薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
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PPIとクロストリジウム-ディフィシル(Clostridium difficile)と偽膜性大腸炎と。

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(ここからが記事本文になります)

アストラゼネカのMRちゃんがいらっしゃいました。
今回はネキシウム(一般名:エソメプラゾール)とオメプラール(一般名:オメプラゾール)の添付文書改定について。
併用禁忌として新たにリルピビリン(商品名:レイアタッツ)が追加されたのはいいとして…

その他の注意の項、
海外における主に入院患者を対象とした複数の観察研究で、プロトンポンプインヒビターを投与した患者においてクロストリジウム・ディフィシルによる胃腸感染のリスク増加が報告されている。
クロストリ…?何よそれ?

MRさんもそんなにくわしくなかったので調べてみました。
  
※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。
  
  

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クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)
破傷風菌、ウエルシュ菌、ボツリヌス菌などと同じClostridium属に属する芽胞を形成する嫌気性菌。
入院中の抗菌薬による下痢の20%、偽膜生大腸炎のほとんどはこの菌が原因。
C.difficile関連下痢症(CDAD)と呼ばれる。
抗菌薬により腸内細菌叢が乱れることによるものか、院内感染によるものがほとんどを占める。
芽胞を持つのでアルコールは効かず、完全に除去することが難しい。

ついでに復習。
偽膜生大腸炎
内視鏡検査で大腸壁に小さい円形の膜が見られ、これを偽膜と呼ぶ。
発症の危険因子として、抗菌薬に加え、一部の抗がん剤、高齢者、重篤な疾患の合併、長期入院、経管栄養、H2blockerなどがある。
広域ペニシリン、第二世代以降のセフェム系などの広域抗菌薬、抗菌薬の複数併用でリスクが高くなる。
一方、テトラサイクリン系、マクロライド系、ニューキノロン系では中程度のリスク。
アミノグリコシド系、メトロニダゾール、バンコマイシンではリスクは低いとされている。
菌交代現象により、C.difficileが増殖、毒素により腸管粘膜が障害されることが発症の機序である。
治療には、原因となった抗菌薬の中止とメトロニダゾールやバンコマイシンの経口投与が用いられる。
ただし、バンコマイシンでは耐性菌の出現に注意が必要。
メトロニダゾールでは全身性の副作用に注意が必要となる。


ちなみに、エソメプラゾール、オメプラゾール以外のPPIではランソプラゾール(商品名:タケプロン)でも記載が追加されています。(2012年9月改定)

PPIでクロストリジウム・ディフィシル感染が増えるのが何故か?
胃酸が減るので経口で侵入しやすくなる…?
芽胞形成菌であることを考えればそんなことは関係ない気がします。
むしろ、胃酸が減った結果、胃の中に他の細菌が定着しやすくなり、腸内細菌叢が乱れてしまうってことじゃないかなと思います。
PPIの下痢としては以前、collagenous colitis(顕微鏡的大腸炎)についてもまとめました。
PPIの長期利用が増えている中で今後、いろんな問題が指摘されていく可能性はありますね。

written by iHatenaSync

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