薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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【薬食審・医薬品第一部会】新規統合失調治療薬 レキサルティ・新規便秘治療薬グーフィス【承認了承】

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平成29年12月4日、厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会で新薬6製品についての審議が行われました。
承認が了承されたのは5製品。
大塚製薬の新規統合失調症治療薬レキサルティ 、EAファーマの新規便秘治療薬グーフィスが気になるところです。
ノボノルディスクファーマの新規GLP-1アナログ オゼンピックは継続審議として次回に持ち越しになっていますね。(2018年1月26日の第一部会で承認了承されました。)
今回、承認了承されたものは全て2018年1月19日に承認、4月18日に薬価収載されました。(ソリリスとオランザピンの適応追加は2017年12月25日付で承認)
  
  

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平成29年12月4日薬食審・医薬品第一部会審議品目

一つずつまとめていきます。
  

新規有効成分

全く新しい成分を持つ新医薬品です。
  

新規統合失調症治療薬レキサルティ

  • 成分名:ブレクスピプラゾール
  • 製品名:
    • レキサルティ錠1mg
    • レキサルティ錠2mg
  • 申請者:大塚製薬
  • 効能・効果:統合失調症
  • 用法・用量:通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgから投与を開始した後、4日以上の間隔をあけて増量し、1日1回2mgを経口投与する。
※2018年1月19日 承認済

ブレクスピプラゾールはエビリファイ(一般名:アリピプラゾール)の構造変換の過程で発見された化合物のようです。
SDAM(Serotonin-Dopamine Activity Modulator)という新しいタイプの非定型抗精神病薬で、ドパミンD2受容体・セロトニン5HT1A受容体にはパーシャルアゴニストとして作用、セロトニン5HT2A受容体にはアゴニストとして作用するようです。
(ちなみに、エビリファイはDSS(Dopamin System Stabilizer)と呼ばれています。)
ブレクスピプラゾールはアリピプラゾールと比較して副作用(アカシジア)が少ないという報告があるようです。
  

新規便秘治療薬グーフィス

  • 成分名:エロビキシバット水和物
  • 製品名:グーフィス錠5mg
  • 申請者:EAファーマ
  • 効能・効果:慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)
  • 用法・用量:通常、成人にはエロビキシバットとして10mgを1日1回食前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、最高用量は1日15mgとする。

※2018年1月19日 承認済

胆汁酸の再吸収にかかわるトランスポーターを阻害することで自然な排便を促す新規機序の便秘治療薬です。
1日1回の服用で効果を発揮します。
  
1錠5mgですが、常用量は10mg。
最大で15mgまで増量可能とのことです。
食前服用、5時間くらいで効果発現とのこと。  
  
  

適応追加

新規適応が追加になる薬剤です。
  

ソリリスに全身型重症筋無力症に対する適応が追加

  • 成分名:エクリズマブ(遺伝子組換え)
  • 製品名:ソリリス点滴静注300mg
  • 申請者:アレクシオンファーマ
  • 追加される効能・効果:全身型重症筋無力症(免疫グロブリン大量静注療法又は血液浄化療法による症状の管理が困難な場合に限る)

※2017年12月25日 承認済

全身型重症筋無力症(gMG:generalized myasthenia gravis)は指定難病の一つです。
抗体や補体の異常により、神経接合部でのアセチルコリン受容体を減少させ、神経伝達障害を起こしてしまう疾患です。
既存の治療では、第一選択薬が経口ステロイド、第2選択薬がタクロリムスやシクロスポリンなどのカルシニューリン阻害薬、第3選択薬が免疫グロブリン静注療法や血漿交換とされていますが、ソリリスは第3選択薬の新たな選択肢として加わることになります。
ヒト補体であるC5に対して高い親和性を有するヒト化モノクローナル抗体で、C5の活性化によるC5a及びC5bの産生を阻害することで神経筋接合部におけるアセチルコリン受容体の消失と、それに伴う神経筋伝達障害を改善すると考えられています。
  
  

新剤型

すでに発売されている医薬品の剤型違いです。
  

ナルラピド・ナルサスの注射製剤ナルベイン注

  • 成分名:ヒドロモルフォン塩酸塩
  • 製品名:
    • ナルベイン注2mg
    • ナルベイン注20mg
  • 申請者:第一三共プロファーマ
  • 効能・効果:中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛
※2018年1月19日 承認済

μオピオイド受容体作動で、すでに発売されている経口剤のナルラピド錠(即放性製剤)とナルサス錠(1日1回徐放性製剤)と同じ成分です。
あへん系麻薬性鎮痛剤で、WHOのがん疼痛治療ガイドラインでは、疼痛管理の標準薬に位置付けられています。
  
  

既知の成分を利用した新薬

成分自体はすでに知られているものですが、新規適応を持つ医薬品として開発されたものです。
  

イブプロフェンを利用した新薬イブリーフ

  • 成分名:イブプロフェンL-リシン
  • 製品名:イブリーフ静注20mg
  • 申請者:千寿製薬
  • 効能・効果:未熟児動脈管開存症で保存療法(水分制限、利尿剤投与等)が無効の場合

※2018年1月19日 承認済

未熟児動脈管開存症は、本来、出産後に閉鎖する大動脈と肺動脈をつなぐ動脈管が、早産などの理由により、生後も閉鎖せず、発育不全や呼吸困難、頻拍などの症状を引き起こし、長期予後を悪化させる可能性がある疾患です。
イブリーフはイブプロフェンによる動脈管の収縮を促す作用を期待して開発された医薬品です。
  
  

承認が見送られた医薬品

今回の部会の審議では不十分とされ、次回以降に継続して審議が行われるものが一つあります。
  

新規GLP-1アナログ オゼンピックは承認見送り

週1回投与のGLP-1アナログ、オゼンピック皮下注(一般名:セマグルチド)は継続審議となりました。
オゼンピックについては、重度の腎機能障害患者の使用に対する注意喚起についての検討が必要となり、現在の添付文書案のままで問題ないかどうか判断できなかったようです。
  
オゼンピック特有の問題なのでしょうか?
次回の部会でその辺りが詳しく判明しそうですね。
  
  

報告品目

部会での審議はなく、報告のみの品目です。
適応追加が一つあります。
  

ジプレキサならびにオランザピンの一部に抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状の適応追加(報告品目)

  • 成分名:オランザピン
  • 製品名:
    • ジプレキサ錠2.5mg
    • ジプレキサ錠5mg
    • ジプレキサ錠10mg
    • ジプレキサ細粒1%
    • ジプレキサザイディス錠2.5mg
    • ジプレキサザイディス錠5mg
    • ジプレキサザイディス錠10mg
    • オランザピン錠2.5mg「DSEP」・「日医工」・「ニプロ」・「ファイザー」
    • オランザピン錠5mg「DSEP」・「日医工」・「ニプロ」・「ファイザー」
    • オランザピン錠10mg「DSEP」・「日医工」・「ニプロ」・「ファイザー」
    • オランザピン細粒1%「DSEP」・「日医工」・「ニプロ」・「ファイザー」
    • オランザピンザイディス錠2.5mg「DSEP」・「日医工」・「ファイザー」
    • オランザピンザイディス錠5mg「DSEP」・「日医工」・「ニプロ」・「ファイザー」
    • オランザピンザイディス錠10mg「DSEP」・「日医工」・「ニプロ」・「ファイザー」
  • 申請者:日本イーライリリー・第一三共エスファ・日医工・ニプロ・マイラン製薬・ダイト
  • 追加される効能・効果:抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)
  • 追加される用法・用量:他の制吐剤との併用において、通常、成人にはオランザピンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、患者の状態により適宜増量するが、1日量は10mgを超えないこと。
※2017年12月25日 承認済

すでに公知申請されていたため、今回追加される「抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)」の適応は保険適用されているものです。
ジプレキサは全製品ですが、オランザピンはメーカーが限られているので注意ですね。
ただ、レセプト上、どこまで区別されるかは不明ですが・・・。

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