薬剤師の脳みそ

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24時間対応薬局について考えてみる~平成26年度調剤報酬改定 番外編

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調剤報酬で話題になっている「薬局の24時間対応」。
これはどういうことなのか?
これからは24時間開局するってこと?
まだまだ薬剤師不足の薬局がほとんどの中、気になる部分ですよね。
今回は調剤報酬に記載されている24時間対応とはどういうことかを(勝手に)考えてみます。
あくまでも、私個人の解釈です。
調剤報酬関連の最新記事はこちらです。
平成26年度調剤報酬改定 疑義解釈資料(その1)公開 - 薬剤師の脳みそ
一般名処方で先発医薬品を選択した際のレセプト摘要欄記載方法~平成26年度調剤報酬改定 - 薬剤師の脳みそ
平成26年度診療報酬改定 官報告示 - 薬剤師の脳みそ

平成26年調診療酬関連記事の一覧は
https://pharmacist.hatenablog.com/archive/category/H26%E8%A8%BA%E7%99%82%E5%A0%B1%E9%85%AC%E6%94%B9%E5%AE%9A
です。
よろしくお願いします。


それでは今回の診療報酬改定のうち、24時間に関する記載がある部分を一つずつ見て行きましょう。

調剤基本料の特例の見直し

調剤基本料の特例について、1月に2,500枚を超える保険薬局(特定の保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合が90%を超えるものに限る。)をその要件に加える。
ただし、今回追加する特例の対象となる保険薬局であっても、24時間開局している調剤が可能な保険薬局については、調剤基本料の特例に該当しないこととする。

調剤基本料の特例の対象となる保険薬局は、基準調剤加算を算定できないこととする。ただし、今回追加する特例の対象となる保険薬局であって、24時間開局している調剤が可能な保険薬局については、基準調剤加算1を算定できることとする。

少し復習。
調剤基本料(改正後は41点、妥結率50%以下は31点)の特例として、受付回数4000回/月かつ集中率が70%以上の場合の点数(改正後は25点、妥結率50%以下は19点)が定められていましたが、この条件に受付回数2500回/月かつ集中率90%以上が追加されました。
今回この特例の例外となる施設基準が新たに定められ、それが、24時間開局している調剤が可能な保険薬局というわけです。
また、この例外に当てはまる場合は基準調剤加算1の算定も可能となります。

これに関してはほぼ結論が出ています。
書いてある通り24時間開局、つまりは24時間営業です。
日経DIの記事にも詳しく書かれています。
改定の柱は「24時間対応薬局」!:DI Online

医師委員が「この24時間開局とはどのような意味か。電気をつけて人がいる、営業中ということか」と尋ねたところ、厚労省は「基本的にはそう考えている」と答えた。

24時間営業となるとかなり厳しい施設基準となりますが、この特例の対象となるのがいわゆる大型門前薬局と言う事で、比較的大きい病院の前に位置する薬局です。
その収益を考えればしょうがないのかもしれません。
ただし、薬剤師の確保、労働環境の整備、給与面での待遇など越えなければならないハードルは多いと思います。


さて、この調剤基本料の特例を除外する条件としての24時間開局が目立ったため混乱してしまった気がするのですが、その他の部分はどう記載されているのでしょうか?

基準調剤加算の見直し

① 24時間調剤及び在宅業務をできる体制を整備する。
ア) 基準調剤加算1:近隣の保険薬局と連携して24時間調剤及び在宅業務をできる体制を整備する。
イ) 基準調剤加算2:自局単独で24時間調剤及び在宅業務をできる体制を整備する。

「24時間開局している調剤が可能な薬局」ではなく、「24時間調剤及び在宅業務をできる体制」です。
開局ではなく体制ですから、必要時にすぐ対応できれば問題ないと言う事でしょうか?

施設基準に関する文書で詳しくみると…。

[施設基準]
通則
ハ 地域の保険医療機関の通常の診療時間に応じた開局時間となっていること。
ニ 開局時間以外の時間において調剤を行うにつき必要な体制が整備されていること。削除

基準調剤加算1の基準
ロ 当該薬局を含む近隣の薬局と連携し24時間調剤並びに在宅患者に対する薬学的管理及び指導を行うのに必要な体制が整備されていること。

基準調剤加算2の基準
ハ 当該薬局のみで24時間調剤並びに在宅患者に対する薬学的管理及び指導を行うのに必要な体制が整備されていること。

「開局時間以外の時間において調剤を行うにつき必要な体制」のかわりに「24時間調剤並びに在宅患者に対する薬学的管理及び指導を行うのに必要な体制」となったわけですね。
こうして見ると在宅の要件が加わっただけで、あまり変わらない…?

これまでの「開局時間以外の時間において調剤を行うにつき必要な体制」をどのように行っていたかは各薬局ごとに異なりますが、電話などで24時間連絡を取れる環境を作り、しっかりとした対応を行っていた薬局にとっては在宅が明文化されただけであまり変わらないかもしれませんね。
と言うか在宅を積極的に行っていた薬局であれば24時間対応は当然でしょう。

と言う訳で、基準調剤加算に関しては24時間開局と言う事ではなさそうですね。
「地域の保険医療機関の通常の診療時間に応じた開局時間となっていること。」が通則に残っているのも根拠の一つです。
もし、24時間開局を求めているのであれば、自薬局のみで行う基準2では開局時間は24時間となるので、この記載は通則ではなく、基準1のみの要件になるはずです。

地域包括診療(主治医機能)で求められるもの

今回の診療報酬改定の目玉、主治医機能の強化として地域包括診療料と地域包括診療加算が新設されます。
この二つの点数の算定要件として院内処方があります。
薬局としては非常に悩ましいところなのですが、ある条件を満たせば院外処方が可能になります。
詳しくは↓
地域包括診療~薬剤師も気になる診療報酬改定 - 薬剤師の脳みそ
ここで24時間対応が出てきますので、その部分についても考えてみます。

地域包括診療料 1,500点(月1回)

ウ) 病院において、患者の同意が得られた場合は、下記のすべてを満たす薬局に対して院外処方を行うことを可能とする。
a. 24時間開局している薬局であること。なお、24時間開局している薬局のリストを患者に説明した上で患者が選定した薬局であること。
カ) 診療所において院外処方を行う場合は、下記の通りとする。
a. 24時間対応をしている薬局と連携していること。
b. 原則として院外処方を行う場合は当該薬局を対象とするが、患者の同意がある場合に限り、その他の薬局での処方も可能とする。この場合、夜間・休日等の時間外に対応できる薬局のリストを患者に説明し、文書で渡すこと。

地域包括診療加算 20点(1回につき)

エ) 院外処方を行う場合は、下記の通りとする。
a. 24時間対応をしている薬局と連携していること。
b. 原則として院外処方を行う場合は当該薬局を対象とするが、患者の同意がある場合に限り、その他の薬局での処方も可能とする。この場合、夜間・休日等の時間外に対応できる薬局のリストを患者に説明し、文書で渡すこと。

3種類(三段階)に分けられている気がします。
①24時間開局している薬局
②24時間対応をしている薬局
③夜間•休日等の時間外に対応している薬局

近隣の病院が地域包括診療料を取る方針となれば、処方せんを応需したければ、24時間開局しなければなりません。
近隣の診療所が地域包括診療料や地域包括診療加算を取るのであれば現行の基準2のような24時間対応を行わないと処方せんを応需できない可能性が高いです。よその薬局が連携してくれればこの限りではないですが、夜間•休日等の時間外対応が必要です。
ちなみに地域包括診療料の算定要件に常勤医師が三人以上という項目がありますので、そこで取るか取らないかの判断の目安にはなりますね。
診療所の場合、地域包括診療料は厳しく、地域包括診療加算がほとんどじゃないかと思います。

医療機関から推奨される薬局

最後に。
保険療担規則において、医療機関からの紹介を受けれる薬局が明文化された部分です。

(3)保険医療機関及び保険医療養担当規則における明確化
在宅医療における医療機関と保険薬局との連携の強化のために、保険医療機関において、在宅薬剤管理指導業務を行い夜間・休日等の時間外に対応できる保険薬局のリストを患者に渡して説明すること等については、保険医療機関及び保険医療養担当規則における特定の保険薬局への誘導の禁止に反しないことを明らかにする。

これは新基準2を算定できる薬局ということでよさそうですね。


ということで、大型門前以外はただちに24時間開局ということにはならないと思います。
ただ、今回の改定で24時間開局を開始する薬局はあると思います。
それが世の中から評価されれば、将来的には全ての薬局が求められるものになっていくのではないでしょうか?
24時間対応については今までよりも厳密な対応が求められる気がします。
今まではチェーン薬局などでは対応窓口を一括しているところも多かったと思いますが、ひょっとしたら基準2では各薬局ごとに対応窓口の明文化が求められるかもしれませんね。

繰り返しになりますが、あくまでも想像です。
疑義解釈を待ちましょう。

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