薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

ランソプラゾールと授乳について考える

勉強法で悩んでいる薬剤師の方へ

知識の身に付け方は2種類あります。

1つはすぐに活用できる知識。現在の業務の中で必要とされる知識です。身に付けたらすぐに活用することができるので仕事に活かすことができますし、忘れることもありません。

もう1つはすぐには活用できない知識です。身に付けてもすぐに使う知識ではないのないので、だんだんと記憶から薄れてしまいます。ただし、この知識こそが薬剤師としての基礎的な力になります。

普段の業務で使用しない知識を身に付けるのは記憶力を必要としますし、モチベーションを維持するのも大変です。そのため、習慣的に新しい知識を取り入れることを生活の一部にすることが大切になります。薄い知識でも重ねていくことで自然と少しずつ、自分の力として身についていきます。
そこで当サイトではm3.com薬剤師会員登録をオススメしています。

内容をしっかり理解するだけの時間が取れない時でも、メルマガや記事を見て、単語や言葉を目にするだけでも知識の引き出しは少しずつでも確実に増えていきます。多くのサイトに登録したり、書籍を読もうとして続かなくなるより、まずは1つを継続することから初めてみることをおすすめします。登録となると不安に感じる方もいるかもしれませんが、医療関係者であれば誰しも耳にしたことがある!というくらいの有名なサイトで、薬剤師以外にも医師や看護師も多く登録しているサイトなので安心して利用できますね。

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(ここからが記事本文になります)

そろそろ出産が近い患者さん。
妊娠後期の胃酸分泌増加のせいか、胃の不快感を訴え、タケプロンOD(一般名:ランソプラゾール)を服用中。少しずつ効果も出てきたようです。
出産後は母乳育児を考えているようで、内科の先生に出産後、この薬を続けて授乳を行ってもいいものか訪ねたそうです。
内科先生の回答は「うーん。たぶんいいと思うけど心配ならやめる?」
不安になったので薬局でも同じ質問をされました。
さて、どのように回答するべきか。
  
  

  
  

授乳中のランソプラゾール服用についてのデータ

授乳中のランソプラゾール服用について、可能な範囲で調べて見ます。
  

母乳とくすりハンドブック

国立成育医療研究センターの「授乳とお薬」を見るとファモチジン(商品名:ガスター)は安全に使用できる薬に含まれています。
PPIより胃酸抑制効果は弱いですが状態によってはこちらへの切り替えも考えれます。
大分県『母乳と薬剤』研究会の「母乳とくすりハンドブック」を見てみます。
すると、PPIの中でもオメプラゾール(商品名:オメプラール、オメプラゾン)は比較的安全であるというデータがあるようなのでそちらを勧めれば間違いないと思います。
  

国立成育医療研究センター

上記が回答の一つなんですが、薬を変えずにそのまま継続できるかを考えてみたいと思います。
とりあえず、国立成育医療研究センターの「授乳とお薬」の「安全に使用できると思われる薬」にタケプロンは入っていません。
  

添付文書の妊婦、産婦、授乳婦への投与

次にタケプロンOD錠の添付文書「妊婦、産婦、授乳婦への投与」の項を見ると以下のように記載されています。
授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合は、授乳を避けさせること。[動物試験(ラット)で母乳中へ移行することが報告されている。]
  

小児への投与についてのデータは?

じゃあ、子供が口にするとどうなるの?ということで、「小児等への投与」の項を見ると、
小児に対する安全性は確立していない(使用経験が少ない)。
はっきりしませんね・・・。
  
  

ここからは自分で考えてみる

ランソプラゾールと授乳に関するデータをこれ以上業務中に集めるのは難しいので、ここからは以上の情報を元に脳内で考えていきます。
  

小児の胃内環境

一般的に考えればPPIは酸性下で失活するので乳汁中に移行しても経口的に摂取する限りはほとんど吸収されません。
ただし、新生児では胃内のpHは大人ほど低くなく、pHは4とも6とも言われています。
ということは、PPIはあまり失活せずに吸収されてしまう可能性あり?
  

ランソプラゾールの乳汁移行を考えてみる

じゃあ、ランソプラゾールは乳汁中にどの程度移行するのか?
  
ランソプラゾールの血漿蛋白結合率は98%です。
さらに添付文書の薬物動態を見ると、15mg服用時のCmaxが450ng/mLと非常に低くなって今す。
これは血中濃度なので蛋白結合している薬物も含みます。
  
乳汁移行は血漿中の薬物濃度が影響します。
単純に考えるとランソプラゾールの血漿中濃度は9ng/mLとなり、授乳による吸収量は極めて少なくなります。
  
ランソプラゾールの場合、血漿中から乳汁中にどの程度移行するかは不明ですが、倍に濃縮される(M/P比2)と考えるとします。
新生児の母乳摂取量は多く見積もって1000mL。
となると18μgが新生児の口に入ってしまう可能性があるということになります。
  

ランソプラゾールの小児用量

量としては本当に少ないですね。
メルクマニュアルを見てみると、ランソプラゾールの小児用量は10kg未満の場合、7.5mgとなっています。
  
  

まとめ

これらを踏まえると、授乳により摂取する可能性のある量は極めて少なく全く問題ないであろうという値という事になります。
ただし、ごく微量ながらも赤ちゃんの体に入るのは間違いないので、積極的にオススメすることはできないですね。
飲んでしまった とか 短期間のみの服用であれば問題ないと考えてもいいのではないでしょうか?
もちろん、PPIを変更できるのであれば、データが揃っているオメプラゾールやファモチジンをオススメしますが・・・。
薬物治療コンサルテーション妊娠と授乳

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妊娠・授乳とくすりQ&A (実践Q&Aシリーズ)

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