薬剤師の脳みそ~薬局薬剤師の勉強ブログ~

調剤(保険)薬局の薬剤師が脳内で考えていることや仕事の中で得た知識をまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

ラジレス

昨日に引き続いてアリスキレン(商品名:ラジレス)の話題。
今回はアリスキレン自身についてまとめます。
アリスキレン
アリスキレンは現在、唯一の唯一の直接的レニン阻害剤(DRI)。
第3のレニン-アンギオテンシン(RA)系阻害剤です。
ここで、RA系について簡単にまとめると・・・

 Angiotensinogen
       ↓
       ↓←Renin DRI
       ↓
  AngiotensinI
       ↓
       ↓←ACE ACE-I
       ↓
  AngiotensinII
 ↓           ↓ 
 ↓           ↓
 AT1 ARB    AT2


直接レニン阻害剤
このようにRA系の最上流を阻害するのがDRIです。
最初のARBロサルタンが国内で発売されたのが1998年。
実に10年以上待ち焦がれていた新規作用機序の降圧剤になります。

ACE阻害剤やARBと異なり、アンジオテンシンⅠの濃度も上げず、レニン活性を下げる(レニンのネガティブフィードバックも起こらない)ことがどのような効果に繋がるのかが注目されている薬です。
このへんをまとめると・・・
 レニン活性:DRI↓、ACE-I↑、ARB↑
 レニン濃度:DRI↑、ACE-I↑、ARB↑
 アンジオテンシンI:DRI↓、ACE-I↑、ARB↑
 アンジオテンシンII:DRI↓、ACE-I↓、ARB↑
 ブラジキニン:DRI→、ACE-I↑、ARB→

特に臓器保護に注目し、複数の大規模臨床試験が実施されています。
この分野に興味のあるDrはとにかく使ってみたい!という薬なんだと思います。
どのような作用を持つのか、それがどんな治療に繋がるのか、非常に注目です。


ラジレスの問題
ただ、薬局で働く自分としてはそういうことに加えて、実際の使用方法が気になるわけで・・・。
この薬、少しやっかいな特徴が多いです。

まず、この薬、分包禁止です。
つまり、一包化できない。
メーカーによると、「25℃65%無包装状態で1日経過後、質量4.79%減少、フィルムコートに亀裂が観察された」
ということなんですが、うちの薬局で試したところ、1年経過しても外観にとくに変化はなかったです。
何故だろう・・・、でも、まあ、ダメなものはダメなんでしょうね。


次に用法。
1日1回服用ですが、用法及び用量に関連する使用上の注意には次のように記述されています。

「本剤服用時期は患者ごとに食後又は食前(空腹時)のいずれかに規定し、原則として毎日同じ条件で服用するよう指導すること。なお、本剤は、食前(空腹時)投与で食後投与に比べ血中濃度が高くなること等を踏まえ、食後投与での開始を考慮すること。本剤服用時期を変更する場合には症状の変化に特に注意すること。」

薬物動態の項には次のように記述されています。

「食後に1日1回7日間反復経口投与したときのCmax及びAUCは、空腹時投与に比べ、それぞれ75%及び55%低下した。また、食後投与ではTmaxは延長した。」

だったら、はじめから用法を食後にすれば・・・。
言い換えれば、食後に比べて空腹時のCmaxは4倍、AUCは2倍ってことですよね?


最後は相互作用。
この薬、p糖蛋白の影響をがっつり受けます。
 イトラコナゾール:アリスキレンのCmax約5.8倍、AUC約6.5倍
 シクロスポリン:アリスキレンのCmax約2.5倍、AUC約5倍
 ベラパミル(240mg):アリスキレンのCmax及びAUC約2倍
           ベラパミルのAUCは約10 〜 25%減少
 アトルバスタチン(80mg):アリスキレンのCmax及びAUC約1.5倍
まあ、ベラパミルとかアトルバスタチンの量がこれだけ多いことはそうそうないとは思うけど。

特に用法による変化が辛いところ。
普段、食後に服用していたのを急に食前に変えたら低血圧を起こす可能性もある。
飲み忘れても次の食事を待つように指導したり、食習慣のチェックも重要になってくるなあ。

副作用としては、血管浮腫、高カリウム血症、腎機能障害。
他のRA阻害剤と同じですね。
自分の薬局が非常にご高齢の患者さんが多いので、特に高カリウムに注意したいところです。


ALTITUDE試験中止による禁忌
最後に、昨日も書きましたが、今月追記された内容。

禁忌

「ACE阻害剤又はARBを投与中の糖尿病患者(ただし、ACE阻害剤又はARB投与を含む他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く)」

糖尿病の場合、他のRA阻害剤とは併用できないってことで。
但し書き・・・。
まあ、これを使うのは専門医くらいじゃないでしょうか・・・?

重要な基本的注意

「eGFRが60mL/min/1.73㎡ 未満の腎機能障害のある患者へのACE阻害剤又はARBとの併用については、治療上やむを得ないと判断される場合を除き避けること。」

う〜ん・・・。
避けること・・・なのに、禁忌ではない・・・?
線引きがよくわからないけど、腎機能がある場合は他のRA阻害剤とは併用しない方がいいですね。
でも、禁忌と考えたらeGFR 60mL/min/1.73㎡未満ってのは厳しいなあ。

新薬好きな先生だし、広域も多いのに、何故かお目にかからず。
この記事も健忘録として書かせてもらってます。
何故、使われていないのか?
全国的にはどうなんでしょう・・・?


レニン阻害が持つであろう臓器保護作用にかかる期待は大きいです!
今後、どのようなエビデンスが出てくるか注目していきたいですね。