薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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トビエースと頻尿治療薬

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発売からそろそろ一年がたちますので、大きい病院などでもそろそろ採用されるのでしょうか?
過活動膀胱(OAB/overactive bladder)治療薬のトビエース錠(一般名:フェソテロジンフマル酸塩)です。
デトルシトールカプセル(一般名:酒石酸トルテロジン)の活性代謝物のプロドラッグです。
え?
デトルシトールの、活性代謝物の、プロドラッグ?
代謝物のプロドラッグ???
最初に聞いたときはこうなりました。

過活動膀胱治療薬

デトルシトールは2006年4月にベシケア(一般名:コハク酸ソリフェナシン)と同時に発売されました。
この2剤から神経因性膀胱ではなく、過活動膀胱が適応として使用され、頻尿で悩む患者さんの診断・薬剤使用が行いやすくなったと記憶しています。

デトルシトールとベシケア

この二つの薬剤は従来の頻尿治療薬と同じく抗コリン作用により頻尿を改善します。
ただ、どちらも売りにしていたのは副作用の少なさ。
抗コリン作用により生じる副作用が従来の薬剤より少ないことを売りにしていました。
デトルシトールは膀胱への臓器選択性、ベシケアはムスカリンM3受容体への選択性がそのポイントでした。
これについてはまた今度、ウリトス/ステーブラ(イミダフェナシン)も含めて詳しくまとめますね。

デトルシトールの特徴

ベシケアが脂溶性であるのに対して水溶性です。
これと膀胱への臓器選択性が高いことが合わさり、抗コリン作用による副作用の起こりにくさに繋がっています。
水溶性による生物学的半減期の短さを解消するため、徐放製剤とすることで一日一回の用法となっています。
体内に吸収されたトルテロジン(デトルシトールは)薬物代謝酵素のチトクロームP450(CYP)2D6によって代謝され、活性代謝物である5-ヒドロキシメチルトルテロジン(5HMT)になり、薬効を発揮します。
が、CYP2D6の酵素活性は個人差がとても大きいんです。
特に日本人においては四割の人がIntermediate metabolizer(IM)という活性が低いタイプです。
(これもいつかまとめます。)
なので、デトルシトールには効く人効かない人の差が大きいという欠点がありました。

トビエースの特徴

フェソテロジン(トビエース)は5HMTのプロドラッグです。
トルテロジンだってそうじゃないかと思ってしまうんですが。
ただ、フェソテロジンはCYP2D6を介さず、非特異的エステラーゼによる代謝を受けて5HMTになるというのが最大の特徴です。
これにより、トルテロジンの問題だった代謝酵素の遺伝子多型による影響を回避しています。
結果、安定したデータを得ることができ4mgだけでなく8mgまで使用できるようになっています。
4mgがデトルシトールの4mgと同程度とかんがえれば最大用量が増えた形ですね。
安全性と強さのトビエースというイメージです。

抗コリン作用と高齢者

過活動膀胱などの頻尿症状は加齢とともに増加する傾向にあるため、これらの薬剤は高齢者に使用される機会が多いです。
ですが、抗コリン作用がもたらす副作用は高齢者のQOLに対する影響が大きいものが多いです。
口渇による味覚障害、入れ歯の使用感悪化。
視力への影響、眠気やめまい。
便秘や認知機能の低下。
これらを考えると水溶性の高い方が高齢者に使いやすいケースは多々あります。

トビエースは低用量から開始することで高齢者に対して、よりよい用量調節をしていける薬じゃないかなと思います。
ウリトス/ステーブラも同様。ベシケアは強すぎるイメージですね。

最後に余談ですが。
トビエースのキャラクターはウルトラマン。
効果ウルトラってことらしいですが。
個人的にはどうせならウルトラマンエースにして欲しかったかな、と。

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