薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
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ラミクタール(ラモトリギン)にブルーレター~「使用上の注意」の改訂及び「安全性速報」の配布

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(ここからが記事本文になります)

平成27年2月4日、厚生労働省は、抗てんかん薬・双極性障害治療薬「ラミクタール錠」が投与された患者において、死亡例を含む重篤な皮膚障害の報告が相次いでいることを踏まえ、添付文書の「使用上の注意」の改訂と、「安全性速報(ブルーレター)」の配布を指示しました。
ラミクタール(一般名:ラモトリギン)については、複数回、「適正使用のお願い」が配布されていたので、用法・用量に関して注意が必要なことや、重篤な皮膚障害が報告されていることについて、イメージを持たれている方も多かったのではないでしょうか?
今回のブルーレターの発行は、平成26年9月~12月の間で、因果関係の否定できない重篤な皮膚障害を発現し、死亡に至った症例が4例報告されたためです。
  
※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。
  
  

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詳しい情報については以下の厚生労働省のサイトをご覧ください。


ラミクタール(一般名:ラモトリギン)とは?

ラミクタールについて簡単におさらいしておきます。

ラモトリギンの特徴

ラモトリギンはフェニトインやジアゼパムよりも強い抗痙攣作用を持っています。
その作用機序は、Na+チャネルの抑制による神経膜安定作用により、グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の遊離を抑制することによります。
てんかんに対しては2歳以上で使用することが可能です。
また、気分安定化作用(機序不明)を持つため、双極性障害に対しても効果を発揮します。

ラミクタールの製剤一覧

  • ラミクタール錠小児用2mg(てんかん)
  • ラミクタール錠小児用5mg(てんかん)
  • ラミクタール錠25mg(てんかん・双極性障害)
  • ラミクタール錠100mg(てんかん・双極性障害)

また、添付文書には記載されていませんが、インタビューフォームを見ると「チュアブル・ディスパーシブル錠」という製剤であることが記載されており、かみ砕いたり、水に懸濁して服用することが可能になっています。
※保険上は通常の錠剤扱いのようなので、チュアブル錠として別剤算定を行うことができないようです。

効能・効果

2008年10月16日:製造承認取得

「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の下記発作に対する抗てんかん薬との併用療法」

  • 部分発作(二次性全般化発作を含む)
  • 強直間代発作
  • Lennox-Gastaut症候群における全般発作
2011年7月1日:効能・効果追加承認

「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」

2014年8月29日:効能・効果追加承認

「てんかん患者の下記発作に対する単剤療法」

  • 部分発作(二次性全般化発作を含む)
  • 強直間代発作

用法・用量

ラミクタールの用法・用量は非常に複雑です。
効能・効果や併用薬によって異なりますし、初回~維持量まで用法・用量の漸増に細かい設定があります。
本来、定められた通り、1〜2週間毎の漸増を行って行くべきなんですが、これを逸脱し、定められた用法・用量を超えた投与量、特に初期漸増時の用量や増量のタイミングが守られていない場合に皮膚障害の発現率が高くなります。
用法・用量による皮膚障害発生率は以下のようになっています。

  • 承認よりも高用量:10.4%
  • 承認用量:2.9%

このように、皮膚障害の回避のためには用法・用量を守ることが大切であることがわかっています。

重篤な皮膚障害

予想される重篤な皮膚障害についても復讐です。

  • 皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson Syndrome:SJS):発熱を伴う口唇、眼結膜、外陰部などの皮膚粘膜移行部における重症の粘膜疹および皮膚の紅斑で、しばしば水疱、表皮剥離などの表皮の壊死性障害を認める。
  • 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN):広範囲な紅斑と、全身の10%以上の水疱、表皮剥離・びらんなどの顕著な表皮の壊死性障害を認め、高熱と粘膜疹を伴う。
  • 薬剤性過敏症症候群(Drug-induced Hypersensitivity Syndrome:DIHS):高熱と臓器障害を伴う薬疹で、比較的限られた医薬品が原因となり、医薬品中止後も遷延する。


ブルーレターの内容について

今回の注意喚起のポイントは、

  1. 皮膚障害の発現率は、定められた用法・用量を超えて投与した場合に高いことから、用法・用量を遵守すること。
  2. 発疹発現時には早期に皮膚科専門医に相談し、適切な処置を行うこと。また、発疹に加え、発熱、眼充血、口唇・口腔粘膜のびらん、咽頭痛、全身倦怠感、リンパ節腫脹等の症状があらわれた場合は、直ちに本剤の投与を中止すること。
  3. 重篤な皮膚障害の発現率は、小児において高いことが示されているので、特に注意すること。
  4. 患者又は家族に対し、皮膚障害の初期症状があらわれた場合は直ちに受診するよう指導すること。

です。

また、患者さんに対する注意喚起内容は、

【ラミクタール錠を服用中の患者の皆様へ】

  • 発疹、発熱(38℃以上)、目の充血、唇や口内のただれ、のどの痛み、体がだるい、リンパ節のはれ等の皮膚障害の初期症状があらわれた場合は、すぐに医師・薬剤師に相談して下さい。

<<
となっています。

ブルーレターには、

用法・用量を遵守してください。
用法・用量を超えて本剤を投与した場合に皮膚障害の発現率が高くなります。

  • 投与開始時は定められた用法・用量を超えないこと
  • バルプロ酸ナトリウム併用時の投与開始2週間までは隔日投与にすること(成人のみ)
  • 維持用量までの漸増時も定められた用法・用量を超えないこと
  • 増量時期を早めないこと

と記載されています。
やはり、初回~維持量までは用法。用量を守ることが絶対となります。
上に記載した通り、これを逸脱した場合、薬疹の発生頻度が上昇します。
実際に薬疹を起こしたケースに遭遇したことがありますが、そのケースでも増量時期が早められていました。

添付文書 警告欄の改訂

添付文書の【警告】欄が以下(下線部)のように改訂されています。

【警告】
「本剤の投与により中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、薬剤性過敏症症候群等の全身症状を伴う重篤な皮膚障害があらわれることがあり、死亡に至った例も報告されているので、以下の事項に注意すること。
1.用法・用量を超えて本剤を投与した場合に皮膚障害の発現率が高いことから、本剤の「用法・用量」を遵守すること。
(1)投与開始時は定められた用法・用量を超えないこと。バルプロ酸ナトリウム併用時の投与開始2週間までは隔日投与にすること(成人のみ)。
(2)維持用量までの漸増時も定められた用法・用量を超えないこと。また、増量時期を早めないこと。
2.発疹発現時には早期に皮膚科専門医に相談し、適切な処置を行うこと。また、発疹に加え以下に示す症状があらわれた場合には重篤な皮膚障害に至ることがあるので、直ちに本剤の投与を中止すること。発熱(38℃以上)、眼充血、口唇・口腔粘膜のびらん、咽頭痛、全身倦怠感、リンパ節腫脹 等
3.重篤な皮膚障害の発現率は、小児において高いことが示されているので、特に注意すること。
4.患者又は家族に対して、発疹や上記の症状があらわれた場合には直ちに受診するよう指導すること。


※改定前

【警告】
本剤の投与により中毒性表皮壊死融解症(Toxic EpidermalNecrolysis:TEN)及び皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)等の重篤な皮膚障害があらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては十分に注意すること(「用法・用量に関連する使用上の注意」、「重要な基本的注意」、「副作用」及び「臨床成績」の項参照)。


まとめ

最初に掲載したリンク先からブルーレターを閲覧できるので、まだご覧になっていない医療関係者の方々は一度目を通してください。
症例の概要死亡に至った経緯がまとめられています。
自分たちがこうしたケースに出会ったとき、
「未然に防ぐことが可能か?」
「副作用の兆候に気づけるか?」
「兆候に気づいた場合どのように対応するか?」
「自分だったらこの副作用を防ぐことができたか?」
常に考えておきたいですね。

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