薬剤師の脳みそ〜くすりと医療制度

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

フェマーラで不妊治療

新人薬剤師さんへ
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ある日の服薬指導中。
若い女性の患者さんから質問を受けました。
「たまにフェマーラという薬を飲むことがあるんですが、問題ないでしょうか?」
たまに・・・?
たまにフェマーラってどういうこと?
フェマーラ(一般名:レトロゾール)はアロマターゼ阻害薬と呼ばれる薬剤で閉経後の乳がんに使用されます。

年齢的にも閉経後ということはないだろうし、「たまに」飲む薬ではないです。
継続して服用するのが基本。
どういうこと?
結論から言うと不妊治療に使用しているということです。

フェマーラはアロマターゼという酵素の阻害剤(インヒビター)です。
アロマターゼは脂肪組織に存在し、テストステロン(男性ホルモン)をエストロゲン(女性ホルモン)に変換する酵素です。
閉経前は卵巣からも女性ホルモンが分泌されますが、閉経後はアロマターゼによる合成のみになります。
ですので、閉経後の乳がんにアロマターゼ阻害剤が有効になるわけです。

排卵の仕組みに注目してアロマターゼ阻害剤の作用を見てみます。
アロマターゼが阻害された結果、エストロゲンの生成が抑えられます。
エストロゲンが多い状態では視床下部や下垂体にネガティブフィードバックがかかり、視床下部からのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌と下垂体前葉からのゴナドトロピンである卵胞刺激ホルモン(FSH)・黄体形成ホルモン(LH)の分泌が抑制されています。
逆にエストロフェンが少ない状態ではポジティブフィードバックがかかるので、視床下部からのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌と下垂体前葉からのゴナドトロピンである卵胞刺激ホルモン(FSH)・黄体形成ホルモン(LH)の分泌が促進されます。

不妊治療に使用する薬剤に排卵誘発剤クロミッド(一般名:クロミフェン)があります。
クロミッドもGnRHの分泌を促進した結果、FSHとLHの放出を促進、FSHによって卵子が成熟し、LHによって排卵が促進されるという形です。

どちらも同じように排卵を促進する薬剤なのですが、どう違うのか?
クロミッドでは、頚管粘液の分泌抑制や子宮内膜への悪影響が見られますが、フェマーラではそれが少ないと言われています。
これは半減期の違いによるものと言われています。
クロミッド:半減期5日~3週間、フェマーラ:半減期45~70時間

フェマーラの添付文書を見ると催奇形性のリスクがあるため妊娠中の使用は禁忌となっています。
ですが、フェマーラによる催奇形性のリスクはクロミッドによるものと有意差はないという論文があり、現在はこの考えが主流になっているようです。
※Current evidence supporting "letrozole" for ovulation induction. J Hum Reprod Sci. 2013 Apr;6(2):93-98.

クロミッドは保険適応がありますが、フェマーラは保険適応外です。
ですが、フェマーラを主流とする流れも出てきているようです。
服用方法は、生理開始3日目から5日間服用します。
ちなみに、フェマーラの薬価は655.4円。
5日分で3277円になりますね。