スピリーバレスピマットが喘息の適応を追加申請
1月6日、ベーリンガーインゲルハイムはスピリーバレスピマット(一般名:チオトロピウムレスピマット)について、気管支喘息の適応を追加申請しました。
抗コリン薬(ムスカリン受容体拮抗薬)であるスピリーバですが、現在は「慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の寛解」が効能・効果に記載されています。
吸入抗コリン薬
同じく抗コリン作用をもつ吸入薬として、アトロベント(一般名:イプラトロピウム)、テルシガン(オキシトロピウム)があり、こちらは気管支喘息、肺気腫、慢性気管支炎に古くから使われています。
ただし、アトロベントもテルシガンも短時間作用型であり、一日中効果を持続しようとすると1日3~4回の使用が必要でした。
スピリーバは長時間作用型なので、1日1回の使用で持続して作用を発揮することからCOPD治療において広く使用されています。
同様の長時間作用型の抗コリン吸入薬にシーブリ(一般名:グリコピロニウム)がありますね。
スピリーバと気管支喘息
さて、何故か喘息を取得していなかったスピリーバ(シーブリも)ですが、COPDに対してはもちろんのこと、COPDと喘息の合併症例に対しても非常によい効果を発揮することが知られています。
じゃあ、喘息に対してはどうかと言われると、けっこう適応外で使われるケースも多かったのではないでしょうか?
気管支喘息の吸入薬を用いた治療では、まずICS(Inhaled CorticoSteroid/吸入ステロイド)を用いて、効果不十分であればLABA(Long Acting β2 Agonist/長時間作用型β2刺激剤)を追加します。
それでも効果不十分な難治性の症例があります。
イメージとしては長期間発作を繰り返した結果、リモデリングが進み硬くなってしまったもの。
こうなるとICSやLABAが効果を発揮しにくくなるのですが、そういった症例にはLAMA(Long Acting Muskarinic Antagonist/長時間作用性抗コリン薬)が効果を発揮する場合があります。
あくまでも想像ですが、LAMAの方がより末梢などの広い範囲に、ゆっくりと効果を発揮する気がします。
なので適応外で使うケースもあったのですが、今回の申請が通れば、喘息の吸入治療、第三の選択肢になる可能性がありますね。
レスピマットとハンディヘラー
今回適応申請が行われたのはスピリーバレスピマットってことなんですが、ハンディヘラーは?
レスピマットではチオトロピウムが血中に移行するのが、個人的には気になっています。
論文を見ていると心血管死亡率がハンディへラーに比べてレスピマットでは有意に高くなっています。
TIOSPIR試験ではレスピマットとハンディヘラーで死亡率に差がなかったとなっていますが、心血管リスク患者を除外しての試験なのでこれだけでは安心できません。
心血管リスク高い人ではハンディヘラーを進めたいですね。
レスピマットはハンディヘラーよりも吸入が簡便ってことが売りの一つだった気がしますが、経験上あまり差がない気もします。
たしかに、普通に呼吸をするだけでもしっかりと吸入できるというのはメリットなのですが、操作がややこしいと感じる方も多いようです。
ただ、寒くなると乾燥のせいかハンディヘラーではカプセルが砕けてうまく吸えないケースもあるんですよね。
うーん。
LABAとの配合剤もレスピマットで発売を予定しているそうです。
メーカーとしてはハンディヘラーを減らしていく方向なのかな?
同じLAMAであるシーブリも適応追加を考えているのでしょうか?
LAMAとLABAは併用することで相乗的に効果が高まることも知られているので、LABA・LAMAの配合剤であるウルティブロ(インカテロール・グリコピロニウム)の適応追加にも期待してしまいますね。
追記
平成26年10月27日の薬食審医薬品第ニ部会で承認が了承されました。
効能・効果に追加されたのは、
「気管支喘息(重症持続型の患者に限る)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解」です。
重症持続型とは、通常の治療を行っても症状があり、喘息の症状が週1回以上起こる状態を指します。
なので、使用できる患者さんはある程度限られてきますね。
用法・用量については、今までどおり、
「通常、成人には1回2吸入(チオトロピウムとして5μg)を1日1回吸入投与する。」です。