薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
2020年11月からURLが変更となりました。(新URL https://yakuzaishi.love)
  

ソブリアードにブルーレター発出

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(ここからが記事本文になります)

平成26年10月24日、C型肝炎治療薬であるNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤ソブリアードカプセル(一般名:シメプレビル/SMV)にブルーレター(安全性速報)が発出されました。
PEGインターフェロン(PEG-IFN)、リバビリン(RBV)と組み合わせた3剤併用療法(SMV/PEG-IFN/RBV)は、現在、C型肝炎治療の第一選択とされています。

下記がPMDAに掲載されているブルーレターへのリンクです。
http://www.info.pmda.go.jp/kinkyu_anzen/file/kinkyu20141024_5.pdf
すでに報道もされています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141024-00000083-mai-soci
  
※副作用に関する記載を中心とした記事ですが、あくまでも医療従事者を対象とした記事です。副作用の追加=危険な薬剤というわけではないのがほとんどです。服用に際して自己判断を行わず医療従事者の指示にしたがってください。
  
  

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急激な血中ビリルビンの上昇による死亡例

期間:2013年12月6日~2014年10月10日
ソブリアード服用中に血中ビリルン値が著しく上昇し、肝機能障害、腎機能障害等を発現、死亡に至った症例が3例報告されています。

中止後にも症状の悪化が見られるケースがあるので、薬剤を中止した後も状態の観察が重要です。

症状のチェック

血中ビリルビンの上昇に伴う黄疸(眼球・皮膚の黄染、褐色尿)、全身倦怠感のチェックが早期発見のポイントになります。
また、薬剤中止後も、患者さん自身に症状をチェックしてもらうよう指導する必要があります。

シメプレビルによる血中ビリルビン上昇の機序

シメプレビルが、血管から肝臓へビリルビンを取り込んだり、肝臓から胆汁中へのビリルビン排泄に関わる輸送タンパク質を阻害することによるのではないかと予想されています。
症例を見るとDLSTで陽性を示しているケースもあるようです。

ソブリアードによるビリルビン上昇

ソブリアードの添付文書を見てみるとわかるように、元々、ビリルビンの上昇は知られています。

重要な基本的注意
3. 本剤投与時に血中ビリルビン値の上昇が報告されているので、本剤投与中は血中ビリルビン値、肝機能検査値、患者の状態を十分に観察し、肝機能の悪化が認められた場合には適切な処置を行うこと。

その他の副作用
3. 肝胆道系障害
 10%以上
 血中ビリルビン増加
6. 臨床検査
 5%以上10%未満
 高ビリルビン血症

添付文書の改訂

今回、ブルーレターの発出と共に、下記のように添付文書の改訂が求められています。

[警告]の項に追記

「本剤投与により血中ビリルビン値が著しく上昇し、肝機能障害、腎機能障害等を発現し、死亡に至った症例が報告されているので、次の事項に注意すること。
(1)本剤投与中は定期的に血中ビリルビン値を測定すること。
(2)血中ビリルビン値の持続的な上昇等の異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
(3)本剤投与中止後も血中ビリルビン値が上昇することがあるので、患者の状態を注意深く観察すること。
(4)患者に対し、本剤投与後に眼球・皮膚の黄染、褐色尿、全身倦怠感等がみられた場合は、直ちに受診するよう指導すること。」

効能・効果に関連する使用上の注意の項の慢性肝炎の確認に関する記載を変更

1. 本剤の使用にあたっては、血中HCV RNAが陽性であること、及び組織像又は肝予備能、血小板数等により、慢性肝炎であることを確認すること。

1. 本剤の使用にあたっては、血中HCV RNA が陽性であること、及び組織像又は肝
予備能、血小板数等により、肝硬変でないことを確認すること。

重要な基本的注意の高ビリルビン血症に関する部分を削除

3. 本剤投与時に血中ビリルビン値の上昇が報告されているので、本剤投与中は血中ビリルビン値、肝機能検査値、患者の状態を十分に観察し、肝機能の悪化が認められた場合には適切な処置を行うこと。

副作用の「重大な副作用」に追加

「高ビリルビン血症:
血中ビリルビン値が著しく上昇することがあり、肝機能障害、腎機能障害等を発
現して死亡に至った症例が報告されているので、本剤投与中は定期的に血中ビリ
ルビン値を測定し、患者の状態を注意深く観察すること。異常が認められた場合
には投与を中止し、適切な処置を行うこと。(「警告」の項参照)」
「肝機能障害:
AST(GOT)、ALT(GPT)、Al-P、γ-GTP 等の上昇を伴う肝機能障害があらわれる
ことがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、
適切な処置を行うこと。」

ブルーレターで求められている対応

  • 本剤投与中は定期的に血ビリルン値を測定してください。
  • 血中ビリルン値の持続的な異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置行ってください。
  • 本剤投与中止後も血中ビリルン値が上昇することがあるので、患者の状態を注意深く観察してださい。
  • 患者に対し、本剤投与後に眼球・皮膚の黄染、褐色尿、全身倦怠感等がみられた場合は、直ちに受診するよう指導してください。

現在の第一選択薬となっているソブリアード服用中の患者さんは多く、報道もされているので、患者さんが過度の不安感を抱かないよう、しっかりとした対応が必要となると思います。
PMDAに患者さんへの資料が掲載されているので参考になるかと思います。
http://www.info.pmda.go.jp/kinkyu_anzen/file/kinkyu20141024_2.pdf

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