薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
2020年11月からURLが変更となりました。(新URL https://yakuzaishi.love)
  

ケイツーシロップと乳児ビタミンK欠乏性出血症

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医療従事者でなくとも、1989年以降に出産をされたお母さん方は病院でお子さんにシロップを飲ませてもらった記憶があるんじゃないでしょうか?

以前は、

  • 出生後哺乳が確立した時点
  • 退院時(生後一週間)
  • 一ヶ月検診の際

この計3回投与されるのがほとんどでした。

ですが、最近は、母乳で育てられるお子さんに対しては、
生後三ヶ月くらいまで週一回の間隔でビタミンK2(メナトテレノン)2mg(ケイツーシロップとして1mL)を投与するケースが増えています。

赤ちゃんとビタミンK欠乏症

生後六ヶ月くらいまでの新生児・乳児においては、ビタミンKが不足しやすいため、新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症が起こる可能性があります。
ビタミンKの欠乏については色んな理由がありますが、

  • ビタミンKが胎盤を通過しないため、生まれつき持っている量が少ないこと
  • 母乳の含有量が少ないため母乳では摂取しにくいこと
  • 腸内細菌叢が形成されていないため体内での生産が少ないこと
  • 肝臓の機能が十分発達していないこと

などがあります。

発生割合は高くはないのですが、頭蓋内出血を引き起こし予後もあまりよくありません。
消化管出血(新生児メレナ)を引き起こす場合もあります。

ビタミンK投与による新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防

これを回避するためにビタミンKの投与が行われています。
以前の方法でも、生後3回のビタミンKの投与で新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の発生は1/10にまで抑えることができていました。

ですが、完全母乳の場合、生後一ヶ月以降もビタミンKの不足が起こることがあるとわかってきました。
そこで、海外に習ってガイドラインが修正され、生後三ヶ月までは週一回の投与を継続していくことがあります。
(赤ちゃんのビタミンKの状態にもよりますし、医師の判断によります)

ケイツーシロップの分包品

ガイドラインが決まった当初、ケイツーシロップはバラ包装しかなく、家庭での保管の問題がありましたが、その後1mLの分包品に切り替わり、家庭での保管も容易となりました。
ガイドライン自体は2010年に作成されていましたが、ケイツーシロップの切り替えが2011年だったため、その少し前に生まれた上の子がいる場合、お母さん方が、「毎週飲ませるの?」とか「自分で飲ませるんでしたっけ?」と驚くことがあります。
安心して飲んでもらえるよう説明できないといけませんね。

ちなみに、ケイツーシロップを白湯で10倍に薄めて飲むように指導する場合がありますが、これは新生児や発育が不十分なケースに行われることが多いです。
ケイツーシロップは高浸透圧なので壊死性腸炎を引き起こすのを防ぐためです。
ちなみに哺乳が確立した後において、原液で飲ませても壊死性腸炎が発生したケースはないようです。

ケイツーシロップの味ですが、薄い砂糖水のような味。
まあ、まだ味覚がない段階の子供に使う薬なので味はあまり関係ないかもしれませんが、参考までに・・・。

お母さんに伝えたい子どもの病気ホームケアガイド

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