薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。何卒、ご理解ください。   

うがい薬だけを処方する場合の取扱 と ヨードうがい薬の効果について

薬や業界に関する知識を身に付けたい方へ
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(ここからが記事本文になります)

2014年4月からうがい薬だけの処方は全額自己負担に?
うがい薬のみ処方、保険外に 14年4月から :日本経済新聞
2013末にこんなニュースが話題になりました。
今ではすっかり?当たり前になったうがい薬単のみの処方は原則禁止のルールについて解説する記事です。
記事の後半ではイソジンガーグルに代表されるポビドンヨードうがい薬による風邪予防効果について検証しています。
  
  
うがい薬だけを処方する場合の取扱 と ヨード液うがい薬の効果について

  
  

うがい薬だけが記載された処方箋の取扱い

平成26年度診療報酬改定以降、うがい薬のみの処方は原則禁止となっています。

225ページに記載されています。

【IV-4(効率化余地がある領域の適正化/医薬品等の適正な評価)-③】
うがい薬だけを処方する場合の取扱い
第1 基本的な考え方
医療費の適正の観点から、治療目的でない場合のうがい薬だけの処方の評価を見直す。
第2 具体的な内容
医療費適正化の観点から、治療目的でなく、うがい薬のみが処方される場合については、当該うがい薬に係る処方料、調剤料、薬剤料、処方せん料、調剤技術基本料を算定しない。
改訂案:【投薬 調剤料・処方料・薬剤料・処方せん料・調剤技術基本料】入院中の患者以外の患者に対して、うがい薬(治療目的のものを除く。)のみを投与された場合については、当該うがい薬に係る処方料、調剤料、薬剤料、処方せん料、調剤技術基本料を算定しない。

平成26年度診療報酬改定 第2 改定の概要 1.個別改定項目について
  
色々と気になるところがあるので気になる点について解説していきます。
  

治療目的のものを除く

「うがい薬(治療目的のものを除く。)のみを投与」と記載されています。
医療費適正化の観念から、治療目的じゃないうがい薬(つまりは予防目的ですね)は保険適応外ということです。
もし、薬局にうがい薬のみの処方せんが来た場合、どうやって治療目的かどうかを判断すればいいのでしょうか・・・?
疑義照会しかないですね。
  

実際に処方された場合

実際にうがい薬のみの処方箋を何回か応需したことがあります。
もちろん疑義照会を行いましたが、毎回答えは「咽頭炎」か「喉頭炎」。
「治療目的じゃないよ」っていうDrに出会ったことはありません。
そりゃまあ、そうですよね。
処方箋発行して会計も終了しているのにそれを訂正することはないでしょう。
  

本当に治療目的じゃない場合はどうなるのか?

もし、「治療目的じゃないのでそのようにお願いします」と言われてしまったらどうなるのか?
「処方料、調剤料、薬剤料、処方せん料、調剤技術基本料を算定しない。」と記載されています。
この中で薬局に関係するのは、

  • 調剤料
  • 薬剤料
  • (処方せん料)

もし、治療目的でないうがい薬のみが処方されるとどうなるのでしょうか?
  
処方せん料が算定できなければ、病院では処方せんの発行に関する料金は無料。
薬局では調剤料と薬剤料は算定できないが調剤基本料と薬学管理料は算定できる・・・?
本当にこの解釈でいいのか・・・?
算定できない項目が具体的に書かれているだけに意味がわからなくないんですよね。
  
「うがい薬のみだから自費です。」という方がすっきりしますけどね。
自由診療を行い、自由処方せんを発行する。
その方が分かりやすいしスッキリします。
でも、まあ、それならOTC*1(市販薬)を購入した方が安いし楽ですよね。
  

補足

点数についての簡単な解説です。
  

処方料と処方せん料

薬局に関係するのは処方せん料です。
どちらも医師に薬を処方してもらう際に発生する費用です。
院内処方にかかるのが処方料、院外処方にかかるのが処方せん料ということです。
  

調剤技術基本料と調剤基本料

これも上と同じ違いです。
薬剤師が常駐する院内において調剤にかかる基本料が調剤技術基本料。
薬局での調剤にかかる基本料が調剤基本料です。
  

この改定による効果

結局、うがい薬を出したいがためにもう一つ薬を付け加えて処方するというケースをよく見かけます。

  • イソジンガーグル + SPトローチ
  • アズノールうがい液 + カロナール

などです。
完全に本末転倒ですね。
  
ただ、こういったケースはそんなに多くありません。
国の指針として無意味なうがい薬だけの処方をなくしていこうという考えが周知された結果、医療従事者の中では意識としてうがい薬を減らしていく方向になったと思います。
実際にうがい薬の処方箋は減った気がしますし、医療費抑制に一定の効果はあったんじゃないでしょうか。
  
  

ヨードうがい液の効果について

少し話を替えて、うがい薬の効果についてのお話。
うがいという文化は日本独特のもので海外ではあまりうがいという習慣がありません。(0ではありませんが)
そこでうがいについての検証を行った世界初のランダム化対照試験の結果について紹介します。(Satomura K, Kitamura T, Kawamura T, et al. Am J Prev Med 2005; 29: 302-7.)

  • 対象:18歳から65歳までの健康なボランティア(387人)
  • 方法:以下の3群に無作為割付、2つのうがい群は少なくとも3回/日のうがい、60日間の追跡
    • 水うがい
    • ヨード液うがい
    • 通常のケア(コントロール)
  • 結果:発症した人数はそれぞれ以下の通り(1ヶ月あたり100人中)
    • 水うがい群:17.0人
    • ヨード液うがい群:23.6人
    • コントロール群:26.4人

多変量解析で群間のばらつきをそろえると、水うがいをした場合の発症確率はうがいをしない場合に比べて40%低下することになる。一方ヨード液うがいでは12%の低下にとどまり、統計学的にも意味のある抑制効果は認められなかった。
(Prevention of Upper Respiratory Tract Infections by Gargling(A Randomized Trial))

ということでイソジンに代表されるヨードうがいではうがいなしとあまり差がないという結果になっています。
  
うがいをすれば、ウイルス自体を除去できるので風邪になりにくくなるのは当然の気がします。
ヨードうがいであまり効果がないのはウイルス自体を除去はできるけど、喉の正常細胞まで破壊してしまったり、口の中の常在菌まで倒してしまって免疫のバランスが崩れてしまうからじゃないかと考えられています。
  

ヨードうがい薬の存在意義

この研究が本当ならイソジンガーグル(ポビドンヨードガーグル)の存在意義は・・・?
もちろん無意味とは言いません。
ある種の細菌などの感染がはっきりしている場合には効果があるのかもしれません。
ただ、予防効果はないということですね。
  

うがい薬は原則保険適応外にしてみては?

個人的な考えです。
もう、うがい薬は特殊なケースに限って処方可能で、それ以外はすべて保険適応外でもいいんじゃないでしょうか?
気になる値段についてもそこまで高くありません。
医療用がなくなり、市販の需要が増えるのであればもう少し安くなるかもしれません。
  
医師が必要と判断すれば、「ヨードうがい薬を薬局で購入して使って」と口頭で指示するという形ではどうでしょう?
それを受けた患者さんは処方せんを持っていく薬局で購入してもいいし、ドラッグストアなどで購入してもいいし、通販などで購入し、家に置いてあるものを使用してもいい。
そうなれば、どこの薬局でもうがい薬は最低限用意するでしょう。
処方でなければ薬局でメーカーを自由に選んだり、味が工夫したものを選ぶことが可能になります。
そこから、かかりつけ薬局として選んでもらうための競争が生まれるかもしれません。
  
もし、医療用がなくなった結果、使われることがなくなれば・・・。
それこそ、保険適応外で正解ということですね。
  
  

そのほか

うがい薬に関する記事がないので、うがい薬関連のお話をここに記載します。
  

イソジンとカバくんの関係

話すと少々ややこしいのですが、イソジンは2016年4月1日からとその前で製造している会社が異なります。
イソジンの成分であるポビドンヨード(PVP-I*2)はムンディファーマが開発した成分です。
日本では1961年にムンディファーマと提携したMeiji Seikaファルマがイソジンとして医療用医薬品を販売しました。
その後、OTCとしてイソジンうがい薬などを明治が販売していました。
  
2015年、明治とムンディはPVP-Iに関する提携を解消することに合意しました。
これに伴い、イソジンの製造販売権の承継が行われ、2016年4月からはムンディファーマが製造販売元となり、販売は塩野義製薬が行っています。
(PVP-I以外のムンディの医療用医薬品に関しては塩野義製薬が販売を行っていた)
それに伴い、明治は新たに独自のポビドンヨード製剤の承認を取得しています。(製造販売元は日東メディックでしたが2018年にMeiji Seikaファルマが承継)
  
ややこしいのはOTCの方です。
イソジンうがい液といえばCMでもお馴染みのカバくんがイメージキャラクターでした。
ここに商標の問題が絡んでいます。

  • イソジン:ムンディファーマの商標
  • カバくん:明治の商標

そのため、イソジンうがい液のキャラクターは2016年からカバくんではなくなり、新たに明治が販売した明治うがい液のキャラクターをカバくんが担っています。
どちらが本物?とかないのですがかなり紛らわしいですよね。
  
今まで通りの製法を維持するイソジンと、長年イソジンを作ってきた明治が新たに作ったPVP-I製剤。
医療用のPVP-Iもどちらを好むかは人それぞれですね。
  

おまけ:新型コロナウイルス関連

2020年8月4日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19*3)の重症化抑制にポビドンヨード製剤を用いたうがいが効果を発揮するのではないかと大阪府知事が発表した結果、各卸さんから「医療用と市販用の全てのポビドンヨードうがい液の流通がストップしました」と連絡がありました。
上の方に書いた通り、うがい薬の処方箋は減っているのでそんなに在庫していない状態です。
現時点で医学的にはポビドンヨードうがい薬に新型コロナウイルス感染症の重症化を抑制する効果はありません。
ですが、報道を見て希望者が殺到するのは怖い・・・。
でも、どう足掻いても在庫することはできないので近隣の病院には自分の薬局には在庫がなく入ってくる予定がないことも伝えています。
テレビの効果は絶大ですね。
当日には「イソジンおいてますか?」という普段では聞いたことのない電話がありました。
医療用医薬品は年間の使用量を元に製造量が決められ、そのスケジュールに合わせて製造元が原薬を購入しているので、急な需要増加には対応できないことがほとんどです。
COVID-19に関係なく使用している方が使えなくなるという事態は防ぎたいのですが、どうなることやら・・・。
現時点では

*1:Over The Counter

*2:PolyVinylPyrrolidone-Iodine

*3:COronaVirus Disease 2019

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