薬剤師の脳みそ

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パルモディア®の承認〜従来型フィブラートとSPPARMαの違いとは?

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(ここからが記事本文になります)

2017年7月3日、興和株式会社が申請を行っていた高脂血症治療剤「パルモディア錠0.1mg(成分名:ペマフィブラート)」が承認されました。
その後、なかなか薬価収載されませんでしたが、2018年5月22日に収載、6月1日に発売されました。
(平成30年4月現在、パルモディアは薬価収載されていません。3回連続薬価収載見送り、承認から半年経っても発売されないのは極めて異例です。)
2019年6月からは新医薬品に関する投与日数制限も解除されたので処方量が増えることが予想されます。
(ちなみにそのタイミングで錠剤の刻印とPTPシートのデザインが変更されました。返品できない・・・。)
このタイミングで新規のフィブラート系薬剤が登場!?
と思うかもしれませんが、ペマフィブラートは従来のフィブラート系薬剤とは異なるSPPARMα(スパームアルファ)と呼ばれる薬剤とされています。
(SPPARMα=Selective Peroxisome Proliferator-Activated Receptor Modulator α:高活性かつ高選択なPPARαモジュレーター)
今回はパルモディアが従来のフィブラート系薬剤とどう異なるかを中心にまとめてみようと思います。
  
  


  
  

パルモディア錠

  • 医薬品名と薬価
    • パルモディア錠0.1mg:33.90円/錠
  • 成分名:ペマフィブラート
  • 製造販売元:興和
  • 効能・効果:高脂血症(家族性を含む)
  • 用法・用量:通常、成人にはペマフィブラートとして1回0.1mgを1日2回朝夕に経口投与する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減するが、最大用量は1回0.2mgを1日2回までとする。
  • 1日薬価:67.80円
  

承認後の改訂・変更について

軽度の肝機能障害に関する記載整備

使用上の注意改訂のお知らせ(2018.05.31)
自主改訂

  • 軽度の肝機能障害のある患者 → 肝障害のある患者(Child-Pugh分類Aの肝硬変のある患者など)

  

原則禁忌の削除

2018年10月16日付 添付文書改訂指示
使用上の注意改訂のお知らせ(2018年10月15日)

  • スタチン併用についての原則禁忌 → 重要な基本的注意


  

錠剤への製品名印字ならびにPTPシートデザイン変更

錠剤への製品名印字ならびにPTPシートデザイン変更のご案内(2019.05.31)

  • 視認性の向上を目的に、錠剤の表示を識別コードの刻印から製品名の印字へ変更
  • 視認性の向上を目的に、PTP シートのデザインを変更

パルモディア 錠剤への製品名印字とPTPシートデザイン変更
  
  

フィブラート系薬剤とは?

今回承認されたパルモディア(成分名:ぺマフィブラート)はSPPARMαと呼ばれていますが、広い意味ではリピディル・トライコア(成分名:フェノフィブラート)、ベザトール(成分名:ベザフィブラート)などと同じフィブラート系薬剤に分類されます。
フィブラート系薬剤はPPARα(ペルオキシソーム増殖剤応答性レセプターα)と呼ばれる受容体を活性化させることで効果を発揮する薬剤です。
ということで、復讐を兼ねて、ペルオキシソーム増殖剤応答性レセプターとフィブラート系薬剤の働きについて整理してみようと思います。
  

フィブラートとPPAR

フィブラートの歴史は非常に長く、国際的には1930年には臨床応用されています。
日本国内での年表を見てみると以下のように古くから使用されてきたことがわかります。

  • 1969年:クロフィブラート(商品名:ビノグラック®←発売中止)
  • 1981年:クリノフィブラート(商品名:リポクリン®錠)
  • 1991年:ベザフィブラート(商品名:ベザトール®SR錠)
  • 1999年:フェノフィブラート(商品名:リパンチル®カプセル←発売中止)
  • 2005年:微粉化フェノフィブラート(商品名:リピディル®カプセル/トライコカプセル←発売中止)
  • 2011年:固体分散化フェノフィブラート(商品名:リピディル®錠/トライコア®錠)

フィブラートの作用機序は長らく不明のままでしたが、1990年代になってやっとPPAR(Peroxisome Proliferator-Activated Receptors)、特にPPARαを活性化させることで効果を発揮するということがわかりました。
  

ペルオキシソーム増殖剤応答性レセプター(PPAR)とは?

まずは、PPAR(Peroxisome Proliferator-Activated Receptors:ペルオキシソーム増殖剤応答性レセプター)についてまとめます。
PPARは核内受容体の一種で、細胞の分化や細胞内での様々な物質の代謝に関わる因子であることがわかっています。
PPARにはα、γ、δの3つのサブタイプが発見されており、それぞれ発現している臓器や働きが異なることが知られています。
  

PPARとサブタイプ

フィブラート系薬剤はPPARαを活性化させる働きを持つ、PPARα作動薬(PPARαアゴニスト)です。
PPARγを活性化させるPPARγアゴニストとして有名なのはチアゾリジン誘導体(TZDs:ThiaZolidine Derivatives)に分類され、インスリン抵抗性を改善させる薬として使用されているアクトス(成分名:ピオグリタゾン)があります。
また、PPARδは骨格筋での脂肪代謝に関わる物質として研究が進められています。
  

フィブラートのPPARαアゴニストとしての作用

フィブラート系薬剤の主たる作用は中性脂肪(トリグリセリド、TG:TriGlyceride)の減少とHDLコレステロール(HDL-C:High-Density Lipoprotein - Cholesterol)の増加です。
  

中性脂肪を低下させる作用

フィブラート系薬剤がPPARαを活性化させると、LPL(LipoProtein Lipase、リポ蛋白リパーゼ)が活性化されます。
活性化されたLPLは中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセリンに分解します。
  
また、PPARαの活性化は、脂肪酸輸送タンパク質(FATP:Fatty Acid Transport Protein)の発現も促します。
FATPには血中の遊離脂肪酸を脂肪細胞へ取り込ませる働きがあります。
  

HDLコレステロールの増加作用

HDL(High Density Lipoprotein:高比重リポタンパク)コレステロールは善玉コレステロールと呼ばれており、動脈硬化などの原因となる過剰なコレステロールを回収する働きを持っています。
PPARαが活性化されることにより、HDLコレステロールの構成成分であるアポリポプロテイン(ApoA-1、ApoA-2)というタンパク質の発現が促され、HDLコレステロールが増加します。
  

フィブラートの副作用

フィブラートはPPARαを活性化することで中性脂肪の低下やHDL-Cの増加のような有益な効果がある一方、肝機能異常や腎障害を起こすことも知られています。
これはPPARの働きが様々な臓器で多岐に渡るためで、単純にPPARαを狙って活性化させるだけでは、働きをコントロールしきれないというわけです。
  

フェノフィブラートとベザフィブラートの違い

従来型フィブラート系薬剤として現在日本で発売されているのは、ベザフィブラート(ベザトール)とフェノフィブラート(リピディル・トライコア)です。
どちらも同じPPARアゴニストですが、フェノフィブラートはPPARの中でもPPARα選択性を高めたものになっています。
その結果、フェノフィブラートは強力なTG低下作用を発揮することが可能になっています。
それに対して、ベザフィブラートは選択性が低いためTG低下作用はフェノフィブラートに劣りますが、PPARγアゴニストとしての作用を併せ持っており、インスリン抵抗性改善作用も有しています。
  
  

ペマフィブラートと従来型フィブラートの違いとは?

ここからは、いよいよ、SPPARMαパルモディア(成分名:ペマフィブラート)についてまとめていきたいと思います。
  

SPPARMαってどんな意味?

まずは、SPPARMαという言葉の意味です。
SPPARMα=Selective Peroxisome Proliferator-Activated Receptor Modulator α:高活性かつ高選択なPPARαモジュレーター
日本語に訳してもなんだかわからない名称ですよね。
  
モジュレーターと聞いて思い出すのはSERMでしょうか?
SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター、Selective Estrogen Receptor Modulator)は骨代謝改善に必要な骨に存在するエストロゲン受容体にのみ作用して、子宮や乳房のエストロゲン受容体には作用しません。
このようにモジュレーターと呼ばれる薬剤は、単純に標的となる受容体を活性化させるのではなく、その中でもターゲットとする部位にのみ作用するように制御を行うことを可能としたものを指します。
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パルモディア錠インタビューフォームより
  

PPARαモジュレーターとは?

PPARαアゴニストであるフェノフィブラートやベザフィブラートはPPARαの活性化部位に結合することで、その働きを単純に活性化させます。
これに対してSPPARMαであるペマフィブラートはPPARαと結合し、その立体構造を変化させることで、特定の(中性脂肪低下やHDL-C合成促進に関わる)遺伝子の発現を高めるように設計された薬剤です。
少しわかりにくと思うので補足すると、

  • 従来のフィブラートは単純にPPARαのスイッチをONにする
  • ペマフィブラートはPPARαの形を変えることで適切な臓器でスイッチがONになりやすいようにする

というイメージなのではないかと個人的に解釈しています。
  
この働きにより、ペマフィブラートはフェノフィブラートと同等の効果を持ちながら、肝機能異常や腎機能異常と言った副作用を起こりにくくしています。
ちなみに、肝機能異常を起こさないどころか、ALTやγGTPの低下作用(脂肪肝改善作用)も見られるようで、こちらを適応に取り入れるべく試験を行っているとのことです。
  
  

パルモディアの特徴

ここからはパルモディアの添付文書インタビューフォームRMPの内容を元にパルモディアの特徴についてまとめていきます。
ちなみに、パルモディアという名前はPPARModulatorというところからだそうです。
  

禁忌と原則禁忌

肝機能異常を起こすのと肝機能障害が禁忌なのは別の話ですよね。
「禁忌」については以下のような記載になっています。
禁忌(次の患者には投与しないこと)

  1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  2. 重篤な肝障害、Child-Pugh分類B又はCの肝硬変のある患者あるいは胆道閉塞のある患者(肝障害を悪化させるおそれがある。また、本剤の血漿中濃度が上昇するおそれがある。)
  3. 中等度以上の腎機能障害のある患者(目安として血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上)
  4. 胆石のある患者(胆石形成が報告されている。)
  5. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
  6. シクロスポリン、リファンピシンを投与中の患者

引用元:パルモディア錠0.1mg 添付文書

気になるのは重篤な肝障害と中等度以上の腎障害ですね。
  

重篤な肝障害、Child-Pugh分類B又はCの肝硬変のある患者あるいは胆道閉塞のある患者

臨床試験でのデータを元に決定されています。
Child-Pugh分類Bの肝硬変患者に投与した際に血中濃度が著しい上昇が見られ、Cmaxが約3.9倍、AUCが約4.2倍になっています。
この結果を受けて、Child-Pugh分類BまたはCの肝硬変については禁忌とされています。
胆道閉塞のある患者も禁忌となっていますが、これはパルモディア®︎が胆汁排泄型薬物であるためです。
  
肝機能障害については慎重投与となっています。
慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
肝障害のある患者又は肝障害の既往歴のある患 者〔肝機能検査値の異常変動があらわれるおそれがある。また、肝障害のある患者(Child-Pugh分類Aの肝硬変のある患者など)では本剤の血漿中濃度が上昇するおそれがある。
引用元:パルモディア錠0.1mg 添付文書
また、「用法・用量に関連する使用上の注意」には以下のように記載されています。
用法・用量に関連する使用上の注意
肝障害のある患者(Child-Pugh分類Aの肝硬変のある患者など)又は肝障害の既往歴のある患者に投与する場合には、必要に応じて本剤の減量を考慮すること。
引用元:パルモディア錠0.1mg 添付文書
  

中等度以上の腎機能障害のある患者

中等度以上の腎機能障害のある患者(目安として血清クレアチニン値が 2.5mg/dL以上)には投与禁忌となっています。
パルモディア®︎の承認時点で横紋筋融解症の副作用報告はないんですが、他のフィブラート系薬剤では中等度以上の腎障害において横紋筋融解症があらわれることがあるとされているため、それを参考に設定されています。
横紋筋融解症が起こりにくいっていうのが一つの売りなんで、この辺り他のフィブラートと差別化できればいいんでしょうけどね・・・。
そもそも胆汁排泄なわけですし。
  
軽度の腎機能障害のある患者(目安として血清クレアチニン値が1.5mg/dL以上2.5mg/dL未満)は慎重投与とされています。
肝機能同様に、「用法・用量に関連する使用上の注意」にも記載があります。
用法・用量に関連する使用上の注意
急激な腎機能の悪化を伴う横紋筋融解症があらわれることがあるので、投与にあたっては患者の腎機能を検査し、血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上の場合には投与を中止し、1.5mg/dL以上2.5mg/dL未満の場合は低用量から投与を開始するか、投与間隔を延長して使用すること。
引用元:パルモディア錠0.1mg 添付文書
  

胆石のある患者

これは他のフィブラートにも言えることですが、PPARαが活性化した結果、コレステロールの胆汁中への排泄が促進されます。
これがコレステロールの低下につながるわけですが、その結果、コレステロール胆石を作りやすくなってしまいます。
そのため、元々胆石がある場合は禁忌となっています。
胆石の既往がある場合は慎重投与とされています。
  

シクロスポリン、リファンピシンを投与中の患者

ペマフィブラートは他のフィブラートと比較して、薬物相互作用が大きく増えています。
これについては下の方で詳しくまとめますね。
  

結局、スタチン併用は原則禁忌のまま→2018年10月16日付で解除

スタチンの併用は他のフィブラートと同様に原則禁忌のままです・・・。でしたが、平成30年10月16日付で添付文書改訂され、原則禁忌から削除されました。
詳しくは以下の記事を参照してください。

原則禁忌(次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること)
腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者に、本剤とHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用する場合には、治療上やむを得ないと判断される場合にのみ併用すること。(横紋筋融解症があらわれやすい)
引用元:パルモディア錠0.1mg インタビューフォーム
パルモディア承認前から言われていた特徴にスタチン併用時の安全性がありました。
実際、ピタバスタチン単独使用時とパルモディア併用群とでの副作用発現率はほぼ変わらなかったというデータがあります。
メーカーの話では、原則禁忌を撤回するには症例数が足らなかったということですが、発売一年後の投与制限解除までに、この原則禁忌を削除できるかどうかで売り上げが大きく変わる気がします。
現時点では、原則禁忌であるため腎障害の場合はスタチンの併用を避けるしかないですね。

  

適応は他のフィブラートと同じ

効能・効果はベザフィブラート・フェノブブラートと同じ、家族性を含む高脂血症です。
効能・効果
高脂血症(家族性を含む)
引用元:パルモディア錠0.1mg 添付文書
  
LDL-Cを下げる作用はありませんので以下のように注意が記載されています。
効能・効果に関連する使用上の注意
LDL-コレステロールのみが高い高脂血症に対し、第一選択薬とはしないこと。引用元:パルモディア錠0.1mg 添付文書
  
「ALTやγGTPの低下作用(脂肪肝改善作用)」を適応に取り入れることができるように計画しているという話もあるので、将来的には適応追加や拡大があるのかもしれません。
  

服用方法

残念ながら1日1回ではなく、1日2回の服用となっています。
用法・用量
通常、成人にはペマフィブラートとして1回0.1mgを1日2回朝夕に経口投与する。なお、年齢、症状に応じて適宜増減するが、最大用量は1回0.2mgを1日2回までとする。
引用元:パルモディア錠0.1mg 添付文書
臨床試験のデータでは、

  • パルモディア 0.2mg/日(0.1mg×2回)がリピディル/トライコア 106.6mgmg/日(53.3mg×2錠)と同等の効果
  • パルモディア 0.4mg/日(0.2mg×2回)がリピディル/トライコア 160mgmg/日(80mg×2錠)と同等の効果

となっています。
  
従来のフィブラートは1日1回なので、1日2回ってのは勿体無いなあ・・・。
  

薬物相互作用

上にも書きましたが、パルモディア®︎は従来のフィブラート系薬剤と比較して相互作用が非常に多くなっています。
まずは、相互作用の原因となる特性について。
相互作用
本剤は、主として CYP2C8、CYP2C9、CYP3A により代謝される。また、本剤は、OATP1B1、OATP1B3の基質となる。
引用元:パルモディア錠0.1mg 添付文書
薬物動態
  1. 血漿蛋白結合率:本剤のヒト血漿蛋白結合率は99%以上であった。
  2. 代謝
    1. 健康成人に14C-ペマフィブラートを単回経口投与したとき、主な血漿中代謝物はベンジル位酸化体及びジカルボン酸体のグルクロン酸抱合体とN-脱アルキル体の混合物であった。
    2. ペマフィブラートは、CYP2C8、CYP2C9、CYP3A4、CYP3A7、UGT1A1、UGT1A3及びUGT1A8の基質である。
引用元:パルモディア錠0.1mg 添付文書
CYP3A4、OATP1B1、OATP1B3と並んでいるのを見ただけで、だいたい想像できるかとは思います。
以下に添付文書に記載されているものを並べますが、他にも影響のある薬物は多く存在するんじゃないかと思います。
  

併用禁忌

  • シクロスポリン(商品名:サンディミュン、ネオーラル等):併用によりペマフィブラートの血中濃度上昇(Cmax約9.0倍、AUC約14.0倍)の報告あり(シクロスポリンによるOATP1B1、OATP1B3、CYP2C8、CYP2C9及びCYP3Aの阻害作用)
  • リファンピシン(商品名:リファジン等)単回投与時:併用によりペマフィブラートの血中濃度上昇(Cmaxで約9.4倍、AUCで約10.9 倍)の報告あり(リファンピシンによるOATP1B1及びOATP1B3の阻害作用)
  • リファンピシン(商品名:リファジン等)反復投与時:併用によりペマフィブラートの血中濃度低下(Cmax で約0.4倍、AUCで約0.2倍)の報告あり(リファンピシンによるCYP 誘導作用)

  

原則併用禁忌→2018年10月16日付で解除

上にも書いた通り、残念ながら他のフィブラートと同じです。
HMG-CoA還元酵素阻害薬(プラバスタチンナトリウム、シンバスタチン、フルバスタチンナトリウム等)

  • 臨床症状・措置方法:急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすい。やむを得ず併用する場合には、本剤を少量から投与開始するとともに、定期的に腎機能検査等を実施し、自覚症状(筋肉痛、脱力感)の発現、CK(CPK)の上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇並びに血清クレアチニン上昇等の腎機能の悪化を認めた場合には直ちに投与を中止すること。
  • 機序・危険因子:腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者

※機序は不明であるが、フィブラート系薬剤とHMG-CoA還元酵素阻害薬の併用で、それぞれの薬剤単独投与時に比べて併用時に横紋筋融解症発現の危険性が高まるという報告がある。

  • 原則併用禁忌に関する注意:腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者では原則として併用しないこととするが、治療上やむを得ないと判断される場合にのみ慎重に併用すること。

引用元:パルモディア錠0.1mg インタビューフォーム

これが外れればかなり大きいんですが・・・。
  

併用注意

  • クロピドグレル硫酸塩(商品名:プラビックス等):併用によりペマフィブラートの血中濃度上昇(クロピドグレル300mg投与時:Cmaxで約1.5 倍・AUCで約2.4倍、クロピドグレル75mg投与時:Cmax で約1.3倍・AUCで約2.1倍)の報告あり(クロピドグレルによるCYP2C8及びOATP1B1の阻害作用)
  • クラリスロマイシン(商品名:クラリス/クラリシッド等):併用によりペマフィブラートの血中濃度上昇(Cmaxで約2.4倍、AUCで約2.1倍)の報告あり(クラリスロマイシンによるCYP3A、OATP1B1及びOATP1B3の阻害作用)
  • HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビル等):併用によりペマフィブラートの血漿中濃度が上昇するおそれ(併用薬によるCYP3A、OATP1B1、OATP1B3の阻害作用)
  • フルコナゾール:併用によりペマフィブラートの血中濃度上昇(Cmaxで約1.4倍、AUCで約1.8倍)の報告あり(併用薬によるCYP2C9及びCYP3Aの阻害)
  • 陰イオン交換樹脂(コレスチラミン、コレスチミド):併用によりペマフィブラートの血中濃度が低下する可能性(同時投与によりペマフィブラートが吸着され吸収が低下する可能性)
  • 強いCYP3A誘導剤(カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品等):ペマフィブラートの血中濃度が低下し、本剤の効果が減弱するおそれ(併用薬の強いCYP3Aの誘導作用により、ペマフィブラートの代謝が促進)

注意するべき薬剤が多いですね。
基質となるCYP分子種、トランスポーターが豊富なことからこの他にも併用に注意すべき薬剤が色々と考えられます。
ペマフィブラートの性質上、血中濃度の上昇=有害事象の発現とはならないような気もしますが、気をつけないといけませんね。
  

副作用

副作用は非常に少なくなっています。
上にも書いた通り、これはSPPARMαの特性ですね。
重大な副作用
横紋筋融解症(頻度不明)
筋肉痛、脱力感、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症があらわれ、これに伴って急性腎不全等の重篤な腎障害があらわれることがあるので、このような場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
その他の副作用

  1. 肝臓:胆石症(1%以上)
  2. 肝臓:肝機能異常、AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇(0.3~1%未満)
  3. その他:糖尿病(悪化を含む)(1%以上)
  4. その他:CK(CPK)上昇、グリコヘモグロビン増加、低比重リポ蛋白増加、血中ミオグロビン増加、血中尿酸増加(0.3~1%未満)

引用元:パルモディア錠0.1mg 添付文書

リピディル/トライコアやベザトールでは重大な副作用に肝機能異常が記載されていますが、パルモディアでは重大な副作用は横紋筋融解症のみです。

  • ベザトールの重大な副作用:横紋筋融解症、アナフィラキシー、肝機能障害、黄疸、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑(全て頻度不明)
  • リピディル/トライコアの重大な副作用:横紋筋融解症(0.1%未満)、肝障害(0.1~5%未満)、膵炎(頻度不明)

  
この副作用の少なさこそがパルモディアの大きなメリットの一つですね。
  

注意すべき安全性検討事項

パルモディア錠0.1mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP)を元に注意すべき有害事象をまとめておきます。
  • 重要な特定されたリスク
    • 横紋筋融解症
  • 重要な潜在的リスク
    • LDL-コレステロール値 の上昇
  • 重要な不足情報
    • 肝機能障害患者
    • 腎機能障害患者
    • 75歳以上の高齢者
    • 長期投与における安全性
重要な不足情報が多いのが少し気になりますね。
  

横紋筋融解症

RMPには以下のように記載されています。

本剤の承認時までに行われた国内臨床試験において、1418例に本剤が投与 されたが、横紋筋融解症の発現は認められていない。横紋筋融解症の症状の一つである筋障害に関連した有害事象としては、筋肉痛0.8%(11例/1418例)、骨格筋痛0.2%(3例/1418例)が報告されている。また、注意が必要とされているスタチン併用中の患者では筋肉痛1.3%(8例/632例)、骨格筋痛0.3%(2例/632例)、腎機能障害患者では筋肉痛1.6%(3例/185例)、骨格筋痛0.5%(1例/185例)がそれぞれ報告されている。
引用元:パルモディア錠0.1mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP
承認までは横紋筋融解症の報告はなかったようですが、横紋筋融解症の発現頻度を考えると、症例数としてはまだまだ少なく、他のフィブラート系薬剤で報告されている副作用のため、重要な特定されたリスクとされたようです。
  

LDL-コレステロール値 の上昇

RMPには以下のように記載されています。

承認時までに行われた国内臨床試験のうち、第II/III相フェノフィブラート との比較検証試験では、本剤投与後にベースラインと比較してLDL-コレステロール値の上昇が認められた。
引用元:パルモディア錠0.1mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP
RMPには臨床試験のデータも記載されているので詳しくは参照してください。
LDL-コレステロール値が上昇すれば、冠動脈疾患のリスクが上昇するため、重要な潜在的リスクとされています。
  

肝機能障害患者

RMPには以下のように記載されています。

「重篤な肝障害、Child-Pugh分類B又はCの肝硬変のある患者あるいは胆道閉塞のある患者」は本剤の添付文書において「禁忌」としているが、実地医療において「禁忌」に該当しないメタボリックシンドロームと関連が深い非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)等の肝機能障害を合併する患者での使用が想定される。特に、承認時までに行われた国内臨床試験においては、 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)合併患者等、肝機能障害が進行した患者での使用経験が限られている。
引用元:パルモディア錠0.1mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP
薬剤の性質上NAFLD*1やNASH*2に対して使用されるケースは多そうです。
今後症例数が増えることでなんらかの報告が上がってくる可能性があると思います。
  

腎機能障害患者

RMPには以下のように記載されています。

慢性腎臓病(CKD)はメタボリックシンドロームと関連が深く、腎機能障害を合併する脂質異常症患者は多く存在する。そのため、実地医療においては腎機能障害を合併する患者での使用が想定されるものの、承認時までに行われた国内臨床試験において、本剤の使用経験が限られている。また、フィブラート系薬剤において腎機能障害を有する患者で横紋筋融解症の発現が懸念されている。
引用元:パルモディア錠0.1mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP
CKD*3に対して使用される機会が多いと想定される薬剤であり、腎障害が横紋筋融解症のリスクを上昇することがわかっているため、今後、なんらかの報告が上がってくる可能性はありそうです。
  

75歳以上の高齢者・長期投与における安全性

これらに関してもリスクが想定されるが十分なデータは不足しているというのが理由ですね。

  • 75歳以上の高齢者では生理機能が低下しているため副作用発現が増えることが想定される
  • 国内臨床試験は52週までしか行われていない

いずれのデータは十分ではありません。
  

有効性に関する検討事項

これについてもパルモディア錠0.1mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP)からです。

  • 使用実態下における長期投与時の有効性
  • 心血管イベント抑制効果

  
52週(1年)を超える試験が行われていないため、1年以上の長期投与における有効性が評価されていません。
また、本剤を評価する際、一次エンドポイントとなるであろう心血管イベント抑制について十分な評価もされていません。
  
  

ついに薬価収載!

製造承認後、半年以上経っても薬価基準収載されないままだったパルモディア®︎ですが、ついに薬価収載されました。
承認から10ヶ月。。。
かなり揉めたようで、m3.comにその記事が掲載されています。(登録がまだの方はこちらから→m3.com薬剤師会員登録
平成30年5月22日付で薬価収載される予定です。
気になる薬価ですが、1錠あたり33.90円。
1日薬価は67.80円です。
  

パルモディアの薬価はリピディルと同じ

他のフィブラート系薬剤の薬価と比較してみます。

  • パルモディア錠0.1mg:33.90円/錠(1日薬価:67.80円)
  • ベザトールSR錠100mg:20.50円/錠
  • ベザトールSR錠200mg:25.00円/錠(1日薬価:50.00円)
  • リピディル錠53.3mg:26.10円/錠(1日薬価:52.20円)
  • リピディル錠80mg:33.90円/錠(1日薬価:67.80円)
  • トライコア錠53.3mg:26.00円/錠(1日薬価:52.00円)
  • トライコア錠80mg:33.70円/錠(1日薬価:67.40円)

リピディルと同じか。。。
これは興和さんにとっては少しがっかりな評価かもしれませんね。
やはり、この薬価を受け入れることができず、薬価収載を見送っていたんでしょうね。
  
  

まとめ

新しいフィブラート、世界初のSPPARMαペマフィブラートを成分とするパルモディアについてまとめました。
従来型フィブラート(PPARαアゴニスト)であるリピディル/トライコアと同等のTG低下・HDL-C増加作用を持ちながら、副作用を大きく低減し、肝機能障害・腎機能障害の発現を抑えることに成功した薬剤です。
また、ALTやγGTPの低下作用による脂肪肝改善作用も期待されています。
スタチン併用でも副作用の発現率が変わらないというデータがあるのですが、従来のフィブラートと変わらずスタチン併用が原則禁忌なのは残念なところです
また、用法が1日2回になってしまったこと、相互作用が多いところも注意が必要ですね。
スタチン併用が本当に問題ないことが証明できれば、同じ興和の製品であるピタバスタチンとの合剤なども考えられ、どのような効果を発揮するか非常に興味があるところではあります。
おそらく、他社もSPPARMαを研究しているのではないかなあと思うので、より使いやすいものが後続に現れそうな気もしますが、どうなるでしょう?
まだ海外でも未発売なのでデータがないため未知の有害事象等の不安はあります。
様々な可能性を秘めた薬剤でもあると思うので期待したいところですが、作用機序から期待できるほど臨床効果で従来のフィブラートとの差が出ないのかもしれませんね。
  

いつ発売される?今だに発売延期中

パルモディアは平成30年4月現在、今だに薬価収載されておらず、発売されていません。
平成29年8月、平成29年11月、平成30年4月と薬価収載は3回連続の見送りとなりました。
これってかなりの異例です。
中医協と興和とで薬価の折り合いがつかないとのことですが、現在の添付文書の内容では有用性加算などで特別高い評価がつきにくいのかもしれませんね。
興和としては大型化を期待しているだけに、譲りたくないところなんだと思います。
原則禁忌等が解除されれば変わるとは思うのですが・・・。
まさか、それまで薬価収載されないとか?なんて思ったりするようになってきました。

*1:NonAlcoholic Fatty Liver Disease

*2:NonAlcoholic Steato-Hepatitis

*3:Chronic Kidney Disease

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