薬剤師の脳みそ〜くすりと医療制度

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

リウマトレックスとフォリアミン〜特殊な投与方法の理由は?(修正)

新人薬剤師さんへ
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(2014年1月11日の記事でしたが、加筆修正を行いました)
リウマトレックス®︎(一般名:メトトレキサート)を服用している患者さんには、必ずではないですが、かなりの確率でフォリアミン®︎(一般名:葉酸)が一緒に処方されています。
なぜ、葉酸を併用する必要があるか?
と言われれば、それは副作用を抑制するためです。
じゃあ、なぜ一日だけ?
当たり前のように併用されている組み合わせですが、考えてみると不思議なことがいっぱいです。
可能な範囲で調べてみました。
  
  
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メトトレキサートと関節リウマチ

メトトレキサート(MTX:MeThotreXate)は免疫抑制剤に分類される薬で、古くから抗がん剤として使用されてきた薬です。
現在でも肉腫や白血病、悪性リンパ種などに使用されていますが、現在では関節リウマチ(RA:Rheumatoid Arthriti)に対する第一選択薬の一つとして使用されています。
  

同じ成分でも使用する目的が異なる

メトトレキサートは目的とする疾患により、様々な医薬品(商品)が存在します。
  

抗がん剤としてのメトトレキサート製剤

抗がん剤としての適応を取得しているメトトレキサート製剤には以下の医薬品が挙げられます。

  • メソトレキセート点滴静注液200mg/1000mg:肉腫(骨肉腫、軟部肉腫等)、急性白血病の中枢神経系及び睾丸への浸潤に対する寛解、悪性リンパ腫の中枢神経系への浸潤に対する寛解
  • メソトレキセート錠2.5mg:急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、絨毛性疾患(絨毛癌、破壊胞状奇胎、胞状奇胎)
  • 注射用メソトレキセート5mg/50mg:急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、絨毛性疾患(絨毛癌、破壊胞状奇胎、胞状奇胎)

  

関節リウマチ治療薬としてのメトトレキサート製剤

関節リウマチ治療薬としての適応を取得しているメトトレキサート製剤には以下の通りです。

  • リウマトレックスカプセル2mg:関節リウマチ、関節症状を伴う若年性特発性関節炎
  • メトレート錠2mg:関節リウマチ、関節症状を伴う若年性特発性関節炎
  • メトトレキサートカプセル2mg/錠2mg:関節リウマチ、関節症状を伴う若年性特発性関節炎

  

リウマトレックス(メトトレキサート)の作用機序

メトトレキサートが関節リウマチの症状を軽減させるのは大きく分けて2つの作用によると考えられてます。
  
1つ目の作用が「葉酸活性化阻害作用」で、2つ目の作用が「アデノシン遊離促進作用」です。
  

葉酸活性化阻害作用

  
葉酸は葉酸レダクターゼによりジヒドロ葉酸(DHF)になり、さらにジヒドロ葉酸レダクターゼによりテトラヒドロ葉酸(THF)となることで活性化されます。
葉酸代謝拮抗薬であるリウマトレックス(メトトレキサート)はジヒドロ葉酸レダクターゼの働きを阻害することでDHFがTHFとなる反応を抑制し、葉酸の活性化を阻害します。
THFはDNAの合成に深く関与しており、その合成が阻害されることで、特にがん細胞や細胞分裂の盛んな免疫細胞の増殖が抑えられるというわけです。
  
元々は抗がん剤としてのメトトレキサート製剤をリウマチに応用的に使っていたのですが、癌に使う用量よりも少なく、かつ回数も週1~3回のみの服用として使用できように開発されたのがリウマトレックスというわけです。
  
免疫系での作用については以下のようなものが考えられます。

  • 抗体・リンパ球の産生抑制
  • 血管内皮細胞および滑膜線維芽細胞の増殖抑制
  • 炎症部位への好中球遊走の抑制
  • マクロファージのIL-1産生抑制
  • 滑膜組織中コラゲナーゼ産生抑制

  

アデノシン遊離促進作用

メトトレキサートは、上記のジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害作用とは別に、アミノイミダゾール-4-カルボキサミドリボヌクレオチド(AICAR:AminoImidazole-4- CarboxAmide Ribonucleoside)トランスホルミラーゼを阻害する作用も持っています。
メトトレキサートがAICARトランスホルミラーゼを阻害することで、細胞内にAICARが蓄積されます。
蓄積されたAICARは抗炎症オータコイドの一つであるアデノシンの細胞外への遊離を促進し、抗炎症作用を発揮します。
  
  

リウマトレックス(メトトレキサート)の副作用

リウマトレックス®︎など関節リウマチに適応を持つメトトレキサート製剤は抗がん剤としての適応を持つものよりも少ない用量で使用されます。
ですが、それでも副作用は多く存在し、一部の副作用は用量が増えれば増えるほど(用量依存的に)頻度が上がることが知られています。
用量依存的に頻度が増える副作用として消化器障害(口内炎、下痢、食欲不振等)、肝機能障害(AST/ALT上昇等)、骨髄抑制(白血球減少、血小板減少、貧血等)、脱毛などがあります。
これらは葉酸欠乏症の症状と類似しており、メトトレキサートにより正常な細胞での葉酸の働きが抑えられてしまった結果起こる副作用であることが知られています。
※メトトレキサートの重大な副作用の一つして知られる間質性肺炎は薬剤過敏性肺炎の一つで用量依存的なものではありません。
  

フォリアミンの役割

メトトレキサートによる葉酸欠乏症症状を避けるためにフォリアミン®︎(葉酸)が使用されます。
メトトレキサートの作用によりジヒドロ葉酸レダクターゼが阻害され、活性型葉酸であるTHFが減り過ぎてしまった際、先ほどあげた副作用が出現します。
そこで、葉酸を補充することでTHFの合成を促進させ、その働きを回復るというわけです。
実際に、メトトレキサートと葉酸を併用することで副作用が軽減されたという報告がされています。
関節リウマチ患者に対するメトトレキサートの副作用軽減のための葉酸とフォリン酸 | Cochrane
  
葉酸がメトトレキサートの作用を抑えることで副作用を軽減させることはわかりました。
でも、単純にリウマトレックスの作用を抑えたいのであれば使用するリウマトレックスの用量を減らせばいいわけで、それはリウマトレックスと葉酸をずっと併用しても同じことです。
  

フォリアミン服用のタイミング

リウマトレックス®︎(メトトレキサート)の効果を減らさず、副作用のみを防止するにはどうすればいいか?
メトトレキサート(MTX)診療ガイドラインに服用方法が記載されています。
葉酸製剤の併用投与は、肝機能障害、消化器症状、口内炎の予防・治療および治療の継続に有効であり、必要に応じて考慮する。MTX 8mg/週を超えて投与する際や副作用リスクが高い高齢者、腎機能軽度低下症例では、葉酸併用投与が強く勧められる。
葉酸製剤は5mg/週以下を、MTX最終投与後24〜48時間後に投与する。葉酸製剤は、通常、フォリアミン®を使用するが、重篤な副作用発現時には 、活性型葉酸製剤ロイコボリン®を使用する(ロイコボリン®レスキュー)
ここに記載された通り、日本国内ではリウマトレックス®︎を最後に服用してから24〜48時間後(1〜2日後)にフォリアミン錠5mg(葉酸)を服用するのが一般的です。

投与されたリウマトレックスが体内から消えるくらいのタイミングで葉酸を追加し、正常な細胞を回復させていくというわけです。
ですが、この服用方法がベストかどうかはまだ結論が出ていません。
現に、リウマトレックスの服用開始の前日に葉酸5mgを服用する方法もありますし、米国では葉酸1mgを連日投与が行われています。
  
個人的な考え方ですが、適度なタイミングで葉酸を摂取することで、リウマトレックスの作用が過剰になってしまう直前にブレーキを少しだけかけるイメージです。
そうすることでリウマトレックス®︎の作用を減らさずに副作用を抑えることができるというわけです。
  
ただし、フォリアミンを最初から併用するか、副作用の兆候が見られてから併用するかの考えは医師によって異なります。
いずれにしろ、葉酸を投与すればメトトレキサートの作用は減弱するわけですから、併用が正しいとは限りません。
副作用が発生した場合には葉酸を10mgに増量したり、ロイコボリン®︎錠(ホリナートカルシウム)を服用するケースもあります。
  
  

フォリアミンとロイコボリンの違い

フォリアミン®︎は葉酸そのもので、関節リウマチの治療ではメトトレキサートによる副作用を軽減するために使用されます。
それに対して、ロイコボリン®︎の成分はホリナートカルシウム(フォリン酸のカルシウム塩)で、メトトレキサートによって副作用が起こってしまった場合に使用されます。
保険適応で比較してもロイコボリン®︎は「葉酸代謝拮抗剤の毒性軽減」の適応を持っていますが、フォリアミン®︎は葉酸代謝拮抗剤との併用の適応は持っていません。
ロイコボリン®︎を「葉酸代謝拮抗剤の毒性軽減」の適応に使用する場合の用量は以下の通りです。
通常、ロイコボリンとして成人1回10mgを6時間間隔で4回経口投与する。なお、メトトレキサートを過剰投与した場合には、投与したメトトレキサートと同量を投与する。
  
ロイコボリン®︎の成分であるホリナートカルシウムはフォリン酸のカルシウム塩です。
フォリン酸はテトラヒドロ葉酸の5-ホルミル誘導体で、体内でジヒドロ葉酸レダクターゼ(メトトレキサートが阻害する酵素)を介さない経路で活性型葉酸(THF)に代謝されるため、メトトレキサート存在下でも問題なく葉酸の働きを改善することが可能です。
また、最近の研究では、フォリン酸がメトトレキサートによるジヒドロ葉酸レダクターゼの阻害を解除する作用を持つのではないかと言われています。
  

ロイコボリン救済療法

このため、ガイドラインでも副作用発現時にはフォリアミン®︎ではなく、ロイコボリン®︎を投与するよう推奨されています。
ロイコボリンレスキュー(ロイコボリン救済療法)
症状を伴う血球減少症のような重篤な副作用発現時には、ただちにMTXを中止し、ロイコボリン®レスキューを行う。ロイコボリン®錠10mg、6時間ごとに経口投与、あるいはロイコボリン®注6〜12mg、6時間ごと筋注あるいは静注投与する(ロイコボリン®の1日投与量はMTX 投与量の3倍程度を目安とする)。MTX の排泄を促す目的で十分な輸液と尿のアルカリ化を行う。ロイコボリン®投与は副作用が改善するまで行う
  

メトトレキサート・ロイコボリン救援療法

ロイコボリンレスキューと紛らわしい呼称を持つのが、メトトレキサート・ロイコボリン®救援療法です。
こちらは肉腫、急性白血病、悪性リンパ腫に対して行われる治療方法の名称です。
  
今回のテーマとは少し異なりますが、簡単にまとめておきます。
メトトレキサート・ロイコボリン®救援療法では毒性を上回る大量のメトトレキサートを投与した後、3〜6時間後にロイコボリン®を追加投与する方法です。
メトトレキサートをガン細胞に対して作用させた後に、正常細胞を守るためにロイコボリン®で解毒を行う方法です。
当初はガン細胞の細胞分裂が盛んなため、優先的に作用が発揮されると考えられていました。
ですが、最近ではそれだけでなく、ガン細胞に存在するジヒドロ葉酸は修飾を受けており、その場合はロイコボリン®による救援の対象外となるため、腫瘍にのみ効果を発揮するのではないこと言われています。
  
  

まとめ

単純にリウマトレックス®︎(メトトレキサート)の量を調節するわけでなく、その活性を上手にコントロールするために葉酸投与のタイミングが考えられている・・・。
なんとなくイメージが固まったでしょうか?
しっかりイメージを持ち、それを上手に言語化して患者さんに伝えれるようになりたいですね。