薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
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タプコム配合点眼液発売開始

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参天のMRさんが資料を持ってきました。
タプコム配合点眼液?
あれ?まだ発売してなかったんだっけ?


平成25年9月20日付で承認されていました。

承認から薬価収載まで時間が空きすぎて忘れかけていました。
発売まで一年以上かかった理由を聞いてみましたが、特別何か問題があったわけではないようです。

プロスタグランジンF2α誘導体 タプロス0.0015%(一般名:タフルプロスト)とβ遮断薬 チモプトール点眼液0.5%(一般名:チモロール)の配合剤です。

PG関連薬とβブロッカー配合点眼薬のメリット

緑内障では、眼圧が高まることにより、視神経が損傷を受け、視野が徐々に欠けていきます。
損傷を受けた視神経を回復させることは難しいため、眼圧を低下させることが緑内障治療の方針となります。

その中で、第一選択薬、第二選択薬として使用されているのが、PG関連薬とβ遮断薬です。
PG関連薬は副経路からの眼房水流出を促進、β遮断薬のチモロールは眼房水の産生を抑制します。

これらのうちどちらか1剤だけで眼圧コントロールを維持するには限界があり、2剤併用されることが多いです。
ですが、どの点眼薬にも言えることですが、2剤を続けて点眼すると、薬剤が十分に吸収される前に、涙嚢から薬液があふれ出してしまうため、点眼間隔を5分間以上空けて使用しなくてはなりません。
ですが、この5分間の待ち時間のせいで2剤目の点眼を忘れたり、点眼が面倒くさくなる等、コンプライアンス低下を招く場合があります。

感覚を置いて2種類を点眼する不便さから解消されることで、コンプライアンス低下を防ぐことが期待できます。
このように点眼薬の配合剤はコンプライアンスの維持において、内服配合剤以上のメリットがあると言えます。
その中でもPG関連薬とβ遮断薬という第一・第二選択薬の組み合わせは非常に効率のよいものとなっています。

タプコム配合点眼薬の特徴

タプコム配合点眼薬の特徴としてpHがあります。
PG関連薬は1日1回で使用するのに対して、β遮断薬であるチモロールは1日2回での使用となっています。
(ゲル化など製剤的に工夫を行っているものは除く)
ですが、PG関連薬は1日2回で使用することで受容体のダウンレギュレーションを引き起こし、効果を減弱させてしまうため、PG/β遮断薬配合点眼剤においてはチモロールの点眼回数が減ってしまうという欠点があります。
ですが、コンプライアンスの低下を防げることを踏まえれば、2剤併用とほぼ同等の効果ということで使用されているのが現状です。

また、PG関連薬の安定性を維持するためにチモプトール点眼薬に比べてpHが低めになっている配合剤が多かったのですが、タプコム配合点眼薬においてはpHをチモプトールに近づけ、薬剤の移行性を上げることで効果を高めているようです。
これにより、1日1回の使用でも2剤併用に近い効果を発揮できるというのが特徴です。
結果、タプコムは配合点眼液で初めて、2剤併用よりも高い眼圧効果のデータを持っています。

pHを変更した製剤でも室温保存を維持できています。
(チモロールの性質により遮光保存ではあります)

薬価は1,060円/mL、1本2.5mLなので2,650円/瓶となりますね。
タプロスの薬価が985.20円/mL、チモプトール点眼液0.5%が337.20円/mL、チモロール後発品0.5%が91.60円/mLなので、先発なら3,306円/2.5mL、後発なら2,692円となるので、後発利用時とほぼ同じ値段ということです。

また、配合剤ですが、チモロールの用法が異なるため、新薬扱いとなり投与日数制限があります。
2015年11月末までは14日分までということなので、実質1瓶までといったところでしょうか?
(2015年12月1日からは日数制限解除)

配合点眼薬のまとめ

配合点眼薬をまとめておきます。

PG関連薬+β遮断薬

  • ザラカム配合点眼液:ラタノプロスト+チモロール(キサラタン点眼液0.005%+チモプトール点眼液0.5%)
  • デュオトラバ配合点眼液:トラボプロスト+チモロール(トラバタンズ点眼液0.004%+チモプトール点眼液0.5%)
  • タプコム配合点眼液:タフルプロスト+チモロール(タプロス点眼液0.0015%+チモプトール点眼液0.5%)

CA阻害薬+β遮断薬

  • コソプト配合点眼薬:ドルゾラミド+チモロール(トルソプト点眼薬1%+チモプトール点眼液0.5%)
  • アゾルガ配合懸濁性点眼薬:ブリンゾラミド+チモロール(エイゾプト懸濁性点眼薬1%+チモプトール点眼液0.5%)


最後に

今後の点眼配合剤ですが、ルミガン点眼薬0.03%(一般名:ビマトプロスト)とチモプトール点眼液0.5%の配合剤はガンフォート配合点眼液としてすでに海外では発売されていますので、近いうちに日本にも登場しそうな気がしますね。

PGとβblockerの配合点眼薬。
個人的にはあまりしっくりこないので、PG関連薬+アゾルガが一番の組み合わせかなと思っています。
アゾルガって唯一、元の薬剤と用法が同じ配合点眼薬なんですよね。
(そのため新薬扱いとならず、投与制限もなかった)

PG関連薬は夜の使用が適しているって話ですが、β遮断薬は夜間はあまり効果が発揮されず、朝の使用が適しているという話です。
この矛盾点があるし、用法の違いもあるので、その二つを無理やり合わせたものを使用しなくてもなあって気はしています。
PG関連薬とβblockerの2つを使用していてCA阻害薬を使用していない場合、どうしても点眼忘れがあるなら・・・って感じでしょうか。
まあ、2剤併用と同等と考えるからいけないんで、PG+αと思えばいいんでしょうけど。

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