薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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四国厚生局が平成26年度に実施した個別指導において保険医療機関等に改善を求めた主な指摘事項を公開

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四国厚生局が平成26年度に実施した個別指導において保険医療機関等に改善を求めた主な指摘事項を公開しています。
基本的なことからなかなか厳しいなあといったところまで、様々な内容が挙げられています。
自身の薬局業務を見直すいい機会なので、目を通しておきたいところですね。


四国厚生局が公開しているファイルのリンクは下記です。
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/shikoku/chosa/documents/h26yaku.pdf

気になった部分を挙げていきます。

Ⅰ 調剤等に関する事項
1 処方せん
(2)処方せんの「処方」欄の記載不備
・外用薬の使用部位に係る記載がない。

外用の部位については今さらといったところもあるかと思いますが、まだまだ記載されていないケースも多く見られます。
近隣の処方せん発行医療機関には積極的に情報提供を行っていきたいところです。

Ⅰ 調剤等に関する事項
1 処方せん
(3)処方内容に関する薬学的確認
②薬学的に見て、処方内容に問題が疑われるにもかかわらず、処方医への疑義紹介が行われていない事例が見られたので、積極的に疑義紹介を行うこと。
ア 薬剤の処方内容より禁忌例へのしようが疑われるものの例
・心機能不全が疑われる患者に対するソレトン錠80
・慢性肝疾患に対するリウマトレックスカプセル2mg
・緑内障に対するレンドルミン錠0.25mg

ソレトンの添付文書を見ると・・・

禁忌
(5)重篤な心機能不全のある患者 [心機能不全をさらに悪化させるおそれがある。]


リウマトレックスの添付文書は・・・

禁忌
4.慢性肝疾患のある患者[副作用が強くあらわれるおそれがある。]


レンドルミンは・・・

禁忌
(1)急性狭隅角緑内障のある患者 [眼内圧を上昇させるおそれがある。]


禁忌なんですから当然ですね。

Ⅰ 調剤等に関する事項
1 処方せん
(3)処方内容に関する薬学的確認
②薬学的に見て、処方内容に問題が疑われるにもかかわらず、処方医への疑義紹介が行われていない事例が見られたので、積極的に疑義紹介を行うこと。
イ 薬事法による承認内容と異なる用法・用量で処方されているものの例
・エパデールS900 900mg 1包 1日1回夕食後
・アレロックOD錠5 5mg 2錠 1日2回朝夕食後
・テオドール錠100mg 2錠 1日2回朝夕食後

エパデールは食直後、アレロックとテオドールは朝食後•就寝前が適切な用法となります。

Ⅰ 調剤等に関する事項
1 処方せん
(3)処方内容に関する薬学的確認
②薬学的に見て、処方内容に問題が疑われるにもかかわらず、処方医への疑義紹介が行われていない事例が見られたので、積極的に疑義紹介を行うこと。
ウ 薬事法による承認内容と異なる効能効果(適応症)での処方が疑われるものの例
・ベーチェット病に対するコルヒチン錠0.5mg「タナカ」
・便秘に対するサイトテック錠200
・統合失調症に対するマイスリー錠5mg

ベーチェット病に対するコルヒチンは使用目的を知っているとなかなか疑義紹介が難しいかもしれません・・・。
便秘に対するサイトテックも適応外使用なのですが、これは納得。
統合失調症に対するマイスリーは、効能・効果が

不眠症(統合失調症及び躁うつ病に伴う不眠症は除く)

となっているんだからしょうがないですよね。

Ⅰ 調剤等に関する事項
1 処方せん
(3)処方内容に関する薬学的確認
②薬学的に見て、処方内容に問題が疑われるにもかかわらず、処方医への疑義紹介が行われていない事例が見られたので、積極的に疑義紹介を行うこと。
オ 重複投与が疑われるものの例
・アムロジピンOD錠5mg「サンド」とカデュエット配合錠4番
・アムロジピン錠5mg「明治」とアゼルニジピン錠16mg「テバ」
・アダラートCR錠10mgとノルバスク錠5mg

CCBの併用に関して重点的に指摘されていますね。
異なるCCB同士の併用については疑義紹介が必要な気もしますが、カデュエットとアムロジピンについては用量範囲でも確認が求められるという解釈でいいんでしょうか?

Ⅰ 調剤等に関する事項
1 処方せん
(3)処方内容に関する薬学的確認
②薬学的に見て、処方内容に問題が疑われるにもかかわらず、処方医への疑義紹介が行われていない事例が見られたので、積極的に疑義紹介を行うこと。
カ 漫然と長期にわたり処方されているものの例
・モサプリドクエン酸塩錠5mg「ファイザー」
・月余にわたる25mgアリナミンF糖衣錠とビタメジン配合カプセルB25
・月余にわたり投与されたメチコバール錠500μg

モサプリド(先発名:ガスモチン)の漫然投与についてはよく言われるものですよね。
添付文書にも以下のように記載されています。

使用上の注意
重要な基本的注意
2.劇症肝炎や重篤な肝機能障害、黄疸があらわれることがあるので、長期にわたって漫然と投与しないこと。


アリナミンについては、

効能・効果
ビタミンB1欠乏症の予防及び治療、ビタミンB1の需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給、ウェルニッケ脳症、脚気衝心以外の効能・効果に対して、効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでない。


ビタメジンについては、

効能・効果
註:効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでない。


メチコバールについては、

〈効能・効果に関連する使用上の注意〉
本剤投与で効果が認められない場合、月余にわたって漫然と使用すべきでない。

と添付文書に記載してあります。

定期的な効果の確認は必須ですし、効果が疑われる場合は疑義紹介を行う必要があります。

Ⅰ 調剤等に関する事項
1 処方せん
(3)処方内容に関する薬学的確認
②薬学的に見て、処方内容に問題が疑われるにもかかわらず、処方医への疑義紹介が行われていない事例が見られたので、積極的に疑義紹介を行うこと。
キ 薬学的に問題があると思われる多剤併用が認められるものの例
・ビオフェルミンR散とホスミシンドライシロップ400
・高尿酸血症の患者に対するナトリックス錠1
・タケプロンOD錠15、リウマトレックスカプセル2mg及びタクロリムスカプセル1mg「ファイザー」

ビオフェルミンR散の効能・効果は

【効 能 ・ 効 果】
下記抗生物質、化学療法剤投与時の腸内菌叢の異常による諸症状の改善
ペニシリン系、セファロスポリン系、アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ナ リ ジ ク ス 酸 

となっているので、ホスホマイシン系のホスミシンとの併用は認められません。

ナトリックスの添付文書を見ると

■使用上の注意
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
(5)本人又は両親、兄弟に痛風、糖尿病のある患者〔高尿酸血症、高血糖をきたし、痛風、糖尿病の悪化や顕在化のおそれがある。〕

とあることから、疑義紹介が必要ですね。

メトトレキサートとタクロリムスはどちらも免疫抑制作用を持つことから、お互いの作用を増強させる危険性があります。
さらに、タケプロン(一般名:ランソプラゾール)をはじめとするPPI(プロトンポンプインヒビター)はメトトレキサート(リウマトレックス)やタクロリムスの血中濃度を上昇させることから、その危険性はさらに膨らみ、副作用を増強させる危険があります。

Ⅰ 調剤等に関する事項
3 処方せん、調剤録の保管
処方せん・調剤録の整理について、処方せんが複数枚にまたがる場合は、すべての処方せんと調剤録を一体のものとして整理し、保管すること。

複数ページに渡る処方箋を保存するときはのりやテープで処方箋を貼り付けて一つにまとめましょう。

Ⅱ 調剤技術料に関する事項
1 調剤料
調剤料の算定点数に次の不適切な例が認められたので改めること。
・処置薬を調剤した場合について算定している。

処置薬については以前の記事に書いたことがありました。
検査・処置・手術に使用する薬剤の院外処方について - 薬剤師の脳みそ

Ⅱ 調剤技術料に関する事項
2 調剤料又は調剤技術料に係る加算
(1)一包化加算
〇一包化加算について、次の不適切な例が認められたので、算定要件を十分に認識し適切に取り扱うこと。
・保険薬剤師が一包化の必要を認め、調剤録等に医師の了解を得た及びその理由を調剤録等に記載していない。

医師の了解を得たことはもちろんですが、薬剤師自身が必要と認めた旨の記載が必要です。

Ⅱ 調剤技術料に関する事項
2 調剤料又は調剤技術料に係る加算
(2)自家製剤加算
〇自家製剤加算について、次の不適切な例が認められたので、算定要件を十分に認識し適切に取り扱うこと。
・自家製剤を行った場合、調剤録に製剤工程を記載していない。

これも以前から言われていることですね。
もし、調剤録に記録を残していないという薬局があれば、これを機に見直しましょう。
薬歴にも残すように指摘されるケースがあったような?

Ⅲ 薬学管理料に関する事項
1 薬剤服用歴管理指導料
(2)薬剤服用歴の記録等の保存・管理(電磁的保存の場合)
〇電磁的な保存において、次の不適切な事項が認められたので改めること。
ア 真正性について
・パスワードの有効期限については、最長でも2ヶ月以内とすること。
イ 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠するように改め、パスワードの有効期限(最長でも2ヶ月以内)を設定すること。

今回、一番驚いたのがこの部分です。
皆さん、電子薬歴のパスワードは更新を行っていますか?
二ヶ月どころかパスワードの変更は一回も行ったことがないと言う薬局がほとんどな気がします。
これを機会にパスワードの更新を行いましょう!

Ⅴ その他
2 関係法令の理解
被保険者証(受給資格者証)のコピーを取得し保存することは、個人情報保護の観点から好ましくないので改めること。

保険証のコピーは取るべきではない。
これについては周知されていることと思ってはいますが、レセプト業務をスムーズに進めていこうとする中で行っている薬局も少なくないのではないかと思います。
こういった機会に再度見直す必要がありますね。


いろいろありましたが、皆さんの薬局ではいかがでしょうか?
この機会にいろいろ見直してみましょう。

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