薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
2020年11月からURLが変更となりました。(新URL https://yakuzaishi.love)
  

地域包括診療~薬剤師も気になる診療報酬改定

m3.comで基礎知識を高めよう
薬剤師の脳みそではm3.comへの登録をお勧めしています。
メルマガやアプリで医薬ニュースを閲覧できるので、毎日医療ニュースに触れることができます。しっかり読む時間がなくても少しずつ知識をたくわえることができ、それが基礎的な力になります。未登録の方は無料登録できるので、是非、下のリンクから登録してください。

(ここからが記事本文になります)

2014年度診療報酬改訂の中でも外来診療の最大の目玉となるのが地域包括診療。
主治医機能に関する改定です。
地域包括診療料と地域包括診療加算の二つが新設されます。
いずれも中小病院と診療所を対象にしたものです。
そして、この改定は薬局にとって非常に大きな衝撃を与えました。

地域包括医療とは?

高齢社会となった日本、これからの地域医療はどのような方向に向かっていくのか?
日本は、医療、介護、予防医学、住宅、生活支援サービスを高齢者に一体提供する「地域包括ケアシステム」を提唱しています。
そこに向かう中で重要な役割を果たすのが主治医。
慢性疾患に対する外来診療はもとより、検診、健康や介護保険利用の相談、将来的な在宅医療の提供まで、国民一人一人の生活に根ざした医療の提供のためには主治医の存在が理想です。
今回、新設される「地域包括診療料」と「地域包括診療加算」は国が考える主治医が担うべき役割を示した点数とも言えます。
考え方として以下のように述べられています。

外来の機能分化の更なる推進の観点から、主治医機能を持った中小病院及び診療所の医師が、複数の慢性疾患を有する患者に対し、患者の同意を得た上で、継続的かつ全人的な医療を行うことについて評価を行う。

地域医療には薬局はいらない?

薬局に走った衝撃。
地域包括診療料の算定要件は、当初は「院内処方に限る」といったものでした。
その後、薬剤師系の中医協委員の反対により条件付きで院外処方は可能となりましたが、これまで国が推進してきた医薬分業だったはずなのに、今回の話はその逆に思えます。

これは薬局・薬剤師にとって正念場です。
算定要件に含まれる院外処方を応需できる薬局の条件は簡単ではないかもしれません。
病院の場合「24時間開局している薬局」
診療所の場合「24時間対応可能な薬局」
ですが、これらがこれからの地域医療に薬局が参加していくために必要な道と考えることもできます。

地域包括診療料を読み解く

それでは、地域包括診療料について見ていきましょう。
(下線部が注目した部分です)

中小病院及び診療所において、外来における再診時の包括的な評価を新設する。
地域包括診療料 1,500点(月1回)
下記以外は包括とする。なお、当該点数の算定は患者の状態に応じて月ごとに決定することとし、算定しなかった月については包括されない。
① (再診料の)時間外加算、休日加算、深夜加算及び小児科特例加算
② 地域連携小児夜間・休日診療料、診療情報提供料(Ⅱ)
③ 在宅医療に係る点数(訪問診療料等を除く)
④ 薬剤料(処方料、処方せん料を除く。)
⑤ 患者の病状の急性増悪時に実施した検査、画像診断及び処置に係る費用のうち、所定点数が550点以上のもの

これは大きい点数ですね・・・。
算定するかどうかを月ごとに決められるということは、算定可能な場合、1,500点/月を下回らないようにできるということですね。

算定要件を見てみましょう。

① 対象患者は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症の4疾病のうち2つ以上(疑いは除く。)を有する患者とする。なお、当該医療機関で診療を行う対象疾病(上記4疾病のうち2つ)と重複しない対象疾病(上記4疾病のうち2つ)について他医療機関で診療を行う場合に限り、当該他医療機関でも当該診療料を算定可能とする。
対象医療機関は、診療所又は許可病床が200床未満の病院とする。
③ 担当医を決めること。また、当該医師は、関係団体主催の研修を修了していること。(当該取り扱いについては、平成27年4月1日から施行する。)

慢性疾患として認められているのは高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症。
主治医機能なのに複数の医療機関でも診療可能ってのは少しびっくりです。

ここからが大事なところです。

④ 以下の指導、服薬管理等を行っていること。
ア) 患者の同意を得て、計画的な医学管理の下に療養上必要な指導及び診療を行うこと。
イ) 他の医療機関と連携の上、患者がかかっている医療機関をすべて把握するとともに、処方されている医薬品をすべて管理し、カルテに記載すること。

これまではかかりつけ薬局の役割だった医薬品の管理がここに記載されていますね・・・。

院外処方については病院か診療所かで条件が異なります。
まずは病院から。

ウ) 病院において、患者の同意が得られた場合は、下記のすべてを満たす薬局に対して院外処方を行うことを可能とする。
a. 24時間開局している薬局であること。なお、24時間開局している薬局のリストを患者に説明した上で患者が選定した薬局であること。
b. 当該患者がかかっている医療機関をすべて把握した上で、薬剤服用歴を一元的かつ継続的に管理し、投薬期間中の服薬状況等を確認及び適切な指導を行い、当該患者の服薬に関する情報を医療機関に提供している薬局であること。

24時間開局が最低条件となります。
患者が選定する薬局って言っても選択肢はほとんどなさそうな気がしますね。
病院によっては近隣に24時間開局薬局がなく、院内処方を選ばざるを得ないという可能性があります。
それが増えてくると、中小規模の病院は院内処方が当たり前という流れになりかねない・・・。
薬局が行うべき薬の一元管理や服用状況の確認は当然ですが、それを医療機関に提供することが義務付けられています。

エ) 病院において院外処方を行う場合は、下記の通りとする。
a. 当該薬局に患者がかかっている医療機関のリストを渡すこと。
b. 患者は受診時に薬局発行のお薬手帳又は当該医療機関発行のお薬手帳を持参すること。その際、医師はお薬手帳のコピーをカルテに貼付する等を行うこと。

医療機関から薬局にも情報提供があるようです。
これはどのように行うのでしょうか?
病院から薬局に直接情報提供を行うのであれば、患者さんに処方せんを渡す時点でどこの薬局に行くか決定してもらわないと無理ですよね?
上で書いたように薬局からの情報提供も必要なので、病院は患者のかかりつけ薬局を把握することになりそうですね。
薬局・病院間の情報のやりとりはどの程度なのでしょう?
初回・情報変更時のみ?月に1回など定期的?

お薬手帳は推進されているようで安心しました。
カルテ貼り付けの義務も大きいですよね。
これ、2012改定の時点で義務にしてもらえていればなんて思ったり・・・。
上に書いた情報のやり取りがお薬手帳を介して行えれば理想ですね!

続いて診療所の場合です。

オ) 診療所においては、当該患者について原則として院内処方を行うが、カの場合に限り院外処方は可能とする。
カ) 診療所において院外処方を行う場合は、下記の通りとする。
a. 24時間対応をしている薬局と連携していること。
b. 原則として院外処方を行う場合は当該薬局を対象とするが、患者の同意がある場合に限り、その他の薬局での処方も可能とする。この場合、夜間・休日等の時間外に対応できる薬局のリストを患者に説明し、文書で渡すこと。
c. 当該薬局に患者がかかっている医療機関のリストを渡すこと。
d. 患者は受診時に薬局発行のお薬手帳又は当該医療機関発行のお薬手帳を持参すること。その際、医師はお薬手帳のコピーをカルテに貼付する等を行うこと。

「原則として院内処方」・・・悲しい響きですね。
診療所の場合は「24時間対応薬局」。
24時間開局の義務はありませんが、夜間や休日の対応が必須です。
この対応の質によっては医療機関からの評価にもつながると思います。

ここで病院との違いで気になる部分。
病院:24時間開局している薬局のリストを患者に説明した上で患者が選定した薬局
診療所:原則として連携している24時間対応薬局、その他の薬局の場合、夜間・休日等の時間外に対応できる薬局のリストを患者に説明し文書で渡す
診療所の方は24時間対応リストを渡すとは書いてますが、その中から選ぶとは書いてない?
ってことは診療所自体は24時間対応薬局と連携する義務がありますが、患者さんが希望すれば24時間対応していない薬局も処方せんを応需できるってこと?
ここが少し気になるところです。
もしそうだとしても、24時間対応薬局以外が処方せんを応需することはほとんどなさそうです。
ただ、ずるいことを考えれば。
近隣に複数店舗をもつチェーン薬局が一箇所だけ24時間対応薬局を決め、診療所はそこと連携してもらう。
そうすれば、門前は24時間対応でなくても処方せんを応需できる・・・なんて。
そんなことするから改訂でどんどん潰されるんですよ。
そんな薬局が出るくらいなら、24時間対応薬局しか応需できないってことであって欲しいです。
頑張っている薬局が評価されるのは正当なことですよね。

キ) 当該患者について、当該医療機関で検査(院外に委託した場合を含む。)を行うこととし、その旨を院内に掲示すること。
ク) 当該点数を算定している場合は、7剤投与の減算規定の対象外とする。

7剤投与の減算規定から除外!
念のため、7剤投与の減算規定とは。
7種類以上の内服薬の投薬を行った場合、処方料は42点から29点に、薬剤料は所定点数の9割に減額されます。また、処方せん料68点は40点に減額されます。
これが免除となる・・・。
これは大きいですが、これって院内投与を推奨のため・・・?
院内の在庫削減のための処方に繋がってしまいませんかね?

残りは一気に行きます。

⑤ 以下の健康管理等を行っていること。
ア) 健康診断・検診の受診勧奨を行いその結果等をカルテに記載するとともに、患者に渡し、評価結果をもとに患者の健康状態を管理すること。
イ) 健康相談を行っている旨を院内掲示すること。
ウ) 敷地内禁煙であること。
⑥ 介護保険に係る相談を行っている旨を院内掲示し、要介護認定に係る主治医意見書を作成しているとともに、下記のいずれか一つを満たすこと。
ア) 居宅療養管理指導又は短期入所療養介護等を提供していること
イ) 地域ケア会議に年1回以上出席していること
ウ) ケアマネージャーを常勤配置し、居宅介護支援事業所の指定を受けていること
エ) 介護保険の生活期リハを提供していること
オ) 当該医療機関において、同一敷地内に介護サービス事業所を併設していること
カ) 介護認定審査会に参加した経験があること
キ) 所定の研修を受講していること
ク) 医師がケアマネージャーの資格を有していること
ケ) 病院の場合は、総合評価加算の届出を行っていること、又は介護支援連携指導料を算定していること
⑦ 在宅医療の提供および24時間の対応について、在宅医療を行うことを院内掲示し、夜間の連絡先も含めて当該患者に対して説明と同意を求めるとともに、下記のうちすべてを満たすこと
・診療所の場合は
ア) 時間外対応加算1を算定していること
イ) 常勤医師が3人以上在籍していること
ウ) 在宅療養支援診療所であること
・病院の場合は、
ア) 2次救急指定病院又は救急告示病院であること
イ) 地域包括ケア入院料(新規)又は地域包括ケア入院医療管理料(新規)を算定していること
ウ) 在宅療養支援病院であること
⑧ 地域包括診療料と地域包括診療加算はどちらか一方に限り届出することができる
⑨ 初診時には算定できない

診療所の場合、常勤医師が3人以上在籍となっています。
なかなかハードルの高い地域包括診療料ですが、在宅を積極的に行なっている診療所にとってはここが一番のハードルではないでしょうか?
ちなみに、常勤医師が3人以上在籍→薬剤師の配置義務(例外ありますが)なので院内処方ってことだと思います。
近隣の診療所が対象かどうかを考えるのに一番わかりやすい算定要件がこれだと思います。

算定可能であれば包括の1500点は大きい!
同一建物居住者の在宅時医学総合管理料、特定施設等入居者医学総合管理料が大きく引き下げられたので、在宅を専門的に行っているクリニックの場合、こちらの点数を取りたいところですね。

地域包括診療加算を読み解く

地域包括診療加算は診療所を対象とした点数で、算定要件が地域包括診療料に比べてゆるくなっています。
常勤医師3人以上が必須ではなくなっています。
薬局の条件は地域包括診療料の診療所の場合に準じます。
一気にのせてしまいます。

地域包括診療加算 20点(1回につき)
① 対象患者は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症の4疾病のうち2つ以上(疑いは除く。)を有する患者とする。なお、当該医療機関で診療を行う対象疾病(上記4疾病のうち2つ)と重複しない対象疾病(上記4疾病のうち2つ)について他医療機関で診療を行う場合に限り、当該他医療機関でも当該加算を算定可能とする。
対象医療機関は、診療所とする。
③ 担当医を決めること。また、当該医師は関係団体主催の研修を修了していること。(当該取り扱いについては、平成27年4月1日から施行する。)
④ 以下の指導、服薬管理を行っていること。
ア) 患者の同意を得て、計画的な医学管理の下に療養上必要な指導及び診療を行うこと。
イ) 他の医療機関と連携の上、患者がかかっている医療機関をすべて把握するとともに、処方されている医薬品をすべて管理し、カルテに記載すること。
ウ) 当該患者について原則として院内処方を行うこと。なお、エ)の場合に限り院外処方は可能とする。
エ) 院外処方を行う場合は、下記の通りとする。
a. 24時間対応をしている薬局と連携していること。
b. 原則として院外処方を行う場合は当該薬局を対象とするが、患者の同意がある場合に限り、その他の薬局での処方も可能とする。この場合、夜間・休日等の時間外に対応できる薬局のリストを患者に説明し、文書で渡すこと。
c. 当該薬局に患者がかかっている医療機関のリストを渡すこと。
d. 患者は受診時に薬局発行のお薬手帳、又は、当該医療機関発行のお薬手帳を持参すること。その際、医師はお薬手帳のコピーをカルテに貼付する等を行うこと。
オ) 当該点数を算定している場合は、7剤投与の減算規定の対象外とする。
⑤ 以下の健康管理等を行っていること。
ア) 健康診断・検診の受診勧奨を行いその結果等をカルテに記載するとともに、患者に渡し、評価結果をもとに患者の健康状態を管理すること。
イ) 健康相談を行っている旨を院内掲示すること。
ウ) 敷地内禁煙であること。
⑥ 介護保険に係る相談を行っている旨を院内掲示し、要介護認定に係る主治医意見書を作成しているとともに、下記のいずれか一つを満たすこと。
ア) 居宅療養管理指導又は短期入所療養介護等を提供していること
イ) 地域ケア会議に年1回以上出席していること
ウ) ケアマネージャーを常勤配置し、居宅介護支援事業所の指定を受けていること
エ) 介護保険の生活期リハを提供していること(要介護被保険者等に対する維持期の運動器、脳血管疾患等リハビリテーション料は算定できない。)
オ) 当該医療機関において、同一敷地内に介護サービス事業所を併設していること
カ) 介護認定審査会に参加した経験があること
キ) 所定の研修を受講していること。
ク) 医師がケアマネージャーの資格を有していること。
⑦ 在宅医療の提供および24時間の対応について、在宅医療を行うことを院内掲示し、夜間の連絡先も含めて当該患者に対して説明と同意を求めるとともに、下記のうちいずれか一つを満たすこと。
ア) 時間外対応加算1又は2を算定していること
イ) 常勤医師が3人以上在籍していること
ウ) 在宅療養支援診療所であること
⑧ 地域包括診療料と地域包括診療加算はどちらか一方に限り届出することができる。
⑨ 初診時には算定できない。


病院の地域包括診療料が求めている24時間開局はちょっとハードルが高いかもしれませんが、24時間対応はこれまで在宅に取り組んできた薬局にとって当たり前だと思います。
そう考えると、お薬手帳を頑張ろうと思っている薬局にとっては、その持参が必須となっている地域包括診療料(加算)は大歓迎かもしれませんね。
あなたの薬局の近隣の病院・診療所はこの点数を取るのでしょうか?
薬局が知らないじゃすまない改定ですね。

医薬分業から院内処方へ。
そんな悲しい方針変換にも見える今回の主治医機能。
あなたの知ってる医師はどう考えるでしょう?
「薬は今後も薬局の薬剤師に任せたいよ」って言ってもらえるでしょうか?
もし、そうでない場合も、これからそう言ってもらえるようになりましょう!

© 2014- ぴーらぼ inc. プライバシーポリシー