高血圧治療剤を含む配合剤(降圧配合剤)のまとめ(平成30年6月16日更新)
(元々は平成26年3月2日に作成した記事です)
高血圧治療に使用される、降圧薬を含む配合薬についてのまとめです。
一覧表や適応上の注意、各略称等についてまとめています。
また、各種配合剤は原則、配合されている成分を持つ単剤から切り替えて使用するようになっています。
薬剤ごとにそのルールもまとめています。
随時更新していく予定です。
- 降圧剤同士の配合剤
- 降圧剤と脂質異常症治療薬の配合剤
降圧剤同士の配合剤
1.アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬+サイアザイド(チアジド)系利尿薬
ARBはレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS*3)で働くアンジオテンシンII(AⅡ*4)がAT1受容体に結合するのを阻害、血管を拡張して降圧作用を発揮します。
TZDは腎臓の遠位尿細管におけるNa+/Cl-共輸送体の働きを阻害することでナトリウムと水の排泄を高めます。利尿薬の中では降圧作用が強いのが特徴です。
ARB/TZD配合剤はこれら2つの薬剤を組み合わせることで、それぞれの降圧剤としての欠点をお互いに保管することを可能にしています。
- ARBの作用
- RAASを抑制することによる降圧作用発揮
- 腎臓でのNa再吸収を亢進して体液を貯留させる
- アルドステロンを産生してカリウムを保持する
- TZDの作用
- 利尿作用による体液排泄促進
- Na低下によりRAASを刺激
- RAASの刺激によりカリウム排泄を促進
表にまとめるとARB/TZDの組み合わせが理にかなっている事がわかりやすいです。
薬効 | 血圧 | RAAS | カリウム | 体液 |
---|---|---|---|---|
ARB | ↓ | ↓ | ↑ | ↑ |
TZD | ↓ | ↑ | ↓ | ↓ |
上にも書いたように、ARBにはカリウム保持、体液貯留、また、それらとは別にインスリン抵抗性改善作用もあるのでTZDによる副作用を回避することが期待されますが、長期間服用する薬剤なので注意が必要です。
ちなみに、ARBをアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I*5)に置き換えてもTZDとの併用による恩恵を受けることが可能です。(ACE-I/TZDの配合剤は未発売)
1-① ARB+ヒドロクロロチアジド
ヒドロクロロチアジドはかつてダイクロトライド錠25mgとして先発医薬品が発売されていましたが現在は発売中止されています。
現在はダイクロトライドのジェネリック医薬品であるヒドロクロロチアジド錠「トーワ」(旧名称:ニュートライド錠)のみが発売されています。
ARB/TZD | ヒドロクロロチアジド (ヒドロクロロチアジド錠「トーワ」) |
||
---|---|---|---|
6.25mg | 12.5mg | ||
ロサルタン (ニューロタンなど) |
50mg | − | プレミネント配合錠LD (ロサルヒド配合錠LD) |
100mg | − | プレミネント配合錠HD (ロサルヒド配合錠HD) |
|
カンデサルタン (ブロプレスなど) |
4mg | エカード配合錠LD (カデチア配合錠LD) |
− |
8mg | エカード配合錠HD (カデチア配合錠HD) |
− | |
バルサルタン (ディオバンなど) |
80mg | コディオ配合錠MD (バルヒディオ配合錠MD) |
コディオ配合錠EX (バルヒディオ配合錠EX) |
テルミサルタン (ミカルディスなど) |
40mg | − | ミコンビ配合錠AP (テルチア配合錠AP) |
80mg | − | ミコンビ配合錠BP (テルチア配合錠BP) |
- LD:Low Dose(低用量)
- HD:High Dose(高用量)
- MD: Moderato(適度な)
- EX:Extra(特別な)
- AP:Advanced Power(強力)
- BP:Best Power(最強)
プレミネント配合錠(ロサルヒド配合錠)
- プレミネント配合錠LD(ロサルヒド配合錠LD):ロサルタンカリウム50mg/ヒドロクロロチアジド12.5mg
- プレミネント配合錠HD(ロサルヒド配合錠HD):ロサルタンカリウム100mg/ヒドロクロロチアジド12.5mg
プレミネント配合錠は日本国内で最初(2006年12月)に発売された降圧配合剤です。
当初はLDのみ(名称:プレミネント配合錠)でしたが、後から高用量(HD、2014年4月)が追加されました。
LSRは(ARBの中で唯一)尿酸低下作用を有するため、TZD併用による尿酸上昇の副作用の軽減が期待でき、高用量TZDの配合が可能となっています。
尿酸値上昇に関してはLSRによる軽減が期待できますが、血糖値の上昇、電解質異常、脱水等に対しての注意は必要です。
2.降圧薬の血清尿酸値に与える影響降圧配合剤は降圧治療の第一選択ではないため、プレミネント配合錠ならびにロサルヒド配合錠の使用は、原則、ロサルタンカリウム服用で効果不十分の場合であることに注意が必要です。
利尿薬の中で、カリウム保持性利尿薬は尿酸代謝への影響が乏しい。一方、サイアザイド系降圧利尿薬やループ系利尿薬による急激な細胞外液の低下は、高尿酸血症を惹起し痛風を誘発することがある。また大量のβ遮断薬の投与は血清尿酸値を上昇させる。αβ 遮断薬も同様に血清尿酸値を上昇させる。
(省略)
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の1つであるロサルタンカリウムは腎尿細管に存在する尿酸トランスポーター1(URAT1)の作用を阻害することによって*11*12*13血清尿酸値を平均0.7mg/dL程度低下させる*14。他のARB の臨床用量では血清尿酸値に明らかな影響を及ぼさない。ARB とサイアザイド系降圧利尿薬(ヒドロクロロチアジド)との合剤は,後者による血清尿酸値上昇を考慮して組み合わせるARB の種類・用量とヒドロクロロチアジドの用量とに工夫がなされている。
エカード配合錠(カデチア配合錠)
- エカード配合錠LD(カデチア配合錠LD):カンデサルタン シレキセチル4mg/ヒドロクロロチアジド6.25mg
- エカード配合錠HD(カデチア配合錠HD):カンデサルタン シレキセチル8mg/ヒドロクロロチアジド6.25mg
プレミネント配合錠に続いて登場した国内2番目(2009年3月、コディオ配合錠とともに)のARB/TZD配合剤。
LSRと異なり、CNDは尿酸低下作用を有さないため、HCTZの用量は低用量になっています。
降圧配合剤は降圧治療の第一選択ではないため、エカード配合錠ならびにカデチア配合錠の使用は、原則、カンデサルタンシレキセチル服用で効果不十分の場合であることに注意が必要です。
コディオ配合錠(バルヒディオ配合錠)
- コディオ配合錠MD(バルヒディオ配合錠MD):バルサルタン80mg/ヒドロクロロチアジド6.25mg
- コディオ配合錠EX(バルヒディオ配合錠EX):バルサルタン80mg/ヒドロクロロチアジド12.5mg
プレミネント配合錠に続いて登場した国内2番目(2009年3月、エカード配合錠とともに)のARB/TZD配合剤。
LSRと異なり、VALは尿酸低下作用を有さないため、HCTZの用量は低用量からの開始になっています。
高用量での使用の場合、尿酸値ならびに血糖値の上昇、電解質異常、脱水等に対して注意が必要です。
降圧配合剤は降圧治療の第一選択ではないため、コディオ配合錠ならびにバルヒディオ配合錠の使用は、原則、バルサルタン服用で効果不十分の場合であることに注意が必要です。
ミコンビ配合錠(テルチア配合錠)
- ミコンビ配合錠AP(テルチア配合錠AP):テルミサルタン40mg/ヒドロクロロチアジド12.5mg
- ミコンビ配合錠BP(テルチア配合錠BP):テルミサルタン80mg/ヒドロクロロチアジド12.5mg
国内4番目の発売(2009年6月)になるARB/TZD配合剤。
HCTZが高用量のみの設定になっているため、尿酸値ならびに血糖値の上昇、電解質異常、脱水等に対して注意が必要です。
降圧配合剤は降圧治療の第一選択ではないため、ミコンビ配合錠ならびにテルチア配合錠の使用は、原則、バルサルタン服用で効果不十分の場合であることに注意が必要です。
1-② イルベサルタン+トリクロルメチアジド
この組み合わせはイルトラ配合錠のみです。ARB/TZD | トリクロルメチアジド (フルイトラン、クバクロンなど) |
||
---|---|---|---|
1mg | 2mg | ||
イルベサルタン (アバプロ/イルベタン) |
100mg | イルトラ配合錠LD (未定) |
− |
200mg | イルトラ配合錠HD (未定) |
− |
- LD:Low Dose(低用量)
- HD:High Dose(高用量)
イルトラ配合錠
- イルトラ配合錠LD:イルベサルタン100mg/トリクロルメチアジド1mg
- イルトラ配合錠HD:イルベサルタン200mg/トリクロルメチアジド1mg
国内では5番目に発売(2013年9月)されたARB/TZD配合剤。
イルベサルタンを有効成分とする先発医薬品にはアバプロ錠とイルベタン錠がありますが、イルトラ配合錠とイルベタン錠の製造販売元が塩野義製薬である(アバプロ錠は大日本住友製薬株式会社)こと、トリクロルメチアジドを有効成分とする薬剤のうち塩野義製薬が製造販売元なのはフルイトラン錠である事を考えると、イルトラ配合錠はイルベタン錠とフルイトラン錠の配合剤とするべきかもしれませんね。
TZD特有の副作用の発生を回避するためにTCMZは低用量のみの設定になっています。
降圧配合剤は降圧治療の第一選択ではないため、イルトラ配合錠の使用は、原則、イルベサルタン服用で効果不十分の場合であることに注意が必要です。
2.アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬+カルシウム拮抗薬
- カルシウム拮抗薬(CCB*17)
どちらも降圧剤であるARBとCCBを組み合わせた配合剤です。
ARB/TZDの配合剤のように双方の作用を補うものではなく、
- 相加的な降圧作用の増強
- 服用薬剤数の減少
- 薬剤料の軽減
を目的とした配合剤と言えます。
2-① ARB+アムロジピン
AMLは第三世代のジヒドロピリジン系CCBです。血管平滑筋のL型カルシウムチャネルを阻害し、血管収縮を抑制、結果として血管拡張を促すことで降圧作用を発揮します。
AMLは急激な血管拡張を引き起こさず、緩徐に作用するため、安定した降圧作用を発揮します。
ARB/CCB | アムロジピン (アムロジン、ノルバスクなど) |
|||
---|---|---|---|---|
2.5mg | 5mg | 10mg | ||
バルサルタン (ディオバンなど) |
80mg | − | エックスフォージ配合錠 (アムバロ配合錠) |
− |
カンデサルタン(ブロプレスなど) | 8mg | ユニシア配合錠LD (カムシア配合錠LD) |
ユニシア配合錠HD (カムシア配合錠HD) |
|
テルミサルタン (ミカルディスなど) |
40mg | − | ミカムロ配合錠AP (テラムロ配合錠AP) |
− |
80mg | ミカムロ配合錠BP (テラムロ配合錠BP) |
|||
イルベサルタン (アムバロ、イルベタンなど) |
100mg | − | アイミクス配合錠LD (イルアミクス配合錠LD) |
アイミクス配合錠HD (イルアミクス配合錠HD) |
アジルサルタン(アジルバ) | 20mg | ザクラス配合錠LD (未定) |
ザクラス配合錠HD (未定) |
− |
- LD:Low Dose(低用量)
- HD:High Dose(高用量)
- AP:Advanced Power(強力)
- BP:Best Power(最強)
エックスフォージ配合錠(アムバロ配合錠)
- エックスフォージ配合錠:バルサルタン80mg/アムロジピン5mg
- エックスフォージ配合OD錠:バルサルタン80mg/アムロジピン5mg
日本国内で最初に発売(2010年4月、レザルタス配合錠と同時)されたARB/CCB配合剤です。
降圧配合剤は降圧治療の第一選択ではないため、エックスフォージ配合錠ならびにアムバロ配合錠の使用は、原則、バルサルタン80mgとアムロジピン5mgを併用、もしくは一方の服用で効果不十分の場合とすることに注意が必要です。
ユニシア配合錠(カムシア配合錠)
- ユニシア配合錠LD:カンデサルタンシレキセチル8mg/アムロジピン2.5mg
- ユニシア配合錠HD:カンデサルタンシレキセチル8mg/アムロジピン5mg
国内で3番目に発売(2010年6月)されたARB/CCB配合剤です。
降圧配合剤は降圧治療の第一選択ではないため、ユニシア配合錠ならびにカムシア配合錠の使用は、原則、バルサルタン80mgとアムロジピン5mg両方を服用、もしくは一方の服用で効果不十分の場合とすることに注意が必要です。
ミカムロ配合錠(テラムロ配合錠)
- ミカムロ配合錠AP:テルミサルタン40mg/アムロジピン5mg
- ミカムロ配合錠BP:テルミサルタン80mg/アムロジピン5mg
国内で4番目に発売(2010年9月)されたARB/CCB配合剤です。
当初はAPのみの発売でしたが2013年5月にARB/CCB配合剤で初めて高用量ARBを配合したBPが追加されています。
降圧配合剤は降圧治療の第一選択ではないため、ミカムロ配合錠APならびにテラムロ配合錠APの使用は、原則、テルミサルタン40mgとアムロジピン5mgを併用、もしくは一方の服用で効果不十分の場合とすることに注意が必要です。
ミカムロ配合錠BPならびにテラムロ配合錠BPの使用についてはさらに厳しく、原則、テルミサルタン80mgとアムロジピン5mg両方を服用、もしくはテルミサルタン80mgを服用、テルミサルタン40mgとアムロジピン5mgの併用、ミカムロ配合錠APの服用でも効果不十分の場合とするとなっています。
アイミクス配合錠(イルアミクス配合錠)
- アイミクス配合錠LD:イルベサルタン100mg/アムロジピン5mg
- アイミクス配合錠HD:イルベサルタン100mg/アムロジピン10mg
国内5番手(2012年12月)のARB/CCB配合剤です。
HDはARB/CCB配合剤として唯一高用量AMLが配合されています。
降圧配合剤は降圧治療の第一選択ではないため、アイミクス配合錠LDならびにイルアミクス配合錠LDの使用は、原則、イルベサルタン100mgとアムロジピン5mgを併用、もしくは一方の服用で効果不十分の場合とすることに注意が必要です。
同様に、アイミクス配合錠HDならびにイルアミクス配合錠HDの使用は、イルベサルタン100mg及びアムロジピンとして5mgを併用、もしくはアイミクス配合錠LD(またはアイミクス配合錠LD)を服用しても効果不十分な場合となっています。
ザクラス配合錠
- ザクラス配合錠LD:アジルサルタン20mg/アムロジピン2.5mg
- ザクラス配合錠HD:アジルサルタン20mg/アムロジピン5mg
ARB/CCBの配合剤として国内7番目(2014年6月)の製品です。
降圧配合剤は降圧治療の第一選択ではないため、ザクラス配合錠の使用は、原則、アジルサルタン20mgとアムロジピン2.5〜5mgを併用、もしくは一方の服用で効果不十分の場合とすることに注意が必要です。
2-② オルメサルタン+アゼルニジピン
OLM/AZLの組み合わせの配合剤はレザルタス配合錠のみです。
AZLはAMLと同様の第三世代のジヒドロピリジン系CCBです。
AMLがL型カルシウムチャネルのみに作用するのに対して、AZLはL型とT型のカルシウムチャネルに作用します。
L型は血管平滑筋や心筋に多く存在し、L型カルシウムチャネルに対する拮抗作用がCCBの降圧作用の中心になっています。
これに対してT型は心臓洞結節に主に存在しており、CCBがT型カルシウムチャネルに作用する事で心保護作用が期待できます。
また、腎臓に関してみると、L型カルシウムチャネルは輸入細動脈のみに存在するため、糸球体内圧を上昇させてしまいます。
T型カルシウムチャネルは輸入細動脈・輸出細動脈の両方に存在するため、糸球体内圧を低下させ、腎保護作用を発揮する事が期待されます。
また、T型カルシウムチャネルに作用するAZLは抹消性浮腫を引き起こしにくくなっています。
ARB/CCB | アゼルニジピン (カルブロックなど) |
||
---|---|---|---|
8mg | 16mg | ||
オルメサルタン (オルメテックなど) |
10mg | レザルタス配合錠LD (オルアゼ配合錠LD) |
− |
20mg | − | レザルタス配合錠HD (オルアゼ配合錠HD) |
- LD:Low Dose(低用量)
- HD:High Dose(高用量)
レザルタス配合錠(オルアゼ配合錠)
※オルアゼ配合錠は未承認・未発売です。- レザルタス配合LD:オルメサルタンメドキソミル10mg/アゼルニジピン8mg
- レザルタス配合HD:オルメサルタンメドキソミル20mg/アゼルニジピン8mg
日本国内で最初に発売(2010年4月、エックスフォージ配合錠と同時)されたARB/CCB配合剤です。
LD・HD間でARB・CCB両方の用量が変化するため注意が必要です。
降圧配合剤は降圧治療の第一選択ではないため、レザルタス配合錠の使用は、原則、オルメサルタンとアゼルニジピンを併用、もしくは一方の服用で効果不十分の場合とすることに注意が必要です。
また、効果不十分の際は1つの有効成分ずつ増量するのが原則であるため、レザルタス配合錠LDからレザルタス配合錠HDへの変更は原則できなくなっています。
2-③ バルサルタン+シルニジピン(VAL/CLN)
- バルサルタン:VAL
- シルニジピン:CLN*22
VAL/CLNの組み合わせの配合剤はアテディオ配合錠のみです。
CLNは第二世代のジヒドロピリジン系CCBです。
AMLがL型カルシウムチャネルのみに作用、AZLがL型とT型のカルシウムチャネルに作用するのに対して、CLNはL型とN型のカルシウムチャネルに作用します。
N型は交感神経終末に存在しており、CCBがN型カルシウムチャネルに作用する事で交感神経抑制作用が期待できます。
また、T型カルシウムチャネルと同様にN型カルシウムチャネルは輸入細動脈・輸出細動脈の両方に存在するため、糸球体内圧を低下させ、腎保護作用を発揮する事が期待されます。
抹消浮腫に対する作用も同様でN型カルシウムチャネルに作用するCLNは抹消性浮腫を引き起こしにくくなっています。
ARB/CCB | シルニジピン (アテレックなど) |
||
---|---|---|---|
5mg | 10mg | ||
バルサルタン (ディオバンなど) |
40mg | − | − |
80mg | − | アテディオ配合錠 (未定) |
アテディオ配合錠
- アテディオ配合錠:バルサルタン80mg/シルニジピン10mg
日本国内で6番目に発売(2014年5月)されたARB/CCB配合剤です。
降圧配合剤は降圧治療の第一選択ではないため、アテディオ配合錠の使用は、原則、バルサルタン80mgとシルニジピン10mgを併用、もしくは一方の服用で効果不十分の場合とすることに注意が必要です。
3.直接的レニン阻害剤+カルシウム拮抗薬:発売中止
- 直接的レニン阻害剤:DRI*23
RAASの上流で働くレニンを直接阻害する事で血漿レニン活性を低下させ、RAASに関与するペプチドホルモンの産生を抑制し、降圧作用を発揮します。
アリスキレン+アムロジピン
この組み合わせはラジムロ配合錠のみでしたが、承認翌日に発売中止が決定、結局販売されることはありませんでした。- アリスキレン:ALS*24
- アムロジピン:AML
アリスキレンは世界初のDRIかつ唯一の薬剤(2018年6月現在)です。
ARBから10数年ぶりに登場した新規作用機序の降圧剤として期待されたアリスキレンでしたが、現在は使用される機会は少なくなっています。
新規RA系抑制薬として期待されたアリスキレンでしたが、その効果を検証すべく行われた大規模臨床試験*25において、アリスキレン投与群で副作用発生率が高まる傾向が認められしまい、試験は早期中止となりました。
その結果を踏まえ、2012年6月5日付けでラジレス錠の禁忌に「アンジオテンシン変換酵素阻害剤又はアンジオテンシンII受容体拮抗剤を投与中の糖尿病患者」が追加されました。
この結果を受け、ラジレス錠の処方は大きく減り、製造承認されたラジムロ配合錠も発売される事なく消えていったというわけです。
DRI/CCB | アムロジピン (アムロジン、ノルバスクなど) |
|||
---|---|---|---|---|
2.5mg | 5mg | 10mg | ||
アリスキレン (ラジレス) |
150mg | ラジムロ配合錠LD (未定) |
ラジムロ配合錠HD (未定) |
− |
- LD:Low Dose(低用量)
- HD:High Dose(高用量)
4.アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬+カルシウム拮抗薬+サイアザイド(チアジド)系利尿薬
ARB+CCB+TZDテルミサルタン+アムロジピン+ヒドロクロロチアジド
- テルミサルタン:TLM
- アムロジピン:AML
- ヒドロクロロチアジド:HCTZ
TLM/AML/HCTZの三種類を組み合わせた降圧配合剤はミカムロ配合錠のみです。
- テルミサルタン(ミカルディスなど):80mg
- アムロジピン(アムロジン、ノルバスクなど):5mg
- ヒドロクロロチアジド:12.5mg
ミカトリオ配合錠
- ミカトリオ配合錠:テルミサルタン80mg/アムロジピン5mg/ヒドロクロロチアジド12.5mg
日本で唯一の3剤配合降圧剤です。
その存在意義について多くの疑問がぶつけられ部会で2回連続了承見送りになったという曰く付きの配合剤です。
2016年9月28日に承認はされましたが、以下のように厚生労働省からは通知で、循環器学会からも注意喚起が出されています。
ミカトリオ配合錠の適正な使用についての指針の発出について(保医発1226第8号 平成28年12月26日)
ミカトリオ配合錠の適正使用について - 日本循環器学会
そのため、ミカトリオ配合錠の使用については特にハードルが高く設定されています。
まずは添付文書上の記載です。
続いて、以下は関係学会が作成した「ミカトリオ配合錠の適正使用についてのガイドライン」から。
- 用法・用量
成人には1日1回1錠(テルミサルタン/アムロジピン/ヒドロクロロチアジドとして80mg/5mg/12.5mg)を経口投与する。本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いない。- 用法・用量に関連する使用上の注意
原則として、テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgを一定の期間、同一用法・用量で継続して併用し、安定した血圧コントロールが得られている場合に、本剤への切り替えを検討すること。
原則として、以下の併用療法を「8週間以上」継続して有効性と安全性の観点から継続が妥当と主治医が判断した場合に、本剤への切り替えを検討する:①テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg 及びヒドロクロロチアジド12.5mgの単剤併用、②テルミサルタン80mg/アムロジピン5mg配合剤とヒドロクロロ チアジド12.5mgの併用、③テルミサルタン80mg/ヒドロクロロチアジド12.5mg配合剤とアムロジピン5mg の併用。テルミサルタン80mg/アムロジピン5mg/ヒドロクロロチアジド12.5mg併用を8週間以上継続して状態が安定した場合に限って切り替え可能・・・。
かなり厳しいですね。
使えるケースはそんなにないと思いますが、どの程度処方されているんでしょう?
降圧剤と脂質異常症治療薬の配合剤
降圧剤のみでなく、脂質異常症改善薬を配合したものも発売されています。つい、先日ですが、FDAはアムロジピンとセレコキシブの配合剤を承認したようなので、それに比べればね・・・。
FDA OKs Consensi for Osteoarthritis Pain and Hypertension
(何か薬理学的な意義があるのかもしれませんが、よくわかりません)
カルシウム拮抗薬+HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)
CCBとスタチンの配合剤。この2種類の薬剤を併用することに薬理学的な意義はありませんが、併用している方が多いことは実感できると思います。
この配合剤の意義は以下の2つだけです。
- 服薬アドヒアランスの向上
- 薬剤料の軽減
アムロジピン+アトルバスタチン
- アムロジピン:AML
- アトルバスタチン:ATV*26
AML/ATVの組み合わせの配合剤はカデュエット配合錠(アマルエット配合錠)のみです。
CCB/ATV | アトルバスタチン (リピトールなど) |
||
---|---|---|---|
5mg | 10mg | ||
アムロジピン (アムロジン、ノルバスクなど) |
2.5mg | カデュエット配合錠1番 (アマルエット配合錠1番) |
カデュエット配合錠2番 (アマルエット配合錠2番) |
5mg | カデュエット配合錠3番 (アマルエット配合錠3番) |
カデュエット配合錠4番 (アマルエット配合錠4番) |
カデュエット配合錠(アマルエット配合錠)
- カデュエット配合錠1番(アマルエット配合錠1番):アムロジピン2.5mg/アトルバスタチン5mg
- カデュエット配合錠2番(アマルエット配合錠2番):アムロジピン2.5mg/アトルバスタチン10mg
- カデュエット配合錠3番(アマルエット配合錠3番):アムロジピン5mg/アトルバスタチン5mg
- カデュエット配合錠4番(アマルエット配合錠4番):アムロジピン5mg/アトルバスタチン10mg
見ての通り、規格がとてもわかりにくいので注意が必要です。
予想よりも売り上げが伸びなかった原因はここにありますね。
当然ですが、アムロジピンもアトルバスタチンも使用していない状態からこの配合剤を使うことはできません。
用法及び用量に関連する使用上の注意
1.原則として、アムロジピン及びアトルバスタチンを併用、あるいはいずれか一方を使用している場合に、本剤の使用を検討すること。なお、両有効成分のいずれか一方を服用している患者に本剤を使用する場合は、患者の状態を十分に考慮した上で、各単剤の併用よりも本剤の投与が適切であるか慎重に判断すること。
*1:Angiotensin II Receptor Blocker
*2:ThiaZiDe diuretic
*3:Renin-Angiotensin-Aldosterone System
*4:Angiotensin II
*5:Angiotensin-Converting-Enzyme Inhibitor
*6:LoSaRtan
*7:CaNDesartan cilexetil
*8:VALsartan
*9:TeLMisartan
*10:HydroChloroThiaZide
*11:Iwanaga T, Sato M, Maeda T, et al : Concentration-dependent mode of interaction of angiotensin Ⅱ receptor blockers with uric acid transporter. J Pharmacol Exp Ther 320 :211-217,2007
*12:Enomoto A, Kimura H, Chairoungdua A, et al : Molecular identification of a renal urate anion exchanger that regulates blood urate levels. Nature 417 :447-452,2002
*13:Hamada T, Ichida K, Hosoyamada M, et al : Uricosuric action of losartan via the inhibition of urate transporter 1(URAT 1) in hypertensive patients. Am J Hypertens 21 :1157-1162,2008
*14:Naritomi H, Fujita T, Ito S, et al : Efficacy and safety of long-term losartan therapy demonstrated by a prospective observational study in Japanese patients with hypertension ; The Japan Hypertension Evaluation with Angiotensin Ⅱ Antagonist Losartan Therapy(J-HEALTH)study. Hypertens Res 31 :295-304,2008
*15:IRBesartan
*16:TriChlorMethiaZide
*17:Calcium Channel Blocker
*18:AZiLsartan
*19:AMLodipine
*20:OLMesartan
*21:AZeLnidipine
*22:CiLNidipine
*23:Direct Renin Inhibitor
*24:ALiSkiren
*25:ALTITUDE試験(心腎イベント発症リスクの高い2型糖尿病患者にアリスキレンを追加投与した場合に,心腎イベントの発症を遅らせることができるかどうかについて検討)
*26:ATorVastatin