薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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インフルエンザ 2013-2014

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インフルエンザの患者さんが少しずつ増えてきましたね。
とは言っても、地域性があるものです。
まだ一人もインフルエンザの患者さんに接してないという人もいれば、
毎日、何人かはインフルエンザの患者さんと接しているという人もいると思います。
流行シーズンにも入っているので一度今年の状況を色々まとめておこうと思います。

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流行シーズンには昨年末入りました。
※流行シーズン = 定点あたり報告数が1.0を越えた状態
※定点あたり報告者数 = すべての定点(定められた医療機関)に報告された患者数 / 定点数
平成26年第一週(平成25年12月30日~平成26年1月5日)の定点あたり報告数は2.16です。

定点当たり報告数が多いのは、
沖縄県 13.10、岐阜県 8.17、高知県 6.50、熊本県 4.88、鹿児島県 4.22
逆に定点当たり報告数が少ないのは、
山形県 0.10、富山県 0.63、和歌山県 0.66、宮城県 0.69、新潟県 0.71
となっています。

保健所地域で見ると、大阪府で1箇所だけ警報レベルを超えている地域があります。
注意報レベルを超えている地域は、14箇所あります。
※警報レベル:1週間に保健所に30以上報告されればで開始、10以上で継続
※注意報レベル:1週間に保健所に10以上報告されれば開始

では、流行っているインフルエンザの型は?
2013年第36~52週に検出されたインフルエンザウイルスはAH3亜型(香港A型)、AH1pdm09(2009新型インフルエンザ)、B型の順に多くなっているようです。

2012/2013シーズンの流行インフルエンザと予防接種
ここで気になることが一つ。
たまに聞かれるのですが、今年のワクチンは当たりだったのかどうか?
インフルエンザワクチンはA型2種、B型1種に対応するように作られています。
そのA型2種、B型1種は毎年流行するであろうインフルエンザの種類をWHOが予想して決めます。
単純に型を決めるだけではなく、さらに細い株という分類も決まっています。
実際に流行したインフルエンザの型・株と流行を予想して決められたワクチンの型・種が近ければ、「今年のワクチンは合っていた」ということになるわけです。
では、今年のワクチンの内容はどうだったのか?

今年のインフルエンザワクチンの内容は、
①A/カリフォルニア/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09
②A/テキサス/50/2012(X-223)H3N2
③B/マサチューセッツ/2/2012(BX-51B)
流行しているウイルスの株まではわからないので詳細は不明ですが、型は合ってますね。

ちなみに、株まで合うことは極稀みたいです・・・。

NA阻害剤と耐性インフルエンザウイルス
インフルエンザウイルスの薬剤耐性について少し前に報道されました。
今シーズンのインフルエンザの各耐性保有率のデータを見てみます。
要は耐性をもつ割合ですね。

A(H1N1)pdm09
オセルタミビル(商品名:タミフル)・ペラミビル(商品名:ラピアクタ):19%
ザナミビル(商品名:リレンザ)、ラニナミビル(商品名:イナビル):0%
アマンタジン(商品名:シンメトレル):100%

A(H3N2)
オセルタミビル(商品名:タミフル)・ペラミビル(商品名:ラピアクタ):0%
ザナミビル(商品名:リレンザ)、ラニナミビル(商品名:イナビル):0%
アマンタジン(商品名:シンメトレル):100%

B
オセルタミビル(商品名:タミフル)・ペラミビル(商品名:ラピアクタ):0%
ザナミビル(商品名:リレンザ)、ラニナミビル(商品名:イナビル):0%

という状況です。
2009新型はタミフル・ラピアクタに対する耐性を増やしつつありますね。
ラピアクタは比較的最近発売された点滴製剤なのに…。
ちなみに、A(H1N1)pdm09が流行した2008/2009シーズンはほぼ100%がタミフル耐性でしたが、その後は耐性ウイルスは消失していたようです。
鎮火していた耐性化がまた進み出しているようですや。
インフルエンザ治療薬は過剰使用の傾向にあるので、耐性はやむを得ないところもあります。
今シーズンからイナビルにも予防適応が通りましたが、リレンザ・イナビルへの耐性ウイルスが出現するのも時間の問題かもしれませんね・・・。
あとはアマンタジン耐性が100%なのも驚きました。
アマンタジン…。
あまり使うこともなかったのですが、もう使えないんですね。

2009新型のパンデミックの際、日本国内では死亡率が低かったのはインフルエンザ治療薬の積極使用のおかげと思います。
ただ、多くの病院が、ハイリスク感染者に絞って治療を行っているわけではないので、本当に必要な状態でなくてもインフルエンザ治療薬が使われている状態です。
使用量が増えれば耐性が増えるのは避けることができません。
日本の場合、医療保険の充実もあるので他国に比べてインフルエンザ治療薬の使用率が秀でています。
将来、多剤耐性のインフルエンザウイルスが日本発で生まれたりすることがないよう祈りたいと思います。

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