薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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ソバルディは28日まで投与可能?~新薬処方日数制限の例外

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前回の記事にも書きましたが、平成27年5月20日に薬価収載される新医薬品のうち、3品目について新薬処方制限の例外が適用されています。


今回、新薬投与日数制限の例外が適用される医薬品

投薬日数制限の例外の対象となっているのは以下の3つです。

  • ノピコールカプセル2.5μg
  • エクリラ400μgジェヌエア30吸入用
  • ソバルディ錠400mg


ノピコールカプセル2.5μgについては長期投与可能(投与制限日数なし)、
エクリラジェヌエア30吸入用については15日間の投与制限、
ソバルディについては28日間の投与制限となっています。

新薬と言えば、14日間までの処方日数制限を受けるということはみなさんご存知だと思います。
実際に、「薬価基準の収載の翌月の初日から起算して1年間は、原則、1回14日分を限度として投与又は投薬することと」と定められています。

じゃあ、今回の3剤はなぜ例外が認められたの?ということになりますよね。

新薬処方日数制限の例外を認める通知

新薬の処方日数制限が緩和されたのは今回が初めてではありません。
配合剤なんかは、もう、すっかり処方日数制限を受けないのが当たり前のイメージが定着していますが、当初は14日の処方制限を受けていました。

新薬の処方日数制限の例外について中医協は以下のように通知を出しています。
平成22年10月27日 中医協了承 「新医薬品の処方日数制限の取扱いについて」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000uygm-att/2r9852000000uymx.pdf

新医薬品については、薬価基準収載の翌月の初日から1年間は、原則、1回14日分を限度として投与することとされているところである。
しかしながら、当該処方日数制限を行うことが不合理と考えられる下記のような場合は例外的な取扱いとする。

  1. 同様の効能・効果、用法・用量の既収載品の組合せと考えられる新医療用配合剤など、有効成分にかかる効能・効果、用法・用量について、実質的に、既収載品によって1年以上の臨床使用経験があると認められる新医薬品については、新医薬品に係る処方日数制限を設けないこととする。
  2. 疾患の特性や、含有量が14日分を超える製剤のみが存在しているといった製剤上の特性から、1回の投薬期間が14日を超えることに合理性があり、かつ、投与初期から14日を超える投薬における安全性が確認されている新医薬品については、薬価基準収載の翌月から1年間は、処方日数制限を、製剤の用法・用量から得られる最少日数に応じた日数とする。


当時、降圧配合剤の新薬が多く登場していましたが、その時点では新薬として14日の処方制限を受けていました。
ですが、この通知の後、平成22年11月26日に中医協は、

  • エックスフォージ配合錠
  • レザルタス配合錠LD・レザルタス配合錠HD
  • ユニシア配合錠LD・ユニシア配合錠HD
  • ミカムロ配合錠AP

の処方日数制限を平成22年12月10日(平成22年12月分の薬価収載日)に解除すると決めました。
それ以降に登場した、「同様の効能・効果、用法・用量の既収載品の組合せと考えられる新医療用配合剤」については新薬の処方日数制限を受けていません。
※ザラカム配合点眼液、コソプト配合点眼液、デュオトラバ配合点眼液、タプコム配合点眼液等は用法が異なるので投与日数制限の対象でした。

また、スピリーバレスピマット、シムビコート30吸入・60吸入は用法・用量によっては14日間以上の処方が実質可能でした。
これは上の通知では後者に当てはまるのかな?

今回処方日数制限の除外が認められた理由

今回処方日数制限の例外が認められた3つの薬について、理由はどうなっているのでしょうか?

ノピコールカプセル2.5μg

レミッチカプセル2.5μgと有効成分、効能・効果(血液透析患者におけるそう痒症の改善等)及び用法・用量が同一であり、レミッチカプセルは既に薬価収載後1年以上を経過しているため、実質的に1年以上の臨床使用経験がある考えられるため、処方制限はなしとなりました。

エクリラ400μgジェヌエア30吸入用

エクリラジェヌエアは海外からの製剤輸入品(スペイン・バルセロナのAlmirall,S.A.社が製造)で、海外の最小規格が15日製剤(30吸入用、1日2回吸入)となっています。
そのため、国内臨床試験も15日間隔で行われており、その安全性が確認されているため、15日間の処方日数制限が認められました。

ソバルディ錠400mg

ソバルディ錠の処方日数制限は薬局の在庫管理を考えると非常にありがたいのですが、少々納得がいきません。

ソバルディの包装単位は28錠入りの瓶(バラ)のため、14日分を超える28日分の製剤のみが存在しているという製剤上の特性を持ちます。
また、ギリアドは開封後45日間の品質しか保証していないため、ソバルディが非常に高額(61,799.30円/錠)であること、多くの保険医療機関・保険薬局で取扱われる薬剤であることを踏まえて、例外的に「処方日数を14日ではなく28日として取り扱うこと」になりました。

新薬の処方日数制限に対する個人的な意見としては、14日間にこだわる必要はないのではないかとは思っています。
ですが、今は基本的に14日間の処方日数制限がなされており、海外での製造がこうだから・・・という理由で処方日数制限が緩和されるのは何か違うと思ってしまいます。
過去には日本用に14日分に対応できる製剤を作っているメーカーとかあった気がするのですが、どうなんでしょう?
ソバルディの審査報告書にはPTPでの安定性も検討されているのですが、なぜか日本で発売する予定はなし。
特別扱いのような気がして、少々疑問が残ります。

ですが、その効果・安全性は海外で実証済。
値段も高いので、薬局としては、28錠を端数で使用するのは避けたいので、処方日数制限の解除はありがたいことはありがたいんですがね・・・。

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