薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
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医療用麻薬と向精神薬の投与日数制限(処方日数制限)

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(ここからが記事本文になります)

医療用麻薬、向精神薬、新薬については投与日数制限(処方日数制限)が定められています。
この記事では医療用麻薬と向精神薬の投与期間上限についてまとめます。
平成30年6月時点での内容です。
  
  
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投与(処方)日数に制限のある薬

療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等の一部を改正する告示(平成30年厚生労働省告示第42号)
医療用麻薬、向精神薬(と新薬)についてはその成分や剤型ごとに投薬(処方)できる日数に制限が定められています。
  

投与期間の上限が免除される場合

旅程その他の事情を考慮し、必要最低限の範囲において、1回30日分を限度として投与してさし支えないもとのする。
引用元:厚生労働省保険局医療課長通知 保医発第0404001号(平成14年4月4日付)
上に示す通知に記載されている通り、「旅程その他の事情」がある場合、「必要最低限の範囲において、1回30日分を限度」として長期投与が可能となっています。
  
具体的には、以下の場合についてです。
  • 長期休暇
    • ゴールデンウィーク
    • 年末年始
  • 海外渡航
これらにあてはまる場合、14日分の投与制限のある医薬品について、30日分を限度として必要最小限の範囲での投与が可能となっています。
なお、お盆休みは法定休暇ではないので長期休暇の対象にはなりません
また、長期休暇の理由で日数制限を解除できるのは、14日後が休みにかかる場合のみとなっています。
例えば12月の上旬に「長期休暇のため」日数制限を免除することはできないということです。
Point!


旅程その他の事情を理由に長期投与を行う場合

  • 30日分を越すことはできない
  • お盆休みは対象外
  • 14日後が受診不可の場合に長期投与可能

たまに30日分の薬を35日分で出そうとする処方を見ることがありますが、ダメです!
  

投与期間に上限のある薬を長期投与する場合のレセプト記載

「旅程その他の事情」を理由に長期投与を行う場合、その理由をレセプト*1の摘要欄に記載する必要があります。
保医発0326第5号「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について(平成30年3月26日)
項番14 長期の旅行等特殊の事情がある場合に、日数制限を超えて投与された場合
長期の旅行等特殊の事情がある場合において、必要があると認められ、投薬量が1回14日分を限度とされる内服薬及び外用薬であって14日を超えて投与された場合は、処方箋の備考欄に記載されている長期投与の理由を転記すること。
具体的には、

  • 「連休のため長期投与」
  • 「年末年始のため長期投与」
  • 「海外渡航のため長期投与」

のようにレセプト適応欄に理由を記載します。
  
  

医療用麻薬の投与(処方)日数制限

以前は医療用麻薬は全て14日間の日数制限がありましたが、現在は緩和され、一部を除き30日間までの投与が可能になっています。
(外用)と記載しない限りは内服薬としています。
  

14日間の投与日数制限(医療用麻薬)

14日分までの処方日数制限が定められている医療用麻薬の一覧です。(平成30年6月現在)
一般名の五十音順に並べています。

  • アヘン:アヘンチンキ、アヘン散、ドーフル散など
  • アヘンアルカロイド:パンオピン
  • フェンタニルクエン酸塩:アブストラル舌下錠、イーフェンバッカル錠
  • オキシメテバノール:メテバニール錠2mg
  • メサドン塩酸塩:メサペイン錠

  

30日間の投与日数制限(医療用麻薬)

30日分までの処方日数制限が定められている医療用麻薬の一覧です。(平成30年6月現在)
一般名の五十音順に並べています。

  • オキシコドン塩酸塩:オキシコンチン錠など
  • オキシコドン塩酸塩水和物:オキノーム散
  • コデインリン酸塩:コデインリン酸塩散10%「第一三共」、コデインリン酸塩水和物原末、コデインリン酸塩錠20mgなど
  • ジヒドロコデインリン酸塩:ジヒドロコデインリン酸塩散10%「第一三共」、ジヒドロコデインリン酸塩原末など
  • タペンタドール:タペンタ錠
  • ヒドロモルフォン:ナルサス錠、ナルラピド錠
  • モルヒネ塩酸塩:アンペック坐剤、オプソ内服液、パシーフカプセル、モルヒネ塩酸塩錠10mg「DSP」、モルヒネ塩酸塩水和物原末など
  • モルヒネ硫酸塩:MSコンチン錠、MSツワイスロンカプセル、カディアンカプセル、モルペス細粒
  • フェンタニル(外用):デュロテップパッチなど、ワンデュロパッチなど
  • フェンタニルクエン酸塩(外用):フェントステープなど

※モルヒネ硫酸塩:カディアンスティック(2017年3月31日)、ピーガード錠(2018年3月31日)は薬価削除済
  
  

向精神薬の投与(処方)日数制限

多くの処方日数制限は30日分ですが、一部は90日まで拡大されています。
14日分の処方日数制限とされている薬については使用頻度もかなり少なくなってきていると思います。
(外用)と記載しない限りは内服薬としています。
  

14日間の投与日数制限(向精神薬)

14日分までの処方日数制限が定められている向精神薬の一覧です。(平成30年6月現在)
一般名の五十音順に並べています。

  • アモバルビタール:イソミタール原末(向2)
  • クロラゼプ酸:メンドンカプセル7.5mg(向3)
  • ジアゼパム(外用):ダイアップ坐剤(向3)
  • フェノバルビタールナトリウム(外用):ルピアール坐剤、ワコビタール坐剤(向3)
  • ブプレノルフィン(外用):ノルスパンテープ(向2)
  • ブプレノルフィン塩酸塩(外用):レペタン坐剤(向2)
  • ブロマゼパム(外用):セニラン坐剤(向3)
  • ペンタゾシン:ソセゴン錠25mg・ペルタゾン錠25mg(向2)
  • ペントバルビタールカルシウム:ラボナ錠50mg(向2)
  • マジンドール:サノレックス錠0.5mg(向3)

※向2:向精神薬2種、向3:向精神薬3種
  

30日間の投与日数制限(向精神薬)

30日分までの処方日数制限が定められている向精神薬の一覧です。(平成30年6月現在)
一般名の五十音順に並べています。

  • アルプラゾラム:コンスタン錠・ソラナックス錠など(向3)
  • エスタゾラム:ユーロジン錠など、ユーロジン散1%(向3)
  • エチゾラム:デパス錠など、デパス細粒1%など(向3)
  • オキサゾラム:セレナール錠、セレナール散10%(向3)
  • クアゼパム:ドラール錠など(向3)
  • クロキサゾラム:セパゾン錠、セパゾン散1%(向3)
  • クロチアゼパム:リーゼ錠など、リーゼ顆粒10%(向3)
  • クロルジアゼポキシド:コントール錠・バランス錠など、コントール散10%・バランス散10%など(向3)
  • ゾピクロン:アモバン錠など(向3)
  • ゾルピデム酒石酸塩:マイスリー錠など(向3)
  • トリアゾラム:ハルシオン錠など(向3)
  • ハロキサゾラム:ソメリン錠、ソメリン細粒1%(向3)
  • プラゼパム:レスタス錠2mg
  • フルジアゼパム:エリスパン錠0.25mg(向3)
  • フルニトラゼパム:サイレース錠・ロヒプノール錠など(向2)
  • フルラゼパム塩酸塩:ダルメートカプセル15(向3)
  • プロキシフィリン・エフェドリン配合剤:アストモリジン配合胃溶錠、アストモリジン配合腸溶錠(向3)
  • ブロチゾラム:レンドルミン錠など(向3)
  • ブロマゼパム:セニラン錠・レキソタン錠(向3)
  • ペモリン:ベタナミン錠(向3)
  • メダゼパム:レスミット錠など(向3)
  • メチルフェニデート塩酸塩:コンサータ錠、リタリン錠10mg(向1)
  • メペンゾラート臭化物・フェノバルビタール配合剤:トランコロンP配合錠(向3)
  • モダフィニル:モディオダール錠100mg(向1)
  • ロフラゼプ酸エチル:メイラックス錠など、メイラックス細粒1%(向3)
  • ロラゼパム:ワイパックス錠など(向3)
  • ロルメタゼパム:エバミール錠1.0・ロラメット錠1.0(向3)

※クロルプロマジン・プロメタジン配合剤:ベゲタミン配合錠(向3、2018年3月31日で薬価削除済)
※ニメタゼパム:エリミン錠(向3、2017年3月31日で薬価削除済)
  

90日間の投与日数制限(向精神薬)

90日分までの処方日数制限が定められている向精神薬の一覧です。(平成30年6月現在)
一般名の五十音順に並べています。

  • ジアゼパム:セルシン錠・セレナミン錠・ホリゾン錠など、セルシンシロップ(向3)
  • ニトラゼパム:ネルボン錠・ベンザリン錠など、ベンザリン細粒など、ネルボン散(向3)
  • フェニトイン・フェノバルビタール配合剤:複合アレビアチン配合錠、ヒダントール配合錠(向3)
  • フェノバルビタール:フェノバール原末など、フェノバール散10%など、フェノバール錠30mg、フェノバールエリキシル0.4%(向3)
  • クロナゼパム:ランドセン錠・リボトリール錠、ランドセン細粒・リボトリール細粒(向3)
  • クロバザム:マイスタン錠、マイスタン細粒1%(向3)

  
    

おまけ:投与日数制限の歴史

  • 平成14年3月31日まで:医薬品の投与期間は基本的に14日間(特定の疾患とそれに対する医薬品のみ30日間の長期投与が可能)
  • 平成14年4月1日(平成14年度診療報酬改定):長期処方の解禁(医療用麻薬・向精神薬・新薬以外の日数制限撤廃)
  • 平成20年4月1日(平成20年度診療報酬改定):一部の医療用麻薬と向精神薬の投与日数制限緩和(14日分→30日分)
  • 平成24年4月1日(平成24年度診療報酬改定):一部の医療用麻薬の投与日数制限緩和(14日分→30日分)
  • 平成28年11月1日:エチゾラムとゾピクロンの向精神薬指定に伴う投与日数制限追加(30日分)
  • 平成30年4月1日(平成30年度診療報酬改定):一部の医療用麻薬の投与日数制限緩和(14日分→30日分)

  

平成20年4月1日 医療用麻薬・向精神薬の投与期間上限緩和

14日間→30日間
  • 向精神薬
    • エスタゾラム:ユーロジン錠など、ユーロジン散1%
    • 塩酸フルラゼパム:ダルメートカプセル15
    • クアゼパム:ドラール錠など
    • 酒石酸ゾルピデム:マイスリー錠など
    • トリアゾラム:ハルシオン錠など
    • ニメタゼパム:エリミン錠(2017年3月31日で薬価削除済)
    • ハロキサゾラム:ソメリン錠、ソメリン細粒1%など
    • フルニトラゼパム:サイレース錠・ロヒプノール錠など
      ロヒプノールは2018年8月で製造販売中止、経過措置期間は2019年3月まで
    • ブロチゾラム:レンドルミン錠など
    • ロルメタゼパム:エバミール錠1.0・ロラメット錠1.0
  • 医療用麻薬
    • 塩酸オキシコドン:オキシコンチン錠など
    • 塩酸オキシコドン水和物:オキノーム散
    • 塩酸モルヒネ:アンペック坐剤、オプソ内服液、パシーフカプセル、モルヒネ塩酸塩錠10mg「DSP」、モルヒネ塩酸塩水和物原末など
    • フェンタニル:デュロテップパッチなど、ワンデュロパッチ
    • 硫酸モルヒネ:MSコンチン錠、MSツワイスロンカプセル、カディアンカプセル、モルペス細粒
      ※カディアンスティック(2017年3月31日)、ピーガード錠(2018年3月31日)は薬価削除済
  

平成24年4月1日 医療用麻薬の投与期間上限緩和

14日間→30日間
  • コデインリン酸塩:コデインリン酸塩散10%「第一三共」、コデインリン酸塩水和物原末、コデインリン酸塩錠20mgなど
  • ジヒドロコデインリン酸塩:ジヒドロコデインリン酸塩散10%「第一三共」、ジヒドロコデインリン酸塩原末など
  • フェンタニルクエン酸塩:フェントステープなど
    ※貼付剤のみ(アブストラル舌下錠、イーフェンバッカルは除く)
  

平成28年11月1日 エチゾラムとゾピクロンの向精神薬指定

制限なし→30日間
  • エチゾラム:デパス錠など
  • ゾピクロン:アモバン錠など
  

平成30年4月1日 医療用麻薬の投与期間上限緩和

療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等の一部を改正する告示(平成30年厚生労働省告示第42号)
14日間→30日間
  • タペンタドール:タペンタ錠
  • ヒドロモルフォン:ナルサス錠、ナルラピド錠
    ※ともに平成30年6月1日から新薬投与制限解除済

*1:調剤報酬明細書

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