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薬剤師の脳みそ~薬局薬剤師の勉強ブログ~

調剤(保険)薬局の薬剤師が脳内で考えていることや仕事の中で得た知識をまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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メトホルミンと乳酸アシドーシス〜メトグルコとメルビンの違い

くすり・DI-糖尿病 副作用

とある薬局での会話。
「この先生、メデット(一般名:メトホルミン)とメトグルコ(一般名:メトホルミン)の両方を使うんだけど何でだろう?」
「よくわからないね。1日3回のときはメトグルコが多い気もしたけどそうとも限らないし・・・。気分で変えてたりして・・・」
コラコラコラ!
もちろんそこにはちゃんとした理由がありました。
今回の場合は「年齢」による使い分けだったのですが、少し復習しておきましょう。

メトグルコとメルビン・グリコラン

メトホルミン製剤一覧

現在、薬価掲載されているメトホルミン(H26年3月現在)は以下のとおりです。
メトグルコ錠250mg・メトグルコ錠500mg:大日本住友製薬(先発品)
グリコラン錠250mg:日本新薬(先発品)
ネルビス錠250mg:三和化学(後発品)
メデット錠250mg:アステラス製薬(後発品)
メトホルミン塩酸塩錠250mg「トーワ」:東和薬品(後発品)
メトホルミン塩酸塩錠250mg「JG」:日本ジェネリック(後発品)
メトリオン錠250:テバ製薬(後発品)
※メルビン錠250mg:大日本住友製薬(先発品)は平成24年3月31日で薬価削除
この中でメトグルコのみ他の薬剤とは異なります。
後発品はグリコラン(メルビン)の後発品と考えてください。

メトグルコとグリコラン(メルビン)の違い

規格

まず、見てすぐにわかるもの。
メトグルコは250mgに加え500mgが存在します。

薬価

H26.4からの新薬価で比較してみると・・・
グリコラン(250)やその後発品:9.60
メトグルコ(250):10.20
メトグルコ(500):19.00
メトグルコがわずかに高くなっています。

用法・用量

グリコラン

通常、成人にはメトホルミン塩酸塩として1日量500mgより開始し、1日2~3回食後に分割経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、1日最高投与量は750mgとする。

メトグルコ

通常、成人にはメトホルミン塩酸塩として1日500mgより開始し、1日2~3回に分割して食直前又は食後に経口投与する。維持量は効果を観察しながら決めるが、通常1日750~1,500mgとする。なお、患者の状態により適宜増減するが、1日最高投与量は2,250mgまでとする。

どちらも、1日最高用量が定められていますが、メトグルコは他のメトホルミンよりも最高用量が高く設定されています。

禁忌

グリコラン

1.次に示す状態の患者[乳酸アシドーシスを起こしやすい。]
(1) 乳酸アシドーシスの既往
(2) 腎機能障害(軽度障害も含む)[腎臓における本剤の排泄が減少する。]
(3) 透析患者(腹膜透析を含む)[高い血中濃度が持続するおそれがある。]
(4) 肝機能障害[肝臓における乳酸の代謝能が低下する。]
(5) ショック、心不全、心筋梗塞、肺塞栓など心血管系、肺機能に高度の障害のある患者及びその他の低酸素血症を伴いやすい状態[乳酸産生が増加する。]
(6) 過度のアルコール摂取者[肝臓における乳酸の代謝能が低下する。]
(7) *脱水症、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者
(8) 高齢者(「高齢者への投与」の項参照)
2. 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[*輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須である。]
3. 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[*インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。また、乳酸アシドーシスを起こしやすい。]
4. 栄養不良状態、飢餓状態、衰弱状態、脳下垂体機能不全又は副腎機能不全の患者[低血糖を起こすおそれがある。]
5. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人(「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照)
6. 本剤の成分又はビグアナイド系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者

メトグルコ

(次の患者には投与しないこと)
1. 次に示す状態の患者〔乳酸アシドーシスを起こしやすい。〕
(1) 乳酸アシドーシスの既往
(2) 中等度以上の腎機能障害〔腎臓における本剤の排泄が減少する。「重要な基本的注意」の項参照〕
(3) 透析患者(腹膜透析を含む)〔高い血中濃度が持続するおそれがある。〕
(4) 重度の肝機能障害〔肝臓における乳酸の代謝能が低下する。「重要な基本的注意」の項参照〕
(5) ショック、心不全、心筋梗塞、肺塞栓等心血管系、肺機能に高度の障害のある患者及びその他の低酸素血症を伴いやすい状態〔乳酸産生が増加する。〕
(6) 過度のアルコール摂取者〔肝臓における乳酸の代謝能が低下する。〕
(7) 脱水症、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐等の胃腸障害のある患者
2. 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者〔輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須である。〕
3. 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者〔インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。また、乳酸アシドーシスを起こしやすい。〕
4. 栄養不良状態、飢餓状態、衰弱状態、脳下垂体機能不全又は副腎機能不全の患者〔低血糖を起こすおそれがある。〕
5. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人〔「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」の項参照〕
6. 本剤の成分又はビグアナイド系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者

異なる部分を太字・下線で示してみました。
従来のメトホルミン製剤では禁忌となっている「軽度腎障害」「中等度以下の肝機能障害」「高齢者」が、メトグルコでは禁忌からはずれていることがわかると思います。

医師の使い分け

冒頭の話に戻ります。
結局、とある薬局で話題になった先生は、
高齢者→メトグルコ
高用量(750mgを越す場合)→メトグルコ
それ以外→メデット(グリコラン後発)
という使い分けをしていたというわけです。

すべてメトグルコにしないのは少しでも薬価が低いものを使いたいからということですね。

治療薬マニュアル 2014

治療薬マニュアル 2014

メトグルコと乳酸アシドーシス

問題は解決しましたが、もう少しメトホルミン製剤について復習しておきましょう。

ビグアナイドの誕生

ビグアナイドの歴史はとても古いです。
ビグアナイドの起源は中世ヨーロッパまで遡ります。
中世ヨーロッパで糖尿病症状の緩和に使用されていたのがガレガ草です。
ガレガ草による血糖降下作用の元となるのがグアニジンです。
グアニジンの作用を強めようと、グアニジンを二つ繋げたことに始まり、1950年代にグアニジン誘導体からビグアナイド系薬が開発されました。
日本国内では、1954年にジベトン(一般名:フェンホルミン)、1961年にメルビン•グリコラン(一般名:メトホルミン)、1971年にジベトスB•ジベトンS(一般名:ブホルミン)が発売されました。

乳酸アシドーシスのリスク

1977年、アメリカでフェンホルミンによる乳酸アシドーシスが続けて発生し、多くの国で発売中止となりました。
それに伴い、メトホルミンやブホルミンも投与量の制限が定められました。
また、第一選択薬の座もスルホニルウレア(SU)剤に奪われてしまいました。
結果、長い歴史を持っているにも関わらず、メトホルミンはどこか使いにくい、リスクの高い薬というイメージを持ってしまいました。

ビグアナイドの作用機序

ビグアナイドの作用機序が解明されてきたのは近年のことです。
これが乳酸アシドーシスにより悪いイメージを持っていたビグアナイドが見直されるきっかけにもなっています。

その血糖降下作用はAMPキナーゼの活性化によるものです。
結果、肝臓での糖新生が抑制され、筋肉への糖の取り込みが増加します。
腸管からの糖の吸収を抑制する効果もあり、これらの効果が合わさることで血糖降下作用が発揮されると言う訳です。

また、肝臓においては中性脂肪やコレステロールの合成を抑制する効果もあるため、肥満、特に脂肪肝において適した薬剤と言えます。
肥満傾向の患者さんに対しては第一選択薬と言うイメージがありますよね?

乳酸アシドーシス

乳酸アシドーシスとは、血中に乳酸が過剰に蓄積された結果、血液が酸性に傾いた状態のことです。
その発症は急激で、発症から数時間で昏睡状態となり、その死亡率は50%にもなります。
初期症状は、悪心•嘔吐•腹痛•下痢などの胃腸症状、筋肉痛、筋肉の痙攣、倦怠感、脱力感、腰痛、胸痛などです。
とにかく未然に防ぐことが大事な副作用と言えます。

乳酸アシドーシスの原因として知られているのは、ビグアナイドだけではありません。
薬剤では、シアン、イソニアジド、サリチル酸、アセトアミノフェンも原因となります。
糖尿病自体や低血糖も乳酸アシドーシスの原因となります。
ビグアナイドの禁忌を見ればわかるように、ショック、肝疾患、アルコールも原因となりますし、その他にも、急性低酸素血症、一酸化中毒、悪性疾患、敗血症、褐色細胞腫、尿毒症、ビタミンB1欠乏、遺伝性代謝障害、腸内細菌異常なんてものもあります。

メトホルミンと乳酸アシドーシス

メトホルミンによる乳酸アシドーシス

では、メトホルミンで乳酸アシドーシスはどの程度発症するのでしょう?
これについてのデータがあります。
最初に乳酸アシドーシスが問題視されたフェンホルミン(販売中止)では一年間あたり20〜60件/10万人、これに対してメトホルミンでは一年間あたり1〜7件/10万人となっています。
当初、乳酸アシドーシスの危険性が問題となったフェンホルミンに比べて、メトホルミンでは乳酸アシドーシスがほとんど起こらないことがわかります。
また、ビグアナイド服用による血中の乳酸増加を調べたデータでは、メトホルミンの服用前後で乳酸の血中濃度に変化がなかったようです。

乳酸アシドーシス発生の機序

ビグアナイドによる乳酸アシドーシスは何故起こるのか?
当初はビグアナイドの作用、肝臓における乳酸からの糖新生が抑制されることや筋肉での糖の消費増加で乳酸が蓄積されると考えられていましたが、それらの作用で乳酸が増えてもその分乳酸代謝が促進され、蓄積には至らないことがわかりました。
では何故、乳酸アシドーシスが起こるのか?
近年の研究では、ミトコンドリア内膜にビグアナイドが蓄積することでミトコンドリアの電子伝達系を抑制し、その結果、血中の乳酸が増加することがわかりました。

何故メトホルミンでは乳酸アシドーシスが起こりにくいのか?

同じビグアナイドなのに、何故、乳酸アシドーシスの発生頻度が異なるのでしょうか?
それは、ビグアナイド薬剤の脂溶性が影響しています。
脂溶性が高ければ高いほど、ミトコンドリア内膜への蓄積性が増し、結果、乳酸アシドーシスが発生しやすくなるというわけです。
ビグアナイドの脂溶性を比較すると…
フェンホルミン>ブホルミン>メトホルミン
となっています。
と言うわけで、最も水溶性の高いメトホルミンが乳酸アシドーシスを起こしにくいと言うわけです。

メトグルコの発売

2005年に発表された糖尿病の国際ガイドラインでメトホルミンは第一選択薬とされました。
それに伴い、日本国内でのメトホルミン(メルビン)の使用も増えていきましたが、添付文書については改訂されなかったため、用量や高齢者、腎障害、肝障害の縛りが強く、思ったように使用するには難しい状態でした。
そこで2010年に登場したのがメトグルコです。
本来であれば、従来薬のメルビンの適応拡大を行えば良かったのですが、海外販売品であるメトグルコを導入すると言う形が取られました。
将来的にメルビンは廃止(2012年経過措置満了)と言うことで発売されましたが、一時期は同じ大日本住友からメルビン、メトグルコと言う二つのメトホルミン製剤が発売されると言う不思議な状態となりました。

メトグルコの狙い

メルビンを改良するのではなく、メトグルコと言う新薬を発売した理由には色々なことが考えられます。
一つは登場当時に言われていた、メルビンの臨床開発を行うよりもメトグルコを導入した方がコストがかからなかったことなんだと思います。
それ以外にも、ジェネリック対策(現在もメトグルコの後発医薬品は未発売)も考えられますし、悪いイメージが染み付いたメルビンと言う名前を捨てたかったと言うこともあったのかもしれません。

まとめ

昔からのメトホルミン製剤とメトグルコの違いは薬剤師として明確に理解しておきたいところです。
用量、禁忌(高齢者•腎臓•肝臓)、薬価、後発医薬品の有無ですね。

メトホルミン製剤の有効性は非常に高く、安全性も証明されています。
血糖降下作用にインスリンを介さないため、低血糖や肥満を起こしにくいです。
特に脂肪肝の患者さんに対しては、脂肪肝自体に対する効果もあるので積極的に使いたい薬だと思います。
そう言った点を説明することでアドヒアランスの向上も期待できると思います。

ただし、以前に比べて減ったとは言っても禁忌が存在し、乳酸アシドーシスのリスクが増すことがわかっています。
そのようなリスクを抱えて使用する患者さんに対しては乳酸アシドーシスの注意が必要です。

高インスリン血症を抑えることから発ガン抑制に関するデータも出てきていますし、今後、もっと使用されていい薬剤ですよね。