薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
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生活保護受給者に対する後発医薬品の変更調剤が原則化

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(ここからが記事本文になります)

平成30年10月1日から生活保護受給者に対しては後発医薬品による調剤を行うことが原則化されます。
これは平成30年6月1日に可決され、6月8日に公布された生活保護法の一部改正が施行されるためです。
これまでも、生活保護受給者については後発医薬品を使うように求められていました。
ただし、今までは努力義務でしたが、法律に規定されたため、2018年10月1日からは原則義務となります。
  
  

  
  

生活保護法の一部改正

今回行われた生活保護法の一部改正では、児童扶養手当法、社会福祉法、生活困窮者自立支援法などの一部改正が行われました。
「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律」の公布について(通知)/子発0608第1号 社援発0608第1号 平成30年6月8日にも記載されているように、薬局に関係するのは医療扶助の適正化に関する部分です。
改正後の生活保護法(厚生労働省)は以下の通りです。(下線部が変更部分)
(医療扶助の方法)
第三十四条 医療扶助は、現物給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、金銭給付によつて行うことができる。
2 前項に規定する現物給付のうち、医療の給付は、医療保護施設を利用させ、又は医療保護施設若しくは第四十九条の規定により指定を受けた医療機関にこれを委託して行うものとする。
3 前項に規定する医療の給付のうち、医療を担当する医師又は歯科医師が医学的知見に基づき後発医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第十四条又は第十九条の二の規定による製造販売の承認を受けた医薬品のうち、同法第十四条の四第一項各号に掲げる医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能及び効果が同一性を有すると認められたものであつて厚生労働省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)を使用することができると認めたものについては、原則として、後発医薬品によりその給付を行うものとする。
ちなみに、改正前は「被保護者に対し、可能な限り後発医薬品の使用を促すことによりその給付を行うよう努める」でした。
  

薬局での具体的な対応

まだ自分の薬局には具体的な通知が来ていません。
他県も含めて検索しても情報がなかなか出てきませんが、一部の自治体では案内が掲載されています。
各自治体の情報は最後の方にまとめますが、東京都と横浜市が非常に詳しくまとめています。

  
また、薬剤師会では鹿児島県薬剤師会が詳しくまとめてくれています。
20180919業229_「生活保護法による医療扶助運営要領について」の一部改正(案)及びリーフレットの送付について(鹿児島県薬剤師会)
  

「原則」の具体的な内容

鹿児島県薬剤師会の資料を元に進めていきます。
通知の中には「原則」の具体的な内容について記載されています。
「生活保護法による医療扶助運営要領について」の一部改正(案)及びリーフレットの送付について(日薬業発第229号 平成30年9月19日)
  • 一般名処方の場合、又は銘柄名処方であって後発医薬品への変更を不可としていない場合には指定薬局は後発医薬品を調剤すること
  • ただし後発医薬品の在庫がない場合は、先発医薬品を調剤することが可能であること
  • 後発医薬品の使用への不安等から必要な服薬ができない等の事情が認められるときは、薬剤師が処方医に疑義照会を行い、当該処方医において医学的知見に基づき先発医薬品が必要と判断すれば、先発医薬品を調剤することができるものであること
要は、在庫がない・変更不可の場合を除いて全て後発医薬品で調剤を行わなければいけません。
  
上記の根拠となるのは以下の通知の内容です。
「生活保護法による医療扶助運営要領について」(昭和36年9月30日厚生省社会局長通知 社発第727号)
第3 医療扶助実施方式
5 調剤の給付
(2)後発医薬品の給付
  • ア 指定医療機関及び指定薬局における取組 医師又は歯科医師が医学的知見に基づき後発医薬品を使用することができると認めたときは、次のとおりの取扱いにより、後発医薬品を調剤するよう、指定医療機関及び指定薬局に対して周知徹底を図ること(後発医薬品の薬価が先発医薬品の薬価よりも高くなっている又は先発医薬品の薬価と同額となっている場合を除く。)。また、被保護者に対しても、本取扱いについて周知徹底を図ること。
    • (ア)処方医が一般名処方を行っている場合又は銘柄名処方であって後発医薬品への変更を不可としていない場合には、指定医療機関又は指定薬局は、後発医薬品を調剤すること。このため、先発医薬品の調剤が必要である場合は、処方医が必ず当該先発医薬品の銘柄名処方をする必要があること。
    • (イ)ただし、後発医薬品の在庫がない場合は、先発医薬品を調剤することが可能であること。
    • (ウ)後発医薬品の使用への不安等から必要な服薬ができない等の事情が認められるときは、薬剤師が処方医に疑義照会を行い、当該処方医において医学的知見に基づき先発医薬品が必要と判断すれば、先発医薬品を調剤することができるものであること。 ただし、処方医に連絡が取れず、やむを得ない場合には、指定薬局から福祉事務所に確認の上、先発医薬品を調剤することができるが、速やかに(遅くとも次回受診時までに)薬剤師から処方医に対し、調剤した薬剤の情報を提供するとともに、次回の処方内容について確認すべきものであること。
  • イ 福祉事務所における取組 上記アの(ア)の場合又は(ウ)の処方医への確認後、再度医学的知見に基づき後発医薬品を使用することができると認められた場合において、指定医療機関又は指定薬局における説明を受けても、なお先発医薬品の使用を希望する患者に対しては、福祉事務所において制度について説明し、理解を求めること。
  

より詳細な内容

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さらに生活保護関係全国係長会議資料(平成30年9月4日(火))に具体的な内容が記載されています。
第3 医療扶助・健康管理支援等について
1 後発医薬品の使用原則化について
生活保護制度における後発医薬品の使用促進については、医療扶助における後発医薬品の使用割合の目標として、2017年央までに75%、2018年度までに80%を掲げている。
生活保護制度では、着実にその使用割合は増加しているところであり、平成29年6月時点で、医療全体よりも使用割合が高くなっている。しかしながら、さらに取組を進めるためには、運用ではなく制度的対応として、後発医薬品の原則化が必要との要望が出されていた。
こういった状況を踏まえ、今般、生活保護法第34条第3項を改正し、生活保護制度においては、医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)が医学的知見に基づき使用を認めている場合に限り、後発医薬品の使用を原則化することとしたものである。
後発医薬品の使用原則化については、平成30年10月1日に施行されるが、これに併せ、①「指定医療機関医療担当規程」(昭和25年厚生省告示第222号)、②「生活保護法による医療扶助運営要領について」(昭和36年9月30日社発第727号厚生省社会 局長通知)及び③「生活保護法による医療扶助運営要領に関する疑義について」(昭和48年5月1日社保発第87号厚生省社会局保護課長通知)を改正し、また、④「生活保護の医療扶助における後発医薬品に関する取扱いについて」(平成25年5月16日社援保発0516第1号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)を廃止し、新たな通知を発出することとしている。それぞれの概要は下記の通りである。
  • ①について
    指定医療機関の医師等、また、指定医療機関である薬局の薬剤師について、医師等が後発医薬品を使用することができると認めた場合について、原則として、後発医薬品により医療の給付を行うことと定める。
  • ②について
    次の事項について地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第1項及び第3 項の規定に基づく処理基準として定める。
    • ア 一般名処方又は銘柄名処方であって後発医薬品の使用を可能とする処方がなされた場合は、下記の通りの取扱いとなるので、指定医療機関及び被保護者に対して周知すること。
      • 原則として後発医薬品が使用されることとなること
      • 指定医療機関に在庫がない場合や、後発医薬品が先発医薬品よりも高価な場合は、先発医薬品を使用することもあり得るものであること(その場合、以降は後発医薬品を使用できるよう体制整備に努めること)
      • 医師等が後発医薬品の使用を可能と判断しているにもかかわらず、先発医薬品の使用を希望する患者に対しては、指定医療機関において説明を行い、理解を求めること
    • イ 上記アの指定医療機関による説明を受けてもなお先発医薬品の給付を希望する患者に対しては、福祉事務所においても、制度について改めて説明を行い、理解を求めること。
  • ③について
    取扱の細則について地方自治法第245条の9第1項及び第3項の規定に基づく処理基準として定める予定であること。
  • ④について
    「生活保護の医療扶助における後発医薬品に関する取扱いについて(課長通知)」は廃止されるが、当該通知で策定を依頼している「後発医薬品使用促進計画」については、記載事項を変更して引き続き策定すべきことを新たな通知の中でお示しする予定である。今後は、医師等が後発医薬品の使用が可能と判断した場合は原則として後発医薬品が使用されることになることから、患者に対する使用促進指導は不要となるが、指定医療機関における在庫状況によって後発医薬品の使用状況に差が生じる可能性があることから、実態把握をした上で取組を進める観点から、計画の策定を求めることになる予定である。
また、指定医療機関及び被保護者に対する制度周知の方法に関しては、既に保護課医療係より発出している事務連絡の通りであるので、添付している様式を参考に作成したリーフレットを使用する等により、適切に実施されたい。
  
  

薬局での対応について

ということで、生活保護受給者に対して、処方箋が後発医薬品変更可能で記載されていれば、本人の希望にかかわらずジェネリック医薬品を使うようになります。
これは若干のトラブルが予想されますね。。。
  

実際の調剤の流れ

処方元の先生に情報提供していない場合は早めにお伝えしておいた方がいいですね。
患者さんが医師と相談して変更不可で処方された場合はしょうがないですが、薬局で「変更不可にしてもらえ」と言われてそれを疑義照会するのもおかしな話な気がします。
が、生活保護法改正による後発医薬品の使用原則化について(生活保護法指定医療機関・指定薬局の皆様へ)(東京都)を見てみると、患者さんが納得できず、「これじゃあ飲めない」という話になったら疑義照会ということになりますね・・・。
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初診アンケートも修正したほうがいいかもしれませんね。
アンケートで「先発医薬品を希望する」と回答したのに、実際に渡すのがジェネリックだったら「トラブル」の元になりそうですよね。
  

先発医薬品を調剤した場合は報告が必要?

資料を見ると、「保護受給者への先発医薬品の調剤状況」の様式例が掲載されています。
先発医薬品を調剤した場合はこの書式を用いて、その理由の報告が必要になりそうですね。
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これについては自治体ごとにどうなるかわからないので連絡待ちですが、おそらくどの自治体でも何らかの形で報告を求めてきそうですね。
  

レセプト摘要欄へも記載が必要?(横浜市)

横浜市のホームページではレセプトへの記載方法が掲載されています。
調剤報酬明細書記載方法(3ページ目です)
処方医が後発医薬品への変更を不可としていない(一般処方名を含みます)場合に、 先発医薬品を調剤した場合に、頭に【先発医薬品を調剤した理由】と記入のうえ、次の3点について例にしたがって摘要欄に記入してください。
  • ①調剤した先発医薬品名
  • ②処方医による処方の種別
    • A:一般名処方
    • B:後発医薬品への変更を可とする銘柄名処方
  • ③先発医薬品を調剤した理由
    • 1:薬局に後発医薬品の在庫がなかったため
    • 2:処方箋中に疑わしい点があることから、指定薬局の薬剤師が薬剤師法第24条に基づく疑義照会を行い、処方医より先発医薬品が必要と判断されたため
    • 3:後発医薬品の薬価が先発医薬品の薬価よりも高くなっている、または先発医薬品の薬価と同額となっている
【例】一般名処方○○○の処方箋について薬局に後発医薬品の在庫がなかったため、先発医薬品△△△を処方した。
→【先発医薬品を調剤した理由】△△△A1
ちょっと・・・、これは・・・めんどくさい
他の自治体もレセ摘への記入を求めてくるんでしょうか?
少なくとも横浜市はこのルールが適応されるということですよね・・・?
  

生活保護受給者への後発使用は体制加算の算定要件からは除外

今回の義務化で後発医薬品調剤体制加算につながる!・・・とは思ったら間違いです。
平成22年度調剤報酬改定に関するQ&A(平成22年3月19日 日本薬剤師会)
Q.調剤基本料および後発医薬品調剤体制加算の適用区分の計算にあたっては、 健康保険法、国民健康保険法及び後期高齢者医療制度に係わる処方せんのみ(これらとの公費併用を含む)が対象であると理解してよいか。たとえば、 公費単独扱いである生活保護に係る処方せんについては、除外して計算するものと理解してよいか。
A.そのとおり。
  
Q.調剤基本料および後発医薬品調剤体制加算の適用区分の計算にあたっては、 健康保険法、国民健康保険法及び後期高齢者医療制度に係わる処方せんのみ(これらとの公費併用を含む)が対象であると理解してよいか。たとえば、 公費単独扱いである生活保護に係る処方せんについては、除外して計算するものと理解してよいか。
A.そのとおり。
  
  

今回の改正について詳しく紹介している自治体などへのリンク

まず、今回の生活保護法改正に伴い変更となった後発医薬品の利用について紹介しているホームページへのリンクをまとめます。
  

都道府県へのリンク

  

市町村へのリンク

  

薬剤師会へのリンク

最後になりますが、薬剤師会が作成しているホームページです。

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