薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
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調剤報酬点数表の改正案公開~平成26年度調剤報酬改定 その5

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(ここからが記事本文になります)

2014年2月12日の中医協資料として調剤報酬点数表の改正案が公開されました。
今まで改正後の点数は予想しかできなかったのですが、これで改正後、四月からの薬局の姿がだいぶ見えてきましたね。
平成26年調剤報酬改定についての最新版は
平成26年度診療報酬改定 官報告示 - 薬剤師の脳みそ
です。
平成26年調診療酬関連記事の一覧は
https://pharmacist.hatenablog.com/archive/category/H26%E8%A8%BA%E7%99%82%E5%A0%B1%E9%85%AC%E6%94%B9%E5%AE%9A
です。
よろしくお願いします。
調剤報酬点数表の改正案を頑張ってまとめてみました!
今日はけっこう長いです。
 1.調剤基本料
 2.基準調剤加算
 3.後発医薬品調剤体制加算
 4.一包化加算
 5.無菌製剤処理加算
 6.薬剤服用歴管理指導料
 7.在宅患者訪問薬剤管理指導料

参考資料はこちらです。
中央社会保険医療協議会 総会(第272回) 議事次第

現時点ではあくまでも改正案ということですのでご注意ください。

1.調剤基本料

総-1 P226-227,228-231

40点から41点、24点から25点となっています。
1点引き上げられていますが、これは消費税対応分なので実質変化なしです。

いわゆる門前薬局に対する調剤基本料の特例(25点)の条件に追加があります。
処方箋の受付回数4000回/月以上かつ特定の医療機関による調剤割合(集中率)70%以上
これは今まで通りですが、
処方箋の受付回数2500回/月以上かつ特定の医療機関による調剤割合(集中率)90%以上
が新たに追加されました。
さらに、今回からの新たな条件として、施設基準が追加され、24時間開局している、つまり24時間営業の薬局に関しては特例の対象に該当しないということになっています。

これらはかかりつけ薬局の推進と言う事なのだと思います。
在宅医療の推進でもありますね。
ただ、特例の二つ目の条件は個人薬局などの小規模薬局にとってどうなんでしょうか?
小規模な方がある程度かかりつけ化が進んでいるイメージはあるのですが…。
小規模に対する逆風にならないことを祈りたいです。

妥結率に関する項目も追加になっています。
妥結率とは要は値引き価格が決まっている医薬品の割合ですね。
※品目数ではなく薬価総額で考えます。
この妥結率が五割以下の場合、調剤基本料は31点、つまり10点の減点を受けます。
特例の場合は19点なので6点の減点です。
妥結率を判断するのは毎年9月末ということです。
ちなみに、どちらも1点が消費税増税分ということです。

薬価調査の障害となるためとされていますが、これは実質、大手薬局に対する改定ですね。
大手であればあるほど値引き交渉は盛んになるので長引く傾向にあります。
国は基本的に薬価差益(薬価と仕入れによる差額の利益)はなくしたいので、今回の改定になったのだと思います。

2.基準調剤加算

総-1 P78-81,227-228

施設基準が変更になり、基準調剤加算1は12点、基準調剤加算2は36点、基準1は2点、基準2は6点の引き上げです。

施設基準については在宅薬剤管理指導業務の推進を踏まえた内容になっています。
基準1の近隣薬局と連携した上での24時間調剤及び在宅業務の体制。
基準2の自局単独での24時間調剤及び在宅業務の体制。

24時間体制が話題の中心です。
調剤基本料の特例除外と同じくはっきりは書かれていませんが、要は24時間営業の薬局を目指しなさいということですね。
現在、基準調剤加算を算定している世の中のほとんどの薬局は24時間営業をしていないはずです。
医療をコストだけで考えるべきではないのですが、24時間営業でなかった薬局が基準2を維持するために24時間営業を行うメリットがあるかどうかを悩むのだと思います。
まずは一ヶ月の受付回数、これに基準調剤加算2の36点、つまり360円を乗じたものが基準2を取ることによる収入です。
薬剤師の確保も必要ですし、人件費、光熱費、夜間開局については女性も多い職場なのでセキュリティも考えないといけません。
これらのコストと収入を考えて決めていく薬局が多いのだと思います。

2月25日修正:基準加算においては24時間営業までは求めてなさそうですね。
24時間対応薬局について考えてみる~平成26年度調剤報酬改定 番外編 - 薬剤師の脳みそ

医療人としての視点で考えれば、24時間営業を行う薬局と言うのは地域からの信頼も厚くなるはずです。
なのでかかりつけ薬局として選ぶ患者さんも増えていくはずですし、結果として処方箋の受付回数も増えるはずだとは思います。
入院施設を保有する病院であれば24時間、医療従事者が常駐するのは当たり前なので、薬局も医療機関である以上は当然求められることなのかもしれませんね。
ただ、薬剤師不足もさらに進みそうな気がします。

現実には薬剤師会などが輪番制を呼びかけ、それに参加することで基準1という形になる気がします。
その場合、近隣というのはどの程度の範囲なのか?自薬局はどのくらいの頻度で24時間営業対応をすればいいのか?と言うのが大事になってきますね。

あとは集中率70%以下の縛りが基準2だけだったのが基準1の施設基準となってます。
ただし、基準1では受付回数4000回/月を越える薬局のみが対象なので少し緩めですが、間違いじゃないですよね…。
あとは、麻薬小売業の取得が基準1と2の通則となっています。

施設基準を簡単にまとめてみます。

基準調剤加算1:12点
患者ごとの薬学的管理、服薬指導の実施
患者の求めに応じた薬剤の情報提供
地域の保険医療機関に応じた開局時間
適切な薬学的管理、服薬指導に必要な体制及び機能が整備
患者に対して在宅に係る薬局の体制の情報を提供
麻薬小売業の免許を取得(現行では基準2の要件)
十分な数の医薬品の備蓄(現行700品目のまま?)
近隣の薬局と連携して24時間調剤並びに在宅患者に対する薬学的管理及び指導を行う体制が整備
処方箋の受付回数4000回/月以上の場合は特定の医療機関による調剤割合(集中率)70%以下であること(基準2では受付回数600回以上が対象)

基準調剤加算2:36点
患者ごとの薬学的管理、服薬指導の実施
患者の求めに応じた薬剤の情報提供
地域の保険医療機関に応じた開局時間
適切な薬学的管理、服薬指導に必要な体制及び機能が整備
患者に対して在宅に係る薬局の体制の情報を提供
麻薬小売業の免許を取得
十分な数の医薬品の備蓄(現行1000品目のまま?)
処方箋の受付回数600回/月以上の場合は特定の医療機関による調剤割合(集中率)70%以下であること
当該薬局のみで24時間調剤並びに在宅患者に対する薬学的管理及び指導を行う体制が整備
在宅患者に対する薬学的管理及び指導について相当の実績
地域において在宅療養の支援に係る診療所または病院及び訪問看護ステーションとの連携体制整備
地域において他の保険医療サービス及び福祉サービスとの連携調整を担当する者との連携体制整備(地域連携室やケアマネージャー?)

在宅や24時間対応を推奨するための改訂は「保険医療機関及び保険医療養担当規則」でも行われます。
これまで医療機関や医師が特定の保険薬局へ誘導することは禁止とされていましたが、在宅医療における医療機関と保険薬局の連携強化のために、保険医療機関で在宅薬剤管理指導を行い夜間・休日等の時間外に対応可能な保険薬局のリストを患者に渡して説明することが可能となります。

3.後発医薬品調剤体制加算

総-1 P218-220

後発医薬品の数量シェアの考え方が変わりました。
 現行  後発医薬品/全医薬品(「経腸成分栄養剤」「特殊ミルク製剤」「生薬」「漢方」以外)
 新制度 後発医薬品/(後発医薬品のある先発医薬品+後発医薬品)
要は除外品目に「新薬」が加わった形ですね。
 後発医薬品調剤体制加算1:18点 数量シェア55%以上
 後発医薬品調剤体制加算2:22点 数量シェア65%以上
新薬ばかり処方される薬局もこれで算定できる!と思いきや、すんなりそうはいかないようで。

調剤した薬剤の規格単位数量に占める後発医薬品のある先発医薬品及び後発医薬品を合算した割合が50%以上であることとなっています。
つまりは、(後発医薬品のある先発医薬品+後発医薬品)/全医薬品<50%の薬局は算定不可となります。
新薬、経腸成分栄養剤、特殊ミルク製剤、生薬、漢方が極端に多い薬局は注意が必要ですね。
配合剤もあてはまると思うのですが、個人的には特許切れ成分を含む配合剤は薬価から考えてもジェネリック扱いでもいいような気がするんですけどね。

1・2ともに、思いのほか高い点数になっていると思います。
2012年度末の現行指標での数量シェアが25.6%で新指標に換算すると44.8%ということです。
だいたい1.75倍になるということのようですね。
これで考えると、55%以上は現行指標で31.4%、65%以上は現行指標で37.1%が目安になります。
これを踏まえると・・・。
旧後発体制加算1(22%以上 5点)→削除
旧後発体制加算2(30%以上 15点)→新後発体制加算1(55%以上 18点)
旧後発体制加算3(35%以上 19点)→新後発体制加算2(65%以上 22点)
といった具合でしょうか?
※旧指標30.3%が新指標46.3%というデータ(1.5倍くらい?)もあるようです。これだと厳しくなりますね。

ただ、割合によっては19点が0点にという恐ろしいパターンもありますね…。

最後に一般名処方についてですが、
「一般名処方については原則として後発医薬品が使用されるよう、患者に対して後発医薬品の有効性、安全性や品質について懇切丁寧に説明し、後発医薬品を選択するよう努める」と規定されるようです。
今まで一般名処方→先発医薬品or後発医薬品だったのが一般名処方→先発医薬品<後発医薬品となるってことですね。
これは一般名処方の処方発行元の医療機関にも伝えておくべき情報かもしれませんね。

4.一包化加算

総-1 P264

消費税の増税対応で一包化加算が引き上げられます。
旧 30点 → 新 32点(消費税対応部分2点)
57日以上の場合 旧 270点 → 新 290点(消費税対応部分20点)

5.無菌製剤処理加算

総-1 P82-83

在宅医療における無菌製剤処理を推進するために施設基準、算定要件に変更が加えられています。

施設基準に関しては
無菌製剤の処方箋を受け付けた薬局が無菌調剤室を持っていない場合、他の薬局の無菌調剤室で無菌製剤処理を行っても無菌製剤処理加算を算定できるようになっています。
これまでは共同利用はできても算定はできていませんでした。
今回の改訂で薬剤師会の会営薬局ような地域の中心となる薬局での無菌調剤室利用が進んでいくのではないでしょうか?

無菌製剤処理加算の対象に麻薬が加わり、乳幼児に対する点数が設けられました。
さらに無菌製剤処理加算の点数も引き上げられています。
 中心静脈栄養法用輸液 65点6歳未満の乳幼児130点
 抗悪性腫瘍剤 75点6歳未満の乳幼児140点
 麻薬 65点6歳未満の乳幼児130点
なんと、40点→65点、50点→75点、それぞれ25点引き上げ!
消費税対応部分が10点ですが、それを除外しても15点の引き上げです。
ちなみに、乳幼児の消費税対応部分は20点です。
乳幼児の無菌製剤は、臓器の未熟性を考慮して、症例ごとに組成が細かく異なる輸液を調整しなくてはならないことを考慮しての設定のようです。

6.薬剤服用歴管理指導料

総-1 P157-159

お薬手帳を必ずしも必要としていない場合の見直しということで、お薬手帳なしの薬歴加算が加わりました。
要はH22年改定に逆戻りに近いです。
H24年改定以降、お薬手帳を渡してもお薬手帳のシールだけ渡しても同じ点数なのはおかしいという声を反映しての改訂です。
お薬手帳に関する部分を除外した場合、受付1回につき34点となっています。
平成22年度改定の際の薬歴指導料が30点ですからかなりありがたい点数設定な気もします。
薬歴と手帳に関する点数の流れをまとめると・・・。
H22:歴手45点(30点+15点)・歴30点→H24:歴手41点→H26:歴手41点・歴34点
こう見るとそこまで悪い改訂ではないような・・・。
前にも書きましたが、お薬手帳についてはこれからの薬局が試されている気がします。
個人的にはお薬手帳については無料化+電子化(クラウド化)して、お薬手帳を活用した際の加算を設けて欲しいです。

同時に服薬状況等の確認のタイミングが定められました。

薬剤服用歴管理指導料について、服薬状況並びに残薬状況の確認及び後発医薬品の使用に関する患者の意向の確認のタイミングを、調剤を行う前の処方せん受付時とするよう見直す。

受付時に残薬および後発医薬品の希望確認。
これを行うのは薬剤師でなくてもいいのでしょうか?
それにより、調剤業務の流れが大きく変わりますね。

7.在宅患者訪問薬剤管理指導料

総-1 P81-82

予告通り同一建物居住者は引き下げ、それ以外は引き上げとなっています。
 同一建物居住者以外の場合:550点→650点
 同一建物居住者の場合:350点→300点
この2つを合わせて保険薬剤師1人につき1日5回に限り算定する。

同一建物で二人を訪問するより、個別に一人を訪問した方が点数高いんですね…。
これはさすがにおかしいような…。
診療報酬(医科)に至っては同一建物はなんと四分の一ですね…。

平成26年介護報酬はすでに発表されています。
第98回社会保障審議会介護給付費分科会資料
それによると、薬局の薬剤師が行う(介護予防)居宅療養管理指導費は
同一建物居住者以外に行う場合:503単位
同一建物居住者に行う場合:352単位
と消費税増税対応のみの引き上げで実質改定後も変更なしとなっています。
でも、これも来年の改定で診療報酬に合わせられるとは思いますが。

気になるのは一日五回までの制限の部分。介護保険における算定要件もこの五回縛りが適応されるんでしょうか?
ここが一番気になる部分です。
もしそうであるなら、グループホームやサービス付き高齢者向け住宅(高齢者向け賃貸住宅/高専賃)の入居者とまとめて契約しているケースでは算定方法を工夫しないといけないかもしれませんね。

まとめ

あくまでも改定「案」なので決定ではありませんが、ほぼ大筋が判明したというところでしょうか?
思ったよりも悪くない・・・というのが感想ですが、基準2を算定していたところなどにとってはかなり厳しいですね
24時間の解釈、在宅の五人の制限が介護にも影響するのかなど今後どう決定するのかが気になります。

薬局で働く立場としては大事な連携先である病院に関する診療報酬改定全体も把握しておきたいところですが、調剤報酬のようにひとつひとつ勉強していくには限度があります。
そこで、厚生労働省の資料がわかりやすかったのでリンクを貼っておきます。
平成26年度診療報酬改定について
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000037113.pdf
近隣の病院・診療所・歯科の何が変わっていくかも是非知っておきたいですね。

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