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薬剤師の脳みそ~薬局薬剤師の勉強ブログ~

調剤(保険)薬局の薬剤師が脳内で考えていることや仕事の中で得た知識をまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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エビリファイに小児自閉スペクトラム症に対する適応拡大の承認が了承〜2016年9月7日医薬品第一部会審議品目⑦

新薬承認情報

平成28年9月7日、厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会で10製品の承認が審議され、すべて了承されました。
今回は、審議が行われた品目の中から、エビリファイ(成分名:アリピプラゾール)の小児自閉スペクトラム症に対する適応拡大についてまとめます。
なお、エビリファイへの「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」の」適応は平成28年9月28日に承認されました。
  
  

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平成28年9月7日薬食審・医薬品第一部会での審議品目

今回審議され、承認が了承されたのは以下の通りです。

一つずつまとめていきたいと思います。
  
  

エビリファイの小児自閉スペクトラム症に対する適応の承認を了承

成分名:アリピプラゾール

  • エビリファイ錠1mg
  • エビリファイ錠3mg
  • エビリファイ錠6mg
  • エビリファイ錠12mg
  • エビリファイOD錠3mg
  • エビリファイOD錠6mg
  • エビリファイOD錠12mg
  • エビリファイ散1%
  • エビリファイ内用液0.1%

申請者:大塚製薬
追加される効能・効果:「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性(小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の場合 原則として6歳以上18歳未満の患者に使用すること。
)」
追加される用法・用量:「通常、アリピプラゾールとして1日1mgを開始用量、1日1〜15mgを維持用量とし、1日1回経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、増量幅は1日量として最大3mgとし、1日量は15mgを超えないこと。」
  
海外では数カ国でこの適応で承認されています。
  
以下の規格・剤形には適応追加はありません。
用法・用量からして当然ですね。

  • エビリファイOD錠24mg
  • エビリファイ持続性水懸筋注用300mg
  • エビリファイ持続性水懸筋注用400mg
  • エビリファイ持続性水懸筋注用300mgシリンジ
  • エビリファイ持続性水懸筋注用400mgシリンジ

  
  

自閉スペクトラム症とその易刺激性とは?

自閉スペクトラム症

自閉スペクトラム症(ASD:Autistic Spectrum Disorder)とは発達障害の一つです。
かつては、自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害と呼ばれていた疾患を含む名称です。
アメリカ精神医学会が2013年に出版し、精神科領域の国際的な診断基準の使用されている「精神障害の診断と統計マニュアル第5版」(DSM-5)において定義されているもので、「社会的コミュニケーションの障害」、「対人的相互反応の障害」、「限局的反復行動」が特徴とされています。
スペクトラム(連続体)という名称は、これまで様々な疾患に分けていたものでも、一つ一つの線引きが曖昧であることから、一つの連続体(スペクトラム)として捉えるべきだという考えに基づいているようです。
  

自閉スペクトラム症における易刺激性

自閉性障害には上にあげた特徴以外にも易刺激性などの周辺症状があります。
易刺激性には、自傷行為や攻撃性、かんしゃくなどの症状が挙げられます。
  
自閉スペクトラム症に限った話ではありませんが、精神障害においては本人だけでなく、それを支える家族や周りの人々の精神的な健康も問題となってきます。
自閉スペクトラム症を持つ家族の方の精神的・肉体的な負担はかなりのものだと思います。
易刺激性のような症状を緩和することで、周辺の人々の精神的負担が軽減できますし、その結果、本人が社会的に溶け込み成長していく助けになるのではないかと思います。
  
  

自閉性障害に適応を持つ薬剤

現時点で小児の自閉性障害や自閉スペクトラム症に対する適応を持つ薬にはオーラップ(成分名:ピモジド)とリスパダール(成分名:リスペリドン)があります。
エビリファイも加えて簡単にまとめておきます。
  
  

オーラップ

成分名:ピモジド

  • オーラップ錠1mg
  • オーラップ錠3mg
  • オーラップ細粒1%

効能・効果:「小児の自閉性障害、精神遅滞に伴う下記の症状」

  • 動き、情動、意欲、対人関係等にみられる異常行動
  • 睡眠、食事、排泄、言語等にみられる病的症状
  • 常同症等がみられる精神症状

用法・用量:「ピモジドとして通常小児には、1日1回1日量1~3mgを経口投与する。年齢、症状により適宜増減するが、1日量6mgまで増量することができ、場合により1日2回に分割投与することもできる。なお、本剤投与により安定した状態が得られた場合、適当な休薬期間を設け、その後の投薬継続の可否を決めること。」
  
いわゆる定型抗精神病薬(第一世代抗精神病薬)に分類されます。
ピモジドはドパミンD2受容体を選択的かつ強力に遮断します。
セロトニン5-HT2A受容体の遮断作用もありますが、ドパミンD2受容体の遮断作用と比較すれば弱いものです。
ドパミンの働きを強く抑えることで不安感や緊張感、意欲の低下などの陽性症状を改善させますが、催眠、鎮静作用は弱いとされています。
ピモジドが小児の自閉性障害に効果を発揮するのは、ドパミンの働きを抑えることにより、衝動性や攻撃性を抑えることができるためです。
  
第一世代の抗精神病薬の特徴として、第二世代以降と比較して、ドパミン神経系由来の副作用が多いことがあります。
代表的なものとして以下のものがあります。

  • 錐体外路障害(EPS:Extra Pyramidal Symptom)
  • 高プロラクチン血症
  • 悪性症候群(NMS:Neuroleptic Malignant Syndrome)

また、ピモジド特有のものとして、QT延長の副作用があり、そこに影響を与える既往等は禁忌となっています。
さらに、CYP3A4で代謝を受けるため、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、リトナビルをはじめ、CYP3A4を阻害する薬はほぼ全て禁忌となります。
CYP3A4に影響を与える薬物は日常的に使用される薬剤にも多く存在し、通常の薬剤であれば併用注意であるような組み合わせでもピモジドの場合は禁忌となっているので注意が必要です。
新人の頃、ピモジドには触れたことがありませんでしたが、相互作用を勉強する中で、覚えていった記憶があります。
  
  

リスパダール

成分名:リスペリドン

  • リスパダール錠1mg
  • リスパダール錠2mg
  • リスパダール錠3mg
  • リスパダール細粒1%
  • リスパダールOD錠0.5mg
  • リスパダールOD錠1mg
  • リスパダールOD錠2mg
  • リスパダール内用液1mg/mL

効能・効果:「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」
効能又は効果に関連する使用上の注意:「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に本剤を使用する場合は、原則として5歳以上18歳未満の患者に使用すること。」
用法・用量:

  • 体重15kg以上20kg未満の患者:通常、リスペリドンとして1日1回0.25mgより開始し、4日目より1日0.5mgを1日2回に分けて経口投与する。症状により適宜増減するが、増量する場合は1週間以上の間隔をあけて1日量として0.25mgずつ増量する。但し、1日量は1mgを超えないこと。
  • 体重20kg以上の患者:通常、リスペリドンとして1日1回0.5mgより開始し、4日目より1日1mgを1日2回に分けて経口投与する。症状により適宜増減するが、増量する場合は1週間以上の間隔をあけて1日量として0.5mgずつ増量する。但し、1日量は、体重20kg以上45kg未満の場合は2.5mg、45kg以上の場合は3mgを超えないこと。

  
陰性症状に効果を発揮する非定型抗精神病薬(第二世代抗精神病薬)です。
強力なドパミンD2受容体阻害作用に加え、セロトニン5-HT2受容体の阻害作用も併せ持つためSDA(Serotonin-Dopamine Antagonist)と呼ばれています。
ドパミンD2受容体阻害作用による幻覚や妄想など陽性症状の緩和だけでなく、セロトニン5-HT2受容体阻害作用による無感情や意欲低下などの陰性症状の緩和も期待できます。
衝動性や攻撃性を抑える鎮静作用を持つため、「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」に対する効果が期待できます。
  
リスペリドンの作用部位はドパミンD2受容体<セロトニン5-HT2受容体となっています。
セロトニン5-HT2受容体阻害作用はドパミンD2受容体阻害作用が原因として起こるEPS等の副作用を軽減させるのですが、リスペリドンはそれにも増してドパミンD2受容体阻害作用が強力なため、非定型抗精神病薬の中ではドパミン神経系由来の副作用が起こりやすくなっています。
さらに、ヒスタミンH1受容体遮断作用とセロトニン5-HT2C受容体遮断作用により、満腹中枢への刺激を弱めてしまうことによる、食欲増進・体重増加の副作用で使いにくくなる場合もあります。
  
  

エビリファイ

成分名:アリピプラゾール
新しいタイプの非定型抗精神病薬(第三世代抗精神病薬)です。
主にドパミンD2受容体の部分作動薬(パーシャルアゴニスト)として働くことに加えて、前シナプスにおいてドパミン自己調節受容体(オートレセプター)に結合することでドパミン放出量を調節する作用も持っています。
そのため、ドーパミンシステムスタビライザー(DSS:Dopamine System Stabilizar)と呼ばれています。
さらに、セロトニン受容体に対しても効果を発揮し、セロトニン5-HT1A受容体の部分作動薬(パーシャルアゴニスト)、セロトニン5-HT2A受容体の遮断薬としての作用も有しています。
これらの作用により、陽性症状のみでなく、陰性症状にまでバランスよく効果を発揮出来ると言われています。
  
ピモジドやリスペリドンと比較して、ESP等のドパミン神経系由来の副作用が少なく、体重増加等も起こりにくいとされています。
そのため、小児に対する使用でも認容性の問題をクリアすることができる大きな選択肢になるのではないでしょうか?
  
  

リスパダールとエビリファイの適応の違い

「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」に対する適応を持つのがリスパダールとエビリファイの2つになりました。
リスパダールが平成28年2月、エビリファイが平成28年9月と比較的違いタイミングでの適応追加です。
どちらとも非定型抗精神病薬ではありますが、その性質は異なります。
ですので、双方の切り替えを行うケースもあると思いますが、用法用量等に細かい違いがあるので注意が必要です。
エビリファイは「6歳以上18歳未満」への適応となっていますが、リスパダールは「原則5歳以上18歳未満」となっています。
また、エビリファイは体重による縛りはありませんが、リスパダールは「15kg以上20kg未満の患者」と「20kg以上の患者」で用量が異なります。
適応上の違いも把握しておかないといけませんね。