薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
2020年11月からURLが変更となりました。(新URL https://yakuzaishi.love)
  

シダトレン スギ花粉舌下液と減感作療法

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まだまだ真冬、春はまだまだ。
と思っている人も多いと思いますが花粉症の方にとってはもうすぐ春…なのだと思います。
花粉症の中でもスギを原因とするのごスギ花粉症。
日本人のうち約25%がスギ花粉症と言われています。
つまりは四人に一人の割合でスギ花粉症と言うことです。
そんな方々に朗報となる薬剤が承認されました。
それが鳥居薬品のシダトレンです。

シダトレンスギ花粉舌下液

正式な製品名は「シダトレンスギ花粉舌下液」。

  • 200JAU/mLボトル
  • 2,000JAU/mLボトル
  • 2,000JAU/mLパック

の三つの剤形で発売される予定です。

今までの花粉症の薬はあくまでも症状を抑える対症療法や発症の予防を目的とするものだけだったのですが、このシダトレンは体質改善、つまりはスギ花粉症の根治を目指すことのできる薬剤です。

減感作療法

花粉症などのアレルギーの根治を目指す治療方法に減感作療法(免疫療法)というものがあります。
アレルギーというのはある物質(抗原、アレルゲン)に対して免疫が必要以上に敏感になった状態です。
本来、体にとって有害な細菌やウイルスなどにのみ働くべきウイルスが有害でないものにまで働いてしまい、その結果、炎症や充血、蕁麻疹や痒み、喘息や呼吸困難といった症状を引き起こしてしまいます。
花粉症の場合は鼻水や鼻閉、目の痒みや充血、涙という形で症状が起こります。
このような抗原抗体反応が敏感に反応する状態を「感作」と言います。

この「感作」を起こりにくくしていくのが「減感作療法」です。
抗原抗体反応が起こらない程度のアレルゲンを体に入れて、それをだんだん増やしていくことで体を慣れさし、抗原抗体反応が起こるのを鈍くさせていく、即ち、減感作を行う治療方法です。

舌下減感作療法

減感作療法にはいくつかのデメリットがあります。
まず、治療に要する期間が長いこと。
効果が出始めるまで数ヶ月、効果を安定させるには数年必要です。
次に重篤なアレルギー反応やアナフィラキシーショックの危険が伴うということ。少量とは言えアレルゲンを直接血液に入れるわけですからリスクがあります。
そして上記の理由から頻回の通院が必要なこと。病院でないと注射できませんし、万が一に備えて医師の元で治療を行わなければなりません。

これらの欠点を補う方法として考案されたのが舌下減感作療法(舌下免疫療法/SLIT)です。
注射を行うのではなく、舌下とあるように舌の下にスギ花粉エキスを垂らし、2分ほど経った後に飲み込むという方法をとります。
この方法は自宅で行えるのが最大のメリットです。
毎日投与を行う必要がありますが、自宅で自分で行えるので通院は月一回程度で大丈夫です。
注射の場合は週一回の投与ですが、その度に通院する必要があります。
今まで注射ということで減感作療法を諦めていた人でも治療を受けやすくなることが最大のメリットです。
また、注射剤に比べてアナフィラキシーショックなどの重篤な副作用が起こりにくいのも利点です。

ですが、舌下減感作療法には欠点もあります。
通常の減感作療法もそうですが、講習を受けた医師の元でしか行うことができません。
また、対象年齢は12歳以上となっています。
そして有効率ですが、7〜8割と通常の減感作療法よりは劣ります。

まとめ

シダトレンの販売で、これまで保険適用外なので自費でしか行えなかったSLITを医療保険で行うことが可能になります。
ただし、シダトレンは新薬となるので一年間は二週間処方しかできませんから、一年間は通院も二週間ごとになります。

また、承認条件が、
「舌下投与による減感作療法に関する十分な知識・経験を持つ医師によってのみ処方・使用されるとともに、本剤のリスク等について十分に管理・説明できる医師・医療機関のもとでのみ用いられ、薬局においては調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤がなされるよう、製造販売にあたって必要な措置を講じること。」となっているため、処方元の医師が処方可能な医師かどうか把握することが必要となります。
これは大事なポイントなので処方を応需した際に忘れないようやしておきたいですね!

薬局からすれば全く新しいタイプの治療に関わることになります。
副作用発生時の対応や投与方法など、発売までによく勉強しておきたいですね!
近隣に専門医がおられる場合は事前にしっかりと考えを共有しておきたいですね。

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