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薬剤師の脳みそ~薬局薬剤師の勉強ブログ~

調剤(保険)薬局の薬剤師が脳内で考えていることや仕事の中で得た知識をまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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シグニフォーLAR筋注用キット〜2016年8月4日医薬品第一部会審議品目③

新薬承認情報

平成28年8月4日、厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会で6製品の承認が了承されました。
今回は、審議が行われた品目の中から、シグニフォーLAR筋注用キットについてまとめます。
新たなSSTRサブタイプに親和性を持つ、ソマトスタチンアナログ製剤です。
なお、シグニフォーLAR筋注用キットは平成28年9月28日に製造販売が承認されました。
  
  

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平成28年8月4日薬食審・医薬品第一部会での審議品目

今回審議され、承認が了承されたのは以下の通りです。

一つずつまとめていきたいと思います。
  
  

シグニフォーLAR筋注用キット

成分名:パシレオチドパモ酸塩

  • シグニフォーLAR筋注用キット20mg
  • シグニフォーLAR筋注用キット40mg
  • シグニフォーLAR筋注用キット60mg

申請者:ノバルティスファーマ
効能・効果:下記疾患における成長ホルモン、IGF-I(ソマトメジン-C)分泌過剰状態及び諸症状の改善 先端巨大症・下垂体性巨人症(外科的処置いで効果が不十分又は施工が困難な場合)
用法・用量:通常、成人にはパシレオチドとして40mgを4週毎に3ヶ月間、臀部筋肉内に注射する。その後は患者の病態に応じて、20mg、40mg、60mgを4週毎に投与する。
  
欧米など40カ国でsigniforとしてすでに承認済です。
  
  

先端巨大症と下垂体性巨大症

先端巨大症と下垂体性巨大症ともに、脳下垂体前葉のGH分泌細胞が腫瘍化することを原因とする疾患です。
腫瘍化したGH分泌細胞は成長ホルモン(GH:Growth Hormoneの過剰分泌を起こします。
GHはインスリン様成長因子-1(IGF-1:Insulin like Growth Factors-1、ソマトメジン-C)の分泌を促します。
GHの直接的な作用、IGF-1を介した作用により、手足や内臓、顔の一部分が肥大化等の症状が引き起こされます。
その症状から巨人症、または、末端肥大症(アクロメガリー:acromegaly)と呼ばれることもあります。
  

先端巨大症と下垂体性巨大症の違い

二つの疾患の違いはその発症時期です。
成長期の骨と骨の間には、軟骨等の組織が詰まった骨端線と呼ばれる部分があります。
骨端線は成長ホルモンの刺激により、どんどん増殖していきます。
これにより、成長期に長骨が伸び、身長が伸びていくというわけです。
成長期が終わる18歳くらいになると、骨端線は消えてしまいます。
  
この骨端線が存在する時にGHの過剰分泌が生じるのが「下垂体性巨人症」です。
下垂体性巨人症の場合、成長期の骨の伸長が過剰に促進されてしまうため、2メートルを超えるような高い身長になることがあります。
  
  

ソマトスタチンアナログ製剤

先端巨大症ならびに下垂体性巨大症の治療は、その原因となっている下垂体腫瘍を外科的に切除することが必要ですが、それが困難な場合には、薬物療法が行われることになります。
下垂体の腫瘍からのGHの過剰分泌を抑制するために、ソマトスタチンアナログが使用されます。
  
  

ソマトスタチンとSSTR

ソマトスタチンアナログ製剤はソマトスタチン受容体(SSTR:SomatoSTatin Receptor)と結合することで、GH産生抑制等の効果を発揮します。
SSTRには5つのサブタイプが報告されています。
SSTR2とSSTR5は種々のホルモンに対する抗分泌作用に関与しており、先端巨大症と下垂体性巨大症の腫瘍表面にはSSTR2とSSTR5の両方が発現していると言われています。
また、SSTR1、SSTR2、SSTR3、SSTR5は抗腫瘍効果に関与していると考えられています。
  
  

従来のソマトスタチンアナログ製剤

現在、日本国内で使用されているソマトスタチンアナログ製剤には以下のものがあります。

  • サンドスタチン皮下注用(成分名:酢酸オクトレオチド)
  • サンドスタチンLAR筋注用(成分名:酢酸オクトレオチド)
  • サンドスタチンLAR筋注用キット(成分名:酢酸オクトレオチド)
  • ソマチュリン皮下注(成分名:ランレオチド)

いずれもSSTR2、SSTR5(主にSSTR2)に結合することで、GHの分泌を抑制することが可能です。
※サンドスタチンLAR筋注用は製造中止(2017年3月末までの経過措置)
  
  

パシレオチド

パシレオチドはSSTR1、SSTR2、SSTR3、SSTR5の4種類のサブタイプに対して親和性を持つ新しいタイプのソマトスタチンアナログ製剤になります。
従来のソマトスタチンアナログ製剤と比較して、より安定的に成長ホルモンとIGF-1を抑制することで、優れた効果を発揮できるようです。
ですが、従来の製剤と比較して、高血糖関連の副作用が多いことが報告されているので、その点を注意する必要があります。
  

長時間作用型の徐放性製剤

シグニフォーLAR筋注用キットはその名前からわかるように、サンドスタチンLAR筋注用(キット)と同様の徐放製剤です。
サンドスタチンでは通常の筋注が1日2〜3回の皮下注が必要なのに対し、LAR筋注では4週間に1回の筋肉内注射で済みます。
(皮下注は在宅自己注が行いやすいというメリットがありますが)
LARはLong Acting Repeatableの略称で、マイクロスフェア(マイクロカプセル)の中に、 有効成分を封じ込めた製剤です。
生体内でマイクロスフェアが少しずつ加水分解されるのに合わせて、有効成分が徐々に放出されるため、安定した効果を持続することを可能とした徐放製剤です。
  
  

まとめ

パシレオチドは従来のソマトスタチンアナログ製剤とは異なるSSTRサブタイプに結合することにより、より優れた効果を発揮することが期待されます。
ですが、新しい受容体に作用するということは、従来製剤では見られなかった副作用の可能性もあるため、注意が必要ということになります。
SSTR5への親和性の高さからクッシング症候群に対する治験も行われている(海外では承認済)ようなので、今後はそう言った製剤が登場してくることが期待されますね。