薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
2020年11月からURLが変更となりました。(新URL https://yakuzaishi.love)
  

デザレックス(デスロラタジン)〜クラリチンの活性代謝物による新規第二世代抗ヒスタミン薬

m3.comで基礎知識を高めよう
薬剤師の脳みそではm3.comへの登録をお勧めしています。
メルマガやアプリで医薬ニュースを閲覧できるので、毎日医療ニュースに触れることができます。しっかり読む時間がなくても少しずつ知識をたくわえることができ、それが基礎的な力になります。未登録の方は無料登録できるので、是非、下のリンクから登録してください。

(ここからが記事本文になります)

平成28年8月5日、厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会が行われました。
今回は、審議が行われた品目の中から、デザレックスについてまとめます。
デザレックスは海外ではすでにクラリネックスやネオクラリチンの名前で発売されている薬で、いわゆるスーパークラリチン?です。
なお、平成28年9月28日に正式に製造販売が承認されました。
(当初、リフキシマと合わせた記事としていましたが、薬価収載に伴い、記事を分けました。)
  
  

f:id:pkoudai:20161118224029j:plain
  
  

平成28年8月4日薬食審・医薬品第一部会での審議品目

今回審議され、承認が了承されたのは以下の通りです。

何回かに分けてまとめていきたいと思います。
  
  

デザレックスの承認了承

  • 成分名:デスロラタジン
  • 製品名:デザレックス錠5mg
  • 申請者:MSD
  • 効能・効果:アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒
  • 用法・用量:「通常、12歳以上の小児及び成人にはデスロラタジンとして1回5mgを1日1回経口投与する。」

  
申請はMSDなんですが、MSDは販売も販促もしないみたいです。
杏林製薬が単独販売して、プロモーションは杏林と科研製薬が共同で行うという不思議な状態。
ちなみに、クラリチン®は元々MSD(旧シェリングプラウ)と塩野義が販売していましたが、MSDがバイエルに権利を売却したため、今はバイエルと塩野義で販売となっていますね。
  
  

デスロラタジンはスーパークラリチン?

デスロラタジンの化合物名はデスカルボエトキシロラタジン(DesCarboethoxyLoratadine:DCL)です。
これはロラタジン(クラリチン®)の活性代謝物です。
ロラタジンは肝臓でCYP3A4及びCYP2D6による代謝を受けて活性代謝物であるDCLになり、H1受容体ブロッカーとして抗ヒスタミン作用を発揮します。
  
じゃあ、初めからDCLの形で投与すればいいんじゃないかということで開発されたのがデスロラタジンというわけです。
海外ではすでに発売されており、国によって名称が違いますが、クラリネックスとかネオクラリチン、エリアス、アレックスなどの名称で販売されています。
  
  

チトクロムP450による活性化が不要

メリットとして考えられるのは、まず、肝臓での代謝を必要とせずに効果を発揮できること。
日本人のうち4割程度がCYP2D6の酵素活性が少ないIM(Inter mediate Metabolizer)、1〜2%がPM(Poor Metabolizer)であることを考えると、CYP2D6による代謝を必要としないのはメリットかもしれません。
でも、CYP3A4でも代謝可能なんですよね・・・。
正直、どの程度メリットが出てくるかは不明です。
  
ただ、併用薬等による薬物相互作用の影響は考えなくてもいいのは確実なメリットだとは思います。
が、これもそこまで影響がでかいイメージはないんですよね・・・。
  
  

ロラタジンと比較した場合の強さ

効果は同程度と言われています。
なんとも微妙ですね。
ただ、消失半減期が大幅に長くなっているため、効果持続時間が長いことがメリットと言えるかもしれません。
  
  

デスロラタジンは空腹投与可能

ロラタジンは食後投与の適応でしたが、デスロラタジンは空腹投与も可能になっています。
食事の縛りがないのは使いやすいかもしれませんね。
と言っても、それは保健上の話で、ロラタジンの場合、空腹時の方がロラタジンの血中濃度は下がりましたが、活性代謝物であるDCLの濃度は変わらないんでしたよね・・・。
  
  

気になるのは薬価

メリットが少々分かりづらい気もするデスロラタジン。
ですが、海外ではクラリチンから置きかわって使用されているようです。
日本でクラリチン®が発売開始(2002年9月)された時に、すでに海外でクラリネックス®が販売されていたようです(2001年12月にFDAで承認)からそれなりに使用経験もある薬です。
  
さて、日本での薬価はどうなるでしょう?
薬価が高いのであればロラタジンのジェネリックから切り替えるメリットを感じにくい気もします・・・。
  
  

平成28年11月18日に薬価収載・販売開始

気になる薬価は、69.40円。
発売日は薬価収載と同日でした。
参考までに、

  • クラリチン:86.70
  • ロラタジン:44.70

まさにクラリチンとロラタジンの間の薬価になっていますね。
変に処方が増えそうな気がする絶妙な?薬価ですね。
とりあえず、クラリチンはこのままフェードアウトかな?
  
ちなみに、同時に薬価収載された、もう一つの新規H1受容体拮抗薬ビラノア錠(ビラスチン)は79.70円となっています。

© 2014- ぴーらぼ inc. プライバシーポリシー