薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
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セリンクロ錠(ナルメフェン)の特徴・作用機序・副作用〜添付文書を読み解く【日本初の飲酒量低減薬】

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(ここからが記事本文になります)

今回はアルコール依存症治療薬セリンクロ錠(成分名:ナルメフェン塩酸塩水和物)についてまとめます。
セリンクロがこれまでの薬剤と大きく異なるのは、断酒補助薬ではなく飲酒量の低減を目的とする薬剤という点で、日本で初めての飲酒量低減薬になります。
平成31年1月8日付で製造承認取得、同年2月26日に薬価収載(薬価:296.40円/錠)、平成31年3月5日に販売開始されています。
ですが、非常に厳しい制限がかかってしまっており、使用したいけど使用できないという施設も少なくないのではないでしょうか?
  
  

  
  

セリンクロ錠

セリンクロ錠(ナルメフェン塩酸塩水和物)はデンマークのルンドベック社が創製し、日本では大塚製薬とともに共同開発、大塚製薬が申請を行なった薬剤です。
すでに欧州では発売されている薬剤です。

  

日本で初めての飲酒量を低減させる薬剤

セリンクロ錠10mgの効能・効果は「アルコール依存症患者における飲酒量の低減」です。
  

これまでのアルコール依存症治療薬

今まで日本で承認されといたのは以下の3剤です。

  • ジスルフィラム(製品名:ノックビン原末)
  • シアナミド(製品名:シアナマイド内用液1%「タナベ」)
  • アカンプロサートカルシウム(製品名:レグテクト錠)

  

嫌酒薬
ジスルフィラムとシアナミドはいわゆる嫌酒薬(抗酒薬)です。
アルデヒド脱水素酵素(アルデヒドデヒドロゲナーゼ)を阻害することで、飲酒による血中アセトアルデヒド濃度を上昇させ、不快感を与えることで飲酒を行えなくする薬です。
  
断酒補助薬
アカンプロサート(レグテクト)は断酒補助薬(抗渇望薬)に該当します。
NMDA型グルタミン酸受容体を阻害すると同時に、GABAA受容体を刺激することにより、脳内の興奮と抑制のバランスを調整し、アルコール依存症患者が断酒を維持しやすくする効果があります。
  

ナルメフェンの作用機序

ナルメフェンはこれまでの3剤とは全く異なる作用機序を持っており、選択的オピオイド受容体調節薬として作用することで、飲酒欲求を抑制し、飲酒量低減を行います。
  
オピオイド受容体とドパミン
(他の依存症もそうですが)アルコール依存症には脳内のドパミンの放出量が大きく影響します。
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オピオイド受容体とドパミンの関係
図のようにオピオイドμ受容体が刺激されると、抑制系神経伝達物質であるGABAの放出量が減ります。
ドパミンの放出量を抑制するGABAが減る結果、ドパミンの放出量が増えるというわけです。
ドパミンは多幸感や意欲を引き起こします。(報酬系)
  
また、オピオイドκ受容体はドパミン神経系の末端に存在し、刺激を受けることでドパミンの放出量を抑制します。
  
飲酒とドパミン
飲酒を行うことでオピオイド受容体が刺激されます。
飲酒直後はμオピオイド受容体とδオピオイド受容体が刺激され、ドパミンが放出、多幸感を感じます。(報酬系)
飲酒開始からしばらくするとκオピオイド受容体も刺激され、反対にドパミンの放出に抑制がかかり嫌悪感を感じます。
通常の飲酒量では多幸感(快の情動)の後に適度な嫌悪感(不快の情動)が来ることでバランスが取れています。
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正常なアルコール摂取と情動変化
  
ですが、快の情動を求めて飲酒量が増大すると、μオピオイド受容体への刺激が強まり、快の情動が増していきます。
μオピオイド受容体へのシグナル伝達が増加することに対して、代償的にκオピオイド受容体へのシグナル伝達も増強します。
その結果、不快の情動が高まり、それを回避するために飲酒欲求がさらに高まってしまいます。
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慢性的なアルコール摂取と情動変化
さらに過度な飲酒が持続すると、μオピオイド受容体とδオピオイド受容体のダウンレギュレーションが起こってしまいます。
その結果、κオピオイド受容体が優位になり、飲酒による幸福感が持続せず、普段から嫌悪感の方が強く出てしまいます。
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アルコール摂取による依存の形成
そのため、常にアルコールの摂取を求めてしまうのがアルコール依存症です。
  
ナルメフェンはμオピオイド受容体とδオピオイド受容体に対しては拮抗薬として作用し、κオピオイド受容体に対しては部分的作動薬(パーシャルアゴニスト)として作用します。
その結果、アルコール摂取による過剰な幸福感を得てしまうことを防ぎつつ、嫌悪感についても抑制をかけることができます。
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ナルメフェンによる飲酒欲求の制御
その結果、飲酒欲求を低下させ、飲酒量を低減させることができると考えられます。
  
  

セリンクロの注意点

添付文書等を参考に薬剤の特徴をもう少し掘り下げてみます。

  

オピオイドの使用経験がある場合は禁忌に該当しないか注意が必要

過去にオピオイドの使用経験がある場合、以下の禁忌に該当しないか注意する必要があります。
禁忌
(次の患者には投与しないこと)

  • 2.オピオイド系薬剤(鎮痛、麻酔)を投与中又は投与中止後1週間以内の患者[オピオイドの離脱症状(又はその悪化)があらわれるおそれがある。](「相互作用 併用禁忌」の項参照)
  • 3.オピオイドの依存症又は離脱の急性症状がある患者[オピオイドの離脱症状(又はその悪化)があらわれるおそれがある。]

引用元:セリンクロ錠 添付文書

  
μオピオイド受容体とδオピオイド受容体の拮抗薬、κオピオイド受容体の部分的作動薬なんですから当然ですよね。
オピオイドは全て禁忌なので、特にトラマドール(トラマール、トラムセット)には見逃さないようにしないといけませんね。
併用禁忌には以下のように記載されています。
併用禁忌(併用しないこと)
  • 薬剤名等:オピオイド系薬剤(鎮痛、麻酔)(ただし、緊急事態により使用する場合を除く)
    • モルヒネ(MSコンチン等)
    • フェンタニル(フェントス等)
    • フェンタニル・ドロペリドール(タラモナール)
    • レミフェンタニル(アルチバ等)
    • オキシコドン(オキシコンチン等)
    • メサドン(メサペイン)
    • ブプレノルフィン(ノルスパン等)
    • タペンタドール(タペンタ)
    • トラマドール(トラマール等)
    • トラマドール・アセトアミノフェン(トラムセット)
    • ペチジン
    • ペチジン・レバロルファン(ペチロルファン)
    • ペンタゾシン(ソセゴン等)
    • ヒドロモルフォン(ナルサス等)
  • 臨床症状・措置方法:本剤によりオピオイド受容体作動薬の離脱症状を起こすおそれがある。また、本剤によりオピオイド受容体作動薬の鎮痛作用を減弱させるため、効果を得るために必要な用量が通常用量より多くなるおそれがある。緊急の手術等によりやむを得ずオピオイド系薬剤を投与する場合、患者毎にオピオイド用量を漸増し、呼吸抑制等の中枢神経抑制症状を注意深く観察すること。また、手術等においてオピオイド系薬剤を投与することが事前にわかる場合には、少なくとも1週間前に本剤の投与を中断すること。本剤を処方する際には、事前に本剤を服用している旨を医療従事者へ伝える必要があることを患者に説明すること。(〔禁忌〕の項参照)
  • 機序・危険因子:本剤のμオピオイド受容体拮抗作用により、μオピオイド受容体作動薬に対して競合的に阻害する。
引用元:セリンクロ錠 添付文書
離脱症状が起きるようなケースに関してはしっかり止めれると思うし必ず止めなければいけないのですが、トラマドールの服用を開始したけれど効果が発揮できないといった事態は起こりがちな気がします。
ですので、調剤の際に、痛み止めの効果を発揮できないケースがある旨を添えて受診時に常に飲んでいることを伝えるように指導する必要がありますね。
  

服用タイミングには少し注意が必要

用法及び用量
通常、成人にはナルメフェン塩酸塩として1回10mgを飲酒の1~2時間前に経口投与する。ただし、1日1回までとする。なお、症状により適宜増量することができるが、1日量は20mgを超えないこと。
引用元:セリンクロ錠 添付文書
「飲酒の1~2時間前」に服用となると、晩酌のようにある程度時間が決まっている場合はいいですが、昼から飲み始めるようなケースだと服用のタイミングが難しそうですね。
  

飲み忘れてしまった場合は?

《用法・用量に関連する使用上の注意》
(1)服薬せずに飲酒し始めた場合には、気付いた時点で直ちに服薬すること。ただし、気付いた時点で直ちに服薬こと。
引用元:セリンクロ錠 添付文書
  
と言うことで、飲み忘れてしまった場合は飲酒中までに気づいたらその時点ですぐに服用。
因子を終了した場合は飲まないと言うことですが、そりゃそうですよね。
  

RMPについて

ここからはセリンクロ錠10mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP)の内容についてまとめます。
安全性検討事項は以下の通りです。
  • 重要な特定されたリスク:該当なし
  • 重要な潜在的リスク:
    • オピオイド系薬剤との併用
    • 肝機能障害患者への投与
    • 自殺行動・自殺念慮
    • 注意力障害・浮動性めまい・傾眠
    • 錯乱・幻覚・解離等の精神症状
    • 敵意・攻撃性
  • 重要な不足情報:該当なし
  
オピオイド系薬剤との併用
重要な潜在的リスクとした理由:本剤はμオピオイド受容体への拮抗作用を有し、オピオイド系薬剤の急激な効果減弱やオピオイド系薬剤の離脱症状を起こすおそれがある。また、本剤によりオピオイド受容体作動薬の鎮痛作用を減弱させるため、効果を得るために必要な用量が通常用量より多くなり、呼吸抑制があらわれるおそれがある。
本剤の海外製造販売後及びオピオイド系薬剤の国内製造販売後において呼吸抑制や離脱症状に関する事象が集積されていることから、オピオイド系薬剤(鎮痛、麻酔)については併用禁忌に設定している。しかしながら、併用注意に設定されている一部のオピオイド系薬剤については、本剤と併用した際の影響が明らかでないため。
引用元:セリンクロ錠10mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP)
添付文書の該当箇所は以下の通りです。

  • 薬剤名等:オピオイド系薬剤(併用禁忌の薬剤を除く)コデイン、ジヒドロコデイン、ロペラミド、トリメブチン等
  • 臨床症状・措置方法:本剤によりオピオイド受容体作動薬の効果を減弱させるため、効果が得られないことがあるので、注意すること。
  • 機序・危険因子:本剤のμオピオイド受容体拮抗作用により、μオピオイド受容体作動薬に対して競合的に阻害する。

引用元:セリンクロ錠 添付文書

併用禁忌に該当しないオピオイドだからといって油断しないようにしましょうね。
  
肝機能障害患者への投与
重要な潜在的リスクとした理由:肝機能障害患者に投与することで血中濃度が上昇するおそれがある。アルコール依存症患者は肝機能障害を合併していることがあり、製造販売後において一定の割合で肝機能障害患者への投与が想定されるため。
引用元:セリンクロ錠10mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP)
添付文書の該当箇所は以下の通りです。
《用法・用量に関連する使用上の注意》
重度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類C)には、1日最高用量を10mgとすること。軽度及び中等度の肝機能障害のある患者(Child-Pugh分類A及びB)並びに重度の腎機能障害のある患者(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)では、血中濃度が過度に上昇するおそれがあるので、20mgに増量する場合には、患者の状態を観察しながら慎重に行うこと。
  
〔薬物動態〕
6.特定の背景を有する患者
肝障害(外国人による成績):肝機能の程度の異なる被験者(Child-Pugh分類A及びChild-Pugh分類B)に本剤20mgを単回経口投与した時のAUCは、正常な肝機能を有する被験者と比べてそれぞれ1.5倍及び2.9倍であった。
引用元:セリンクロ錠 添付文書
アルコール依存症となっている時点で肝機能障害のリスクは高まります。
と言うことはセリンクロを服用する患者さんは肝機能障害を合併している可能性が高いと言うことになりますから、セリンクロを使用する場合はそのことを踏まえておく必要があります。
  
自殺行動・自殺念慮
重要な潜在的リスクとした理由:国内で実施した短期プラセボ対照二重盲検試験(以下、国内短期試験)及び国内長期非盲検継続投与試験(以下、国内継続試験)において自殺関連副作用は報告されなかった。
海外で実施したアルコール依存症患者を対象としたプラセボ対照二重盲検試験2試験及びプラセボ二重盲検長期試験(組み入れ時のDrinking Risk Level(DRL)がHigh以上であった被験者)(以下、海外臨床試験)の統合データにおける自殺関連有害事象の発現率は本剤群で0.2%(1/475)及びプラセボ群で1.4%(5/369)であり、差は認められなかった。
一方、アルコール依存症患者には希死念慮があり、自殺関連有害事象の発現率は一般より高いとされている。海外で市販後に本剤と因果関係が否定できない自殺関連有害事象の発現が報告されているため。
引用元:セリンクロ錠10mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP)
添付文書の該当箇所は以下の通りです。
〔使用上の注意〕
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(3)自殺念慮又は自殺企図の既往のある患者、自殺念慮のある患者[自殺念慮、自殺企図があらわれることがある。]
2.重要な基本的注意
(4)本剤との因果関係は明らかではないが、自殺念慮、自殺企図等が報告されているので、患者の状態を十分に観察するとともに、関連する症状があらわれた場合には、本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
引用元:セリンクロ錠 添付文書
アルコール依存症に由来するものかセリンクロ錠に由来するものかは不明ですが、自殺関連有害事象が報告されていることは頭に入れておかなければいけませんね。
  
注意力障害・浮動性めまい・傾眠
重要な潜在的リスクとした理由:国内短期試験では注意力障害、浮動性めまい、傾眠等に関する副作用の発現率は本剤群27.5%(119/432)であり、プラセボ群9.8%(24/245)よりも高かった。
これらの事象が発現した場合に自動車運転等の機械操作に影響して重大な事故につながるおそれがあるため。
引用元:セリンクロ錠10mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP)
添付文書の該当箇所は以下の通りです。
〔使用上の注意〕
2.重要な基本的注意
(1)注意力障害、浮動性めまい、傾眠等が起こることがあるので、本剤を服用している患者には自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること。
引用元:セリンクロ錠 添付文書
運転禁止ではありませんが、運転注意に指定されています。
  
錯乱・幻覚・解離等の精神症状
重要な潜在的リスクとした理由:国内短期試験において精神系の副作用は報告されていないが、国内継続試験では403例中1例発現した。
海外臨床試験の統合データにおける精神系有害事象の発現率は、本剤群で3.6%(17/475)であり、プラセボ群の0.3%(1/369)よりも高頻度であった。
アルコール依存症患者は精神症状を合併していることがあり、本剤と精神症状との関連性及び臨床的重要度については特定されていないため。
引用元:セリンクロ錠10mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP)
添付文書では副作用の項に、
頻度不明:精神症状(錯乱、幻覚、幻視、幻聴、解離等)として記載されています。
  
敵意・攻撃性
重要な潜在的リスクとした理由:国内短期試験では敵意、攻撃性に関する副作用は本剤群0.9%(4/432)及びプラセボ群0%(0/245)であり、国内継続試験では403例中4例発現した。
海外臨床試験の統合データにおける敵意、攻撃性に関する有害事象の発現率は、本剤群で3.4%(16/475)であり、プラセボ群の0.8%(3/369)よりも高頻度であった。
本剤と敵意・攻撃性との関連性及び臨床的重要度については特定されていないため。
引用元:セリンクロ錠10mgに係る医薬品リスク管理計画書(RMP)
添付文書では副作用の項に、
1%未満:易刺激性、激越として記載されています。
  
  

セリンクロの使用には厳しい制限が?

発売日に納品をお願いしていたところ、卸さんから納品を見送らせてほしいとの連絡がありました。
処方予定の医師や医療機関がセリンクロを使用する条件に該当しているかどうかを確認したいとのことです。
まだ、詳細が未確認なのですが、以下の内容だと思います。
使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0225第9号 平成31年2月25日)
2 薬価基準の一部改正に伴う留意事項について
(1)セリンクロ錠10mg
  1. 本製剤の効能・効果に関連する使用上の注意において「アルコール依存症治療の主体は心理社会的治療であることから、服薬遵守及び飲酒量の低減を目的とした心理社会的治療と併用すること。」とされているので、本製剤の薬剤料については、以下のすべての要件を満たした場合に限り算定できること。
    • ア アルコール依存症の患者に対して、アルコール依存症に係る適切な研修を修了した医師が、アルコール依存症に係る適切な研修を修了した看護師、精神保健福祉士、公認心理師等と協力し、家族等と協議の上、詳細な診療計画を作成し、患者に対して説明を行うこと
    • イ 必要に応じて患者の受入が可能な精神科以外の診療科を有する医療体制との連携体制があること
    • ウ 心理社会的治療については、アルコール依存症に係る適切な研修を修了した医師によって行い、その要点及び診療時間を診療録に記載すること
      なお、少なくとも本剤の初回投与時においては、30分を超えて当該治療を行うこと(本剤の初回投与までの診療時において30分を超えて当該治療を行った場合を除く)
    • エ ア及びウに定めるアルコール依存症に係る適切な研修は、「診療報酬の算定方法」(平成20年厚生労働省告示第59号)別表第一医科診療報酬点数表(以下「医科点数表」という。)区分番号「A231-3」重度アルコール依存症入院医療管理加算の算定にあたり医師等に求められる研修に準じたものであること
  2. 本製剤の効能・効果に関連する使用上の注意において「アルコール依存症の診断は、国際疾病分類等の適切な診断基準に基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。」、「アルコール依存症に伴う精神・身体症状及び患者の意思を総合的に勘案し、断酒ではなく飲酒量低減を治療目標とすることが適切と判断された患者に対して本剤を投与すること。」及び「飲酒量低減治療の意思のある患者にのみ使用すること。」とされているので、投与に当たっては十分留意すること。
  3. 本製剤の用法・用量に関連する使用上の注意において「本剤の投与継続及び治療目標の見直しの要否について定期的に検討し、漫然と投与しないこと。」とされているので、3ヵ月ごとを目安に治療の評価を行うこと。
引用元:使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(保医発0225第9号 平成31年2月25日)
明日、大塚製薬のMRさんが来局されるので詳しく聞きたいと思います。
  

重度アルコール依存症入院医療管理加算の算定にあたり医師等に求められる研修

(追記H31.3.8)
やはり「重度アルコール依存症入院医療管理加算の算定にあたり医師等に求められる研修」を修了している必要があるということが処方を大きく制限しそうですね。
医師とそのほかの職種に1名が研修を修了している必要がありそうです。
大塚製薬のMRさんは自社サイトselincro.otsukaで配信されている講習がそれに該当するかを確認していて、それに1〜2ヶ月必要と言ってましたが、調べてみるとweb配信の講習では該当しようがないと思うのですが・・・。
この「重度アルコール依存症入院医療管理加算の算定にあたり医師等に求められる研修」ですが、平成22年診療報酬改定の際の疑義解釈資料の送付について(その1) 事務連絡 平成22年3月29日に具体的な内容が記載されています。
(問56)重度アルコール依存症入院医療管理加算の要件として、「当該保険医療機関にアルコール依存症に係る適切な研修を修了した医師、研修を修了した看護師、作業療法士、精神保健福祉士又は臨床心理技術者がそれぞれ1名以上配置されていること。」とあるが、適切な研修とはどのようなものを指すのか。
(答)研修については、以下の要件を満たすものであること。
  1. 医師に行う研修については、アルコール依存症に関する専門的な知識及び技術を有する医師の養成を目的とした20時間以上を要する研修で、次の内容を含むものであること。
    • ア アルコール精神医学
    • イ アルコールの公衆衛生学
    • ウ アルコール依存症と家族
    • エ 再飲酒防止プログラム
    • オ アルコール関連問題の予防
    • カ アルコール内科学及び生化学
    • キ 病棟実習
  2. 看護師に行う研修については、アルコール依存症に関する専門的な知識及び技術を有する看護師の養成を目的とした25時間以上を要する研修で、次の内容を含むものであること。
    • ア アルコール依存症の概念と治療
    • イ アルコール依存症者の心理
    • ウ アルコール依存症の看護・事例検討
    • エ アルコール依存症と家族
    • オ アルコールの内科学
    • カ 病棟実習
  3. 精神保健福祉士・臨床心理技術者等に行う研修については、アルコール依存症に関する専門的な知識及び技術を有する精神保健福祉士・臨床心理技術者等の養成を目的とした25時間以上を要する研修で、次の内容を含むものであること。
    • ア アルコール依存症の概念と治療
    • イ アルコール依存症のインテーク面接
    • ウ アルコール依存症と家族
    • エ アルコールの内科学
    • オ アルコール依存症のケースワーク・事例検討
    • カ 病棟実習
引用元:疑義解釈資料の送付について(その1) 事務連絡 平成22年3月29日
これだけの研修を受講しないと処方ができないとなると、基本的には従来から「重度アルコール依存症入院医療管理加算」を算定していた病院でないと処方できないと考えていいのではないでしょうか?
自分の周りで調べる限りでは入院可能な精神科病院しか存在しません。
これを薬価収載時に通知してこられた大塚製薬はかなり辛いですよね・・・。
今後、この処方制限が緩和されるようなことはあるのでしょうか?
  
あと、院外処方の場合、薬剤料はどのように制限されるのでしょう?
薬局ではこの条件に該当しているかどうか把握できないと思いますが、その場合は減点されてしまうのか?それとも突合点検の対象で処方元から減点されるのか?
わからないことだらけですね・・・。
  
初回の30分以上の診療も個人クリニック等ではかなり厳しいのではないでしょうか?
  
  

その他

その他、気になる部分についてまとめます。
  

アルコール依存症に対する診断・治療ガイドライン

数年前までは、アルコール依存症の治療は断酒がメインでした。
ですが、最新のアルコール依存症に対するガイドライン(新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン(第1版))では、飲酒量低減が断酒のための中間ステップ、治療目標の一つに位置付けられています。
これを受けて2018年12月に公開された新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン に基づいたアルコール依存症の診断治療の手引き 【第1版】ではナルメフェンの使用についても言及されています。
4. アルコール依存症の治療選択
4.2 飲酒量低減を治療目標とする患者(図1、フローチャート中の2)
軽症の依存症で明確な合併症を有しないケースで、患者が断酒を望む場合や断酒を必要とするその他の事情がある場合を除き、飲酒量低減が治療目標になります。
断酒を目標とした治療を選択すべき患者であっても、断酒の同意が得られない場合は、治療からドロップアウトすることを避けるために、一時的に飲酒量低減も選択できます。飲酒量低減がうまくいかない場合には断酒に切り替えます。
引用元:新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインに基づいたアルコール依存症の診断治療の手引き 【第1版】
5. 治療(図1、フローチャート中の3)
5.2 薬物治療
表4 アルコール依存症の再発予防に関して推奨される薬物治療
治療目標が飲酒量低減

  • 軽症の依存症で明確な合併症を有しないケースでは、飲酒量低減が治療目標になりうる。
  • より重症な依存症のケースであっても本人が断酒を希望しない場合には、飲酒量低減を暫定的な治療目標にすることも考慮する。その際、飲酒量低減がうまくいかない場合には断酒に目標を切り替える。
  • 治療薬物としてナルメフェンを考慮する。
  • 毎日の飲酒量のモニタリングなどの心理行動療法の併用が重要である。

引用元:新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインに基づいたアルコール依存症の診断治療の手引き 【第1版】

  

オピオイド受容体とそこに作用する薬剤のまとめ

オピオイド受容体に作用する薬剤は多く存在しますが、どの薬がどのサブタイプに・・・となると混乱する人も多いのではないでしょうか?
そこで、最後に、薬剤ごとのオピオイド受容体に対する作用をまとめておきます
成分名 μ受容体 δ受容体 κ受容体
ナルメフェン
(セリンクロ)
- - PA
ナルフラフィン
(レミッチ)
- - アゴニスト
モルヒネ +++ - +
フェンタニル +++ - -
オキシコドン +++ - -
コデイン + - -
トラマドール + - -
ペンタゾシン ++(PA) + ++
ブプレノルフィン +++(PA) ++(PA) +++(PA)

  • PA:パーシャルアゴニスト
  • ※:活性代謝物
  • ナルメフェンとナルフラフィンの活性は不明
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