薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

抗コリン作用を有する薬剤における禁忌「緑内障」等に係る添付文書の「使用上の注意」改訂について

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(ここからが記事本文になります)

2019年6月18日、厚生労働省の医薬・生活衛生局から抗コリン作用を有する薬剤に関する添付文書の改訂についての通知が出されました。
今回の通知により、医療用医薬品の添付文書から単純に「緑内障の患者」を禁忌とする記載が削除されます。
抗コリン作用による危険性が生じるのは全ての緑内障ではなく、「閉塞隅角緑内障」です。
今回の改訂により、「開放隅角緑内障」であれば抗コリン薬は禁忌から除外されることになります。
  
  

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抗コリン作用を有する薬剤における禁忌等の改訂内容

今回改訂になる内容を簡単にまとめます。
通知には以下のように記載されています。
1.製造販売する医薬品(医療用医薬品に限る。)について、以下に該当する製剤であるか確認すること。
  1. 添付文書の「禁忌」の項に「緑内障の患者」、「緑内障のある患者」、「緑内障、尿貯留傾向のある患者」等の緑内障患者に係る注意喚起が記載されており、その設定理由が抗コリン作用によると考えられる製剤(ただし、 眼科用製剤は除く。)
  2. 「使用上の注意」に「狭隅角緑内障」を記載している製剤(抗コリン作用の有無によらない)。
引用元:コリン作用を有する薬剤における禁忌「緑内障」等に係る添付文書の「使用上の注意」改訂について(薬生安発0618第2号 令和元年6月18日)
  

禁忌:緑内障・狭隅角緑内障の記載

まず、以下のように、禁忌に単純に「緑内障」と記載されているものです。

  • 緑内障の患者
  • 緑内障のある患者
  • 狭隅角緑内障の患者

これらは、

  • 閉塞隅角緑内障の患者〔抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。〕

に変更されます。
  
単純な「緑内障」とともに「尿貯留傾向」が記載されているものについては2つに分けられます。

  • 緑内障、尿貯留傾向のある患者

この場合は、

  • 閉塞隅角緑内障の患者〔抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。〕
  • 尿貯留傾向のある患者〔抗コリン作用により、尿閉を悪化させるおそれがある。〕

のように2つに分けて変更されます。
  

慎重投与に開放隅角緑内障への注意を記載

禁忌に緑内障の記載があったものについては、慎重投与の項(新記載要領の場合、9.特定の背景を有する患者に関する注意)に開放隅角緑内障の患者に対する注意が加わります。
  • 慎重投与:開放隅角緑内障の患者〔抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。〕
  • 9.特定の背景を有する患者に関する注意
    9.1 合併症・既往歴等のある患者
    開放隅角緑内障の患者
    抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。
  

禁忌:急性狭隅角緑内障の記載

次に、禁忌に「急性狭隅角緑内障」と記載されているものです。

  • 急性狭隅角緑内障の患者
  • 急性狭隅角緑内障のある患者

これらは、

  • 急性閉塞隅角緑内障の患者〔抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。〕

に変更されます。
  

慎重投与に閉塞隅角緑内障への注意を記載

慎重投与に「閉塞隅角ないし狭隅角緑内障の患者」の記載があったものについては、閉塞隅角緑内障の患者に対する注意に改められます。
  • 慎重投与:閉塞隅角緑内障の患者〔抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。〕
  
  

まとめ

抗コリン薬による眼圧上昇のリスクがあるのは閉塞隅角緑内障のみとだと言うことは、薬剤師であればほとんどの方はご存知だったと思います。
ですが、それだけに、古い医薬品の禁忌が単純に「緑内障」となっており、開放隅角緑内障も含まれてしまっていることに歯がゆさを覚えていたのではないでしょうか?
今回の改訂でようやくスッキリしますね。
  

添付文書改訂に至った背景

改訂に至った経緯についてもまとめておきます。
今回の改訂は日本眼科学会からの要望書が提出されたことに始まっています。
要望書の概要は以下の通りです。
要望①

  • 抗コリン薬の多くの添付文書において、緑内障の患者が禁忌とされている。
  • 緑内障は、「開放隅角緑内障」と「閉塞隅角緑内障」の2種類に分けられ、抗コリン作用により安全性の懸念が生じうるのは「閉塞隅角緑内障」のみと考えられる。また、「開放隅角緑内障」において、抗コリン作用により安全性の懸念が生じるとの記載は、我が国の成書や欧米の成書にも該当の記載はない。
  • 開放隅角緑内障の患者にも抗コリン薬の治療機会を提供するため、抗コリン薬の添付文書で禁忌とされている「緑内障」を「閉塞隅角緑内障」に変更してほしい(眼局所製剤、禁忌の設定理由が抗コリン作用以外の薬剤は除く)。

要望②

  • 「狭隅角緑内障」と記載された添付文書があるが、当該病名は不適切なもので用いるべきではなく、緑内障診療ガイドライン第2版(2006年)以降は、「閉塞隅角緑内障」に統一されていることから、「閉塞隅角緑内障」に変更してほしい。

引用元:資料2 抗コリン作用を有する製剤における禁忌「緑内障」等に係る「使用上の注意」の改訂について

  

参考資料

最後に今回の記事で使用した参考資料です。
抗コリン作用を有する薬剤における禁忌「緑内障」等に係る添付文書の「使用上の注意」改訂について(薬生安発0618第2号 令和元年6月18日)
令和元年度第3回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 資料
資料2 抗コリン作用を有する製剤における禁忌「緑内障」等に係る「使用上の注意」の改訂について

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