読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

薬剤師の脳みそ~薬局薬剤師の勉強ブログ~

調剤(保険)薬局の薬剤師が脳内で考えていることや仕事の中で得た知識をまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

複数の紹介会社にまとめて登録可能なサイトです。スマホアプリもあるのでおすすめです。

トレシーバ注の用法緩和、ポリドカスクレロール注の適応緩和、献血グロベニン-I静注の適応追加了承〜2016年9月7日医薬品第一部会報告品目⑪

新薬承認情報

平成28年9月7日、厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会が行われました。
その中で報告品目として3製品の適応追加等が挙げられていたいましたが、平成28年9月28日に承認されました。
今回はそれらの内容についてまとめます。
  
  

f:id:pkoudai:20160824005600j:plain
  
  

平成28年9月7日薬食審・医薬品第一部会での審議品目

今回審議され、承認が了承されたのは以下の通りです。

今回は報告品目3つをまとめて説明します。
※報告品目:医薬品医療機器総合機構(PMDA)での承認審査の段階で承認問題なしと結論され、部会での審議は不要とされた製品
  
  

トレシーバ注が必要時に注射時刻を変更可能に

成分名:インスリン デクルデク(遺伝子組換え)

  • トレシーバ注フレックスタッチ
  • トレシーバ注ペンフィル

申請者:ノボノルディスクファーマ
効能・効果の変更内容:「注射時刻は毎日一定とする。」の記載が削除され、「注射時刻は原則として毎日一定とするが、必要な場合は注射時刻を変更できる。」の記載が追加。
  
  

詳しい変更内容

トレシーバフレックスタッチの場合以下のように変更されています。

「通常、成人では、初期は1日1回4~20単位を皮下注射する。注射時刻は毎日一定とする。投与量は患者の状態に応じて適宜増減する。他のインスリン製剤を併用することがあるが、他のインスリン製剤の投与量を含めた維持量は、通常1日4~80単位である。但し、必要により上記用量を超えて使用することがある。注射時刻は原則として毎日一定とするが、必要な場合は注射時刻を変更できる。 通常、小児では、1日1回皮下注射する。注射時刻は毎日一定とする。投与量は患者の状態に応じて適宜増減する。他のインスリン製剤を併用することがあるが、他のインスリン製剤の投与量を含めた維持量は、通常1日0.5~1.5単位/kgである。但し、必要により上記用量を超えて使用することがある。」

  
  

必要時に注射タイミングを調節できる初めての基礎インスリン

これまで基礎インスリンにおいては、注射は毎日一定時間に行うことが原則でした。
今回、トレシーバの用法・用量が変更になったことで、必要時に注射時間を調節可能な基礎インスリンが初めて登場したことになります。
  
「用法及び用量に関連する使用上の注意」には以下のように記載されています。

2.成人では、注射時刻は原則として毎日一定とするが、通常の注射時刻から変更する必要がある場合は、血糖値の変動に注意しながら通常の注射時刻の前後8時間以内に注射時刻を変更し、その後は通常の注射時刻に戻すよう指導すること。注射時刻の変更に際して投与間隔が短くなる場合は低血糖の発現に注意するよう指導すること。

  

調節可能な注射時刻は前後8時間

トレシーバの注射を調節可能な時刻は前後8時間とされています。
これは、臨床試験(NN1250-4060 試験)の設定によるものです。
NN1250-4060 試験では、トレシーバ注の注射時刻を±8 時間の範囲で変更可能とした群(フレキシブル投与法群)と、注射時刻を固定した群とを比較した結果、安全性・有効性に差がないことが示されています。
これにより、トレシーバの用法・用量の変更が申請されました。
  
ただし、

  • 注射時刻を変更あくまでも必要な場合にのみ
  • 8時間以内の変更でも投与感覚が短くなる場合の低血糖リスク上昇は否定できない

ということは注意が必要です。
  

トレシーバについて

トレシーバについては発売前にまとめています。

トレシーバの成分であるインスリンデグルデクは、ヒトインスリンのB鎖30位のスレオニン残基を無くし、B鎖29位のリジン残基にΓグルタミン酸を介して、炭素数16の脂肪酸(ヘキサデカン二酸)を結合させたものです。
これにより、インスリンデグルデク同士が結合しやすくなり、複合体を形成します。
通常、インスリンは6個のインスリンが結合した六量体(ヘキサマー)を形成しますが、インスリンデグルデクはさらにそれが二つ繋がったダイヘキサマー(六量体と六量体)として製剤中に存在します。
さらに、皮下注射後、それらが1000個以上繋がったマルチヘキサマーが形成されます。
もちろんこの状態では血中に移行できず、マルチヘキサマーの端っこからモノマー(単量体)が解離し、少しずつ血中に移行して行きます。
これにより皮下投与されたトレシーバは少しずつ血中に入っていくことになり、ゆっくりゆっくり長い時間をかけて効果を発揮していきます。
血中でのアルブミン結合率の高さも作用の持続に寄与しています。
  
  

ポリドカスクレロール注の適応制限一部撤廃

成分名:ポリドカノール

  • ポリドカスクレロール1%注2mL
  • ポリドカスクレロール3%注2mL

申請者:カイゲンファーマ
効能・効果の変更内容:「一次性下肢静脈瘤(伏在静脈瘤の本幹を除く)の硬化退縮」から「伏在静脈瘤の本幹を除く」の文言が削除され、「一次性下肢静脈瘤の硬化退縮」に変更。
追加された用法・用量:「フォーム硬化療法で使用する場合」などが追加記載
※ポリドカスクレロール0.5%注2mLについては変更なし(「伏在静脈瘤の本幹を除く」は残ったまま)
  
  

詳しい変更内容

用法・用量の詳しい変更内容は以下の通りです。
ポリドカスクレロール1%注2mLとポリドカスクレロール3%注2mLの部分が同じように変更されています。

液状硬化療法で使用する場合:
直径1mm以上3mm未満の一次性下肢静脈瘤を対象に、1穿刺あたり0.5~1mLを基準として静脈瘤内に1箇所又は2箇所以上投与する。なお、1回の総投与量はポリドカノールとして2mg/kg以下とする。1回の処置で治療が終了しない場合、次回の投与は原則として1週間後とする。
フォーム硬化療法で使用する場合:
小型の一次性下肢静脈瘤を対象に、静脈瘤内に1箇所又は2箇所以上投与する。1穿刺あたりの最大投与量は、対象となる静脈瘤の大きさに応じてフォーム硬化剤として2~6mLとする。なお、1回の総投与量はポリドカノールとして2mg/kg以下、かつ、フォーム硬化剤として10mL以下とする。1回の処置で治療が終了しない場合、次回の投与は原則として1週間後とする。

  
  

ポリドカノールの働き

ポリドカノールは非イオン性の界面活性剤です。
細胞膜を溶解することで、血管内皮細胞を障害し、内皮皮下組織を露出させ、圧迫することにより過剰な血栓形成を抑制、繊維化を進めます。
その結果、下肢静脈瘤の退縮を進めることができます。
  
    

献血グロベニン-I静注用にギラン・バレー症候群の適応が追加

成分名:乾燥ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン

  • 献血グロベニン-I静注用500mg
  • 献血グロベニン-I静注用2500mg
  • 献血グロベニン-I静注用5000mg

申請者:日本製薬
追加された効能・効果:「ギラン・バレー症候群(急性増悪期で歩行困難な重症例)」
追加された用法・用量:「ギラン・バレー症候群:通常、1日に人免疫グロブリンGとして400mg(8mL)/kg体重を5日間連日点滴静注する。」
  
化血研の献血ベニロン-I静注用(成分名:スルホ化人免疫グロブリンG)にも同適応があります。
今回の適応追加は、ギラン・バレー症候群の治療選択肢を増やすことで、安定供給できるようにするためのものだそうです。