薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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2016年度調剤報酬改定~中医協これまでの議論の整理①

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(ここからが記事本文になります)

遅くなってしまいましたが、あけましておめでとうございます。
本日、平成28年1月13日、新年最初の中医協審議が開催されました。
その中で、平成28年度診療報酬改定について、これまでの議論についてまとめた資料が公開されました。
資料の内容に従って、まとめてみたいと思います。
平成28年度調剤報酬改定について、4月以降の薬局の業務が見えてくるような具体的な内容が明記されています。
ちょっと、長くなるので二回に分けてまとめます。
今日は、

  • かかりつけ薬剤師の評価
  • 二回目以降の薬歴管理料の評価
  • 電子版お薬手帳の評価とお薬手帳持参の促進
  • 重複投薬・相互作用防止加算の見直し
  • 在宅業務の見直し
  • 調剤料の見直し
  • 分割調剤の見直し

についてまとめます。


H28調剤報酬改定についての過去記事です。
なお、疑義解釈等が公開されて初めて考え方がわかるものもあるので、あくまで現時点での一人の薬剤師の解釈として捉えてもらえれば幸いです。
解釈に変更等があれば随時更新する予定です。
https://pharmacist.hatenablog.com/archive/category/%E8%A8%BA%E7%99%82%E5%A0%B1%E9%85%AC%E6%94%B9%E5%AE%9A-%E5%B9%B3%E6%88%9028%E5%B9%B4%E5%BA%A6%EF%BC%882016%E5%B9%B4%E5%BA%A6%EF%BC%89%E8%AA%BF%E5%89%A4%E5%A0%B1%E9%85%AC%E6%94%B9%E5%AE%9Apharmacist.hatenablog.com
  

平成28年度診療報酬改定について

最初に改定率について復習しておきますね。
昨年末の時点で、今回の改定で診療報酬本体はプラス改定と決定しています。

診療報酬本体:+0.49%

  • 医科:+0.56%
  • 歯科:+0.61%
  • 調剤:+0.17%


薬価等

  • 薬価:-1.22%
  • 材料価格:-0.11%


そのほか

上記とは別に以下の措置が行われることが決定しています。

  • 新規収載の後発医薬品価格の引き下げ
  • 長期収載品の特例的引き下げの置き換え率の基準見直し
  • 大型門前薬局等に対する評価の適正化
  • 入院医療費において食事として提供される経腸栄養用製品に係る入院時食事療法費等の適正化
  • 1処方あたりの湿布薬の処方枚数制限
  • 費用対効果の低下した歯科材料の適正化


つまり、これらに該当する部分が多ければ実質マイナス改定ということになりますね。
大型門前薬局に対する評価、薬価の大幅な引き下げ(薬価差益の引き下げ)は大病院門前を多く展開するチェーン薬局にとってかなりの打撃なのではないでしょうか?

平成28年度診療報酬に係るこれまでの議論の整理(案)

中医協ホームページ、平成28年1月13日の資料で公開されています。
下記にリンクを貼っておきます。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000109149.pdf

さあ、調剤報酬改定、薬局に関する部分についてまとめてみます。

Ⅰ 地域包括ケアシステムの推進と医療機能の文化・強化、連携に関する視点

Ⅰ-3 地域包括ケアシステム推進のための取り組みの強化について

【Ⅰ-3-1 かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の機能の評価について】
(4)患者本位の医薬分業の実現に向けて、患者の服薬状況を一元的・継続的に把握して業務を実施するかかりつけ薬剤師・薬局を以下のように評価する。

  1. 患者が選択した「かかりつけ薬剤師」が、処方医と連携して患者の服薬状況を一元的・継続的に把握した上で患者に対して服薬指導等を行う業務を薬学管理料として評価する。
  2. 1.の評価に加え、地域包括診療料又は地域包括診療加算が算定される患者に対してかかりつけ薬剤師が業務を行う場合は、調剤料、薬学管理料等に係る業務を包括的な点数で評価することも可能とする。
  3. かかりつけ薬剤師が役割を発揮できる薬局の体制及び機能を評価するため、基準調剤加算について、「患者のための薬局ビジョン」を踏まえ、在宅訪問の実施、開局時間、相談時のプライバシーへの配慮等の要件を見直す。
  4. 患者が薬局における業務内容及びその費用を理解できるよう、かかりつけ薬剤師を持つことの意義、利点等を含め、患者に対する丁寧な情報提供を推進する。

かかりつけ薬剤師

薬局にとっては今回の改定の目玉になりそうですが、誰がかかりつけ薬剤師なのか、どうやって評価するのでしょうか?
ここが一番気になります。
日経DIの記事に記載されていました。
転載します。

日本医師会常任理事の松本純一氏は、「今後議論していくことになるが、かかりつけ薬剤師の条件として、薬剤師の経験年数はもちろん、その薬局への在籍年数、特に管理薬剤師の場合は他の薬剤師の“お手本”としてそれ以上の勤続年数が必要になるのではないか。その辺りを押さえてほしい」と指摘

その薬局への在籍年数ですか…。
これは、異動の多いチェーン薬局にはきつい…。

薬局版地域包括診療料

地域包括診療料又は地域包括診療加算が算定される患者に対してかかりつけ薬剤師が業務を行う場合
と算定要件が定義されましたね。
調剤料・薬学管理料が包括されるということです。
おそらく、月二回までは包括の方が点数が高く、それ以降は薬剤料のみといった形になるのではないでしょうか?
ここにも、かかりつけ薬剤師が絡んできています。

基準調剤加算の見直し

在宅訪問の実施については、基準1でも実績必要。
基準2では実績がさらに厳しくなるといったところでしょうか?
開局時間については、平日は常に開局しないといけなくなるのではないでしょうか?
木曜日午後等の閉局はなしになりそうな気がします。
また、かかりつけ薬剤師が在籍しているかどうかも算定要件に加わりそうですね。

かかりつけ薬剤師の推進

療養担当規則で定めるのか?
基準調剤加算の算定要件に加わるのか?
それとも薬歴管理料の算定要件か?

Ⅰ-4 質の高い在宅医療・訪問介護の確保について

(9)在宅薬剤管理指導業務を推進する観点から、以下のような見直しを行う。

  1. 医師との連携による薬剤師の在宅業務を推進するため、在宅薬剤管理指導業務において、医師の処方内容に対する疑義照会に伴い処方変更が行われた場合を評価する。
  2. 在宅患者訪問薬剤管理指導料について、薬剤師1人が行う算定制限と、同一世帯に居住している複数の患者に対して在宅患者訪問薬剤管理指導業務を行った場合の評価を見直す。
  3. 介護老人福祉施設に入所している患者に対して、施設での適切な服薬管理等を支援するために、当該施設を訪問して保険薬剤師が行う薬学的管理を評価する。

(10)医療機関の薬剤師が行う在宅患者訪問薬剤管理指導料について、Ⅰ-4(9)2.に合わせて見直す。

在宅薬剤管理指導業務での疑義紹介の評価

疑義紹介で処方変更が行われた場合の評価・・・。
これはあとに出てきますが、改定後の「重複投薬・相互作用防止加算」と同様の算定要件になっています。
在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定した場合、原則、ほかの薬学管理料は算定できませんでしたが、今回、算定可能な新たな点数が新設されるのか、「重複投薬・相互作用防止加算」が算定可能となるのか、といったところですね。

在宅患者訪問薬剤管理指導料についての見直し

現在、薬剤師一人あたり1日5回までの算定とされていますが、これが撤廃、もしくは緩くなることが想定されています。
また、同一世帯の評価の見直しということは、これまで、

  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料 同一建物居住者以外の場合:650点
  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料 同一建物居住者の場合:300点

の300点の部分がより高い点数になると期待していいのでしょうか?
さすがに単独の場合と比較して半分以下ってのはやりすぎだと思うんですよね・・・。

介護老人福祉施設入所者の薬学的管理の評価

介護老人福祉施設はいわゆる特別養護老人ホーム(特養)ですね。
医師の配置が義務付けられている特養では、基本的に在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定できず、末期の悪性腫瘍の患者である場合に限って算定可能とされています。
これを算定可能と改めるのか、新しい薬学管理料が新設されるのか、といったところですね。

Ⅱ 患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を実現する視点

Ⅱ-2 情報通信技術(ICT)を活用した医療連携や医療に関するデータの収集・利活用の推進について

(4)お薬手帳については、電子版の手帳であっても、紙媒体と同等の機能を有する場合には、算定上、紙媒体の手帳と同様の取扱いを可能とする。

電子お薬手帳がお薬手帳として認められます・・・が、「紙媒体と同等の機能」って具体的にどこまでをさすのでしょうか?

Ⅲ 重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点

Ⅲ-7 かかりつけ薬剤師・薬局による薬学管理や在宅医療等への貢献度による評価・適正化について

(2)薬剤師・薬局による対人業務の評価を充実する観点から、以下のような見直しを行う。

  1. 薬剤服用歴管理指導料は、業務の実態も考慮しつつ、服薬状況の一元的な把握のために患者が同一の保険薬局に繰り返し来局することを進めるため、初回来局時の点数より、2回目以降の来局時の点数を低くする。ただし、調剤基本料の特例の対象となる保険薬局は除く。
  2. 医師と連携して服用薬の減薬等に取り組んだことを評価するため、重複投薬・相互作用防止加算については、算定可能な範囲を見直す。見直しに伴い、疑義照会により処方内容に変更がなかった場合の評価は廃止する。
  3. 調剤後における継続的な薬学的管理を推進するため、以下のような見直しを行う。ア:患者宅にある服用薬を保険薬局に持参させた上で管理・指導を行うことで残薬削減等に取り組むことを評価する。イ:現行の対象に加え、やむを得ない事情がある場合等に、分割調剤を活用することを可能とする。これに伴い、分割調剤を行う場合の調剤基本料等の評価を見直す。
  4. 継続的な薬学的管理を評価した服薬情報等提供料及び長期投薬情報提供料については、類似の業務内容を評価するものであることから、統合する。
  5. 対物業務から対人業務への構造的な転換を進めるため、内服薬の調剤料や一包化加算の評価を見直すとともに、対人業務に係る1.の薬剤服用歴管理指導料等の薬学管理料を充実する。
  6. お薬手帳については、電子版の手帳であっても、紙媒体と同等の機能を有する場合には、算定上、紙媒体の手帳と同様の取扱いを可能とする。(Ⅱ-2(4)再掲)
  7. お薬手帳について、薬剤服用歴管理指導料による点数の差を設けている現行の取扱いを見直し、患者が手帳を持参して来局することで1.の低い点数が算定できるようにする。

2回目以降の薬歴管理料の減算

これは、今回の情報の中でも目玉というべき部分ではないでしょうか?
先の議論でも、薬歴の表書き等の作成が必要な初回と比較して、2回目以降は薬歴管理の手間が少ないので、評価を見直すべきということがありました。
2回目以降の薬歴管理料が安くなるというのはまさにそれを反映したものだと思います。
初回アンケートの手間はないし、薬歴が残っている安心感もあり、さらに安いのであればひとつの薬局で薬をもらおうという人は増えると思います。
つまり、これは患者さんにかかりつけ薬局を持ってもらうためのインセンティブにもなるということですね。

「調剤基本料の特例の対象となる保険薬局は除く」というのは、調剤基本料が安いというだけで、患者さんが大型門前薬局を選んでしまうのを回避するためなのでしょうか?

重複投薬・相互作用防止加算の見直し

先の議論の中では、同一病院の処方についても算定可能とするということだったので、範囲の見直しとはそういうことだと思います。
ただし、疑義照会の結果、処方内容に変更がない場合の算定は削除されるようですね。
疑義照会の評価という意味では残念な気がします。

服用薬を持参させた上での管理・指導の評価

これは先に議論されていたブラウンバッグ運動に対する評価ですね。
残薬管理についてはしっかりと評価されています。

分割調剤の活用

やはりリフィル処方の導入とはいきませんでした。
これまで、分割調剤を行うことが可能となるのは、

  • 長期投薬で薬剤の保存が困難な場合
  • 後発医薬品のお試し調剤の場合

だけでしたが、「やむを得ない事情がある場合等」が加わることで、少し緩和されるのかなというところです。
ただし、これについては、
中川委員(日医)は「長期投薬の是正とセットであり、よっぽどの特別な事情と理解してもらって結構」
中井薬剤管理官は「医師の指示が大前提」
とのことなので、あまり期待できない?

「分割調剤を行う場合の調剤基本料等の評価を見直す」とあるので、現行の5点より高くなってくれることを祈ります。

服薬情報等提供料及び長期投薬情報提供料の統合

類似の業務内容・・・ですかね?
どのように統合するのでしょうか?

内服調剤料・一包化加算の見直し

調剤業務から薬学的管理業へのシフトということで先に言われていた通り、調剤料と一包化加算は減算になるようです。
薬学管理料の評価がどのように行われるかがポイントですね。
初回の薬歴管理料は現行よりも高い点数となるのでしょうか?

お薬手帳持参で薬歴管理料が安くなる

お薬手帳の評価の見直しということで、持参することで薬歴管理料が低くなるようになるとのことです。
これは・・・お薬手帳の持参率は間違いなく増えますね。
電子版お薬手帳と合わせて、お薬手帳の持参率はすごいことになりそうですね。

まとめ

途中になりますが、今日はここまでとしておきます。
今回の改定の先には、調剤から薬学的管理、門前から地域へと薬剤師や薬局の姿が変わっていくということがあります。
どうでしょうか?
ここまでの内容でもそれが見えてきますね。

これまでは病院で処方せんをもらったら近くの薬局でもらって帰るのが普通だったかもしれませんが、一か所のかかりつけ薬局を決めるメリットが金銭的にも出てきました。
そうなると、家や職場、生活圏の近くの薬局で薬を管理してもらうという方向に加速していくのではないでしょうか?

また、今回の改定でどうなるかはわかりませんが、経営的な意味で、門前から撤退する薬局も出てくるかもしれません。
その場合、病院が院内調剤に戻さない限り、患者さんの処方せんを応需は、それぞれのかかりつけ薬局が担うことになります。

生活圏に複数の薬局がある場合、電子版のお薬手帳に対応しているということで薬局を選ぶ患者さんも出てくるかもしれませんね。

そして気になるのが「かかりつけ薬剤師」。
これはどのように規定されるかわかりませんが、大手チェーンのような転勤が多い職場にとっては悩ましいものとなるのではないでしょうか?
「かかりつけ薬剤師」がコロコロ変わる・・・なんて状況はおかしいですよね?

いろいろと気になることがありますが、今日はここまでとして、残りは明日、まとめます。
今晩いろいろ考えて、もう少しまとまった内容を掲載できれば・・・と思っています・

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