製品の承認についての審議が行われました。
また、既存の抗がん剤の適応追加についての報告も行われました。
今回は、承認が了承された中でも、特に、悪性黒色腫に対する分子標的薬である、BRAF阻害薬タフィンラーカプセル(成分名:ダブラフェニブメシル酸塩)とMEK阻害薬メキニスト錠(成分名:トラメチニブジメチルスルホキシド付加物)について少し詳しくまとめてみようと思います。
  
  

おくすり

  
  

審議品目:タフィンラー、メキニスト、ハラヴェン、トリビック

以下に今回審議された品目をまとめます。
  
  

タフィンラーカプセル

主成分名:ダブラフェニブメシル酸塩
承認が了承された品目名は以下のとおりです。

  • タフィンラーカプセル50mg
  • タフィンラーカプセル75mg

効能・効果:BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫
用法・用量:「通常、成人にはダブラフェニブとして1回150mgを1日2回、空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。」
  
  

BRAF遺伝子変異

日本国内の悪性黒色腫患者は約4,000人です。
そのうち、20~30%で、BRAF V600遺伝子に変異が生じているものと推定(800人~1,200人と推定)されています。
進行例ではさらに変異例の割合が多いと報告されています。
BRAF V600遺伝子は重要な細胞増殖促進経路であるMAPキナーゼ経路上に存在します。
そこに変異が生じると、それによって活性化されたBRAFタンパクが、上流のシグナルの有無に関わらず、シグナルの下流に存在するMEKタンパクを過剰に活性化し、がん細胞の増殖や転移を促進してしまいます。
  
  

ダブラフェニブの作用・効果・副作用

ダブラフェニブは、「BRAF V600遺伝子」の変異型のセリン/スレオニンキナーゼのATP 結合部位に選択的かつ競合的に結合します。
その結果、BRAFキナーゼ活性を阻害し、過剰な癌細胞の増殖を抑えます。
  
ダブラフェニブは、BRAF V600E遺伝子変異陽性の進行性または転移性の悪性黒色腫患者を対象とした第III相臨床試験において、化学療法(DTIC:ダカルバジン)と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが認められました。
  
主な有害事象として、

  • ダブラフェニブ単剤療法:皮膚毒性(過角化、皮膚乳頭腫、手掌・足底発赤知覚不全症候群)、発熱、疲労、頭痛、関節痛
  • ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法:発熱、悪心、下痢、悪寒、疲労、頭痛、嘔吐、関節痛、発疹、高血圧

が第III相臨床試験において報告されているようです。
  
  

メラノーマ治療におけるタフィンラーカプセルの位置付け

後に記載するメキニスト錠(成分名:トラメチニブ)との併用療法が認められていますが、単剤投与も可能です。
(ただし、単剤投与では耐性が出現しやすいことが知られている)
代表的な類薬として、同様の効能・効果、作用機序を持つゼルボラフ錠240mg(ベムラフェニブ)が挙げられます。
また、他の悪性黒色腫治療薬として、オプジーボ(ニボルマブ(遺伝子組換え))、ヤーボイ(イピリムマブ(遺伝子組換え))、ダカルバジン(ダカルバジン)があります。
タフィンラーの承認により、BRAF V600遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫患者に対する貴重な選択肢が一つ加わったことになりますね。
  
  

メキニスト錠

主成分名:トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物
承認が了承された品目名は以下のとおりです。

  • メキニスト錠0.5mg
  • メキニスト錠2mg

効能・効果:BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫
用法・用量:「ダブラフェニブとの併用において、通常、成人にはトラメチニブとして2mgを1日1回、空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。」
  
  

トラメチニブの作用・効果・副作用

トラメチニブは、日本たばこ産業株式会社と京都府立医科大学 酒井敏行教授が共同研究で発見し、その後、グラクソ・スミスクライン社によって開発されました。
トラメチニブは、MAPキナーゼ経路において、BRAFのシグナル下流に存在するMEK1/MEK2の活性化とそのキナーゼ活性双方を選択的かつ強力に阻害(アロステリックMEK阻害剤)することで、がん細胞の増殖を抑制します。
  
ダブラフェニブと同様に、BRAF V600E/K遺伝子変異陽性の進行性または転移性の悪性黒色腫患者を対象とした第III相臨床試験において、既存の化学療法(DTIC:ダカルバジン)と比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが認められています。
  
主な有害事象として、

  • トラメチニブ単剤療法:発疹、下痢、末梢性浮腫
  • ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法:発熱、悪心、下痢、悪寒、疲労、頭痛、嘔吐、関節痛、発疹、高血圧

が第III相臨床試験において報告されているようです。
  
  

ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法

ダブラフェニブ(タフィンラー)単独療法で問題となる抵抗性を克服するために、トラメチニブ(メキニスト)との併用療法が行われます。
  
臨床試験の中で、ダブラフェニブ(タフィンラー)にトラメチニブ(メキニスト)を併用した場合の奏功率(腫瘍の縮小が認められる患者の割合)は約75%、さらに約10%は腫瘍が完全に消失する完全奏功が認められているようです。
従来の抗がん剤による奏効率が約5%程度と言われているので、それと比較して、非常に高い有効性であることがわかります。
  
また、ダブラフェニブ(タフィンラー)とトラメチニブ(メキニスト)の併用は、ベムラフェニブ(ゼルボラフ)単剤療法、ダブラフェニブ(タフィンラー)単剤療法のそれぞれを対照とした試験が実施されています。
その結果、それぞれ対照群と比較して有意な無増悪生存期間(PFS)の延長が確認されています。
さらに、全生存期間(OS)においても、有意な延長が示されています。
  
  

ハラヴェン静注の適応追加

主成分名:エリブリンメシル酸塩
承認が了承された品目名は以下のとおりです。

  • ハラヴェン静注1mg

追加された効能・効果:悪性軟部腫瘍
用法・用量:「通常、成人には、エリブリンメシル酸塩として、1日1回1.4mg/㎡(体表面積)を2~5分間かけて、週1回、静脈内投与する。これを2週連続で行い、2週目は休薬する。これを1サイクルとして、投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。」
  
  

エリブリンの作用機序

骨、リンパ組織、皮膚以外の皮下組織、筋肉、筋間組織、血管、神経等にできる軟部腫瘍の中でも、肺、骨、リンパ節等に転移を起こすものを悪性軟部腫瘍といいます。
エリブリンはチューブリン重合を阻害して微小管の伸長を抑制し、正常な有糸分裂を阻害することで抗腫瘍活性を示す。
その結果、細胞周期を途中で停止させ、腫瘍のアポトーシスを誘導します。
  
  

トリビックの追加接種についての用法・用量追加

主成分名:沈降精製百日せきジフテリア破傷風混合ワクチン
承認が了承された品目名は以下のとおりです。

  • トリビック

第2期予防接種(11歳~13歳未満)において接種可能となります。
これまで第2期は、ジフテリアと破傷風について予防接種していましたが、近年、青年、成人での百日せきの散発的な流行や患者数の増加が報告されているため、それを加えたものが必要ということで、第2期予防接種における用法・用量が追加となりました。
テトラビック(沈降精製百日せきジフ テリア破傷風不活化ポリオ(セービン株)混合ワクチン)の発売開始(2012年10月)に伴い、2014年3月から製造中止・販売中止となっていましたが、これで復活ということだと思います。
  
  

報告品目:ネクサバール、オプジーボ

報告品目は、PMDAの審査の段階で承認が了承され、部会での審議が必要ないと判断された製品です。
  
  

ネクサバール錠の適応追加

主成分名:ソラフェニブトシル酸塩
承認が了承された品目名は以下のとおりです。

  • ネクサバール錠200mg

追加された効能・効果:甲状腺髄様がん
  
元々の適応は「分化型甲状腺がん」でしたが、「分化型」が削除されました。
甲状腺がんの9割は分化型で、髄様がんは全体の5%程度のようです。
局所進行または遠隔転移を有する甲状腺髄様がんに対する治療選択肢の1つとなります。
ただし、添付文書には未分化がん患者には有効性、安全性は確立していないことが明記されています。
  
  

オプジーボ点滴静注の用法用量追加

主成分名:ニボルマブ(遺伝子組換え)
承認が了承された品目名は以下のとおりです。

  • オプジーボ点滴静注20mg
  • オプジーボ点滴静注100mg

  
根治切除不能な悪性黒色腫における化学療法未治療患者に対する用法・用量が追加されました。
追加された用法・用量:根治切除不能な悪性黒色腫 化学療法未治療の根治切除不能な悪性黒色腫患者の場合「通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回3mg/kg(体重)を2週間間隔で点滴静注する。」
  
  

まとめ

今回は主に抗がん剤とワクチンの承認についてだったので、薬局によってはなかなか目にすることのない薬剤がほとんどかもしれません。
ですが、いつどんな処方が来ても対応出来るように準備しておくのは大切なことです。
また、オプジーボの登場から、がん治療の発展はめざましいものがあります。
抗がん剤の新薬についてはしっかりチェックして、最新の治療法についての知識を身につけていきたいところですね!