薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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アジルサルタンとその配合剤とハイグロトンの思い出

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武田のMRさんからアジルサルタン(商品名:アジルバ)の勉強会を受ける機会があったので少しだけまとめます。
以前まとめたものと重複するところもあるかもしれませんが、詳しい部分も加えときます。
  
  

  
  

アジルサルタン

アジルサルタン(アジルバ)はカンデサルタン(ブロプレス)のテトラゾール基をオキサジアゾール基に置換したものです。
海外ではアジルサルタン メドキソミル(商品名:イダービ)というプロドラッグとして販売されましたが、プロドラッグ体(イダービ)でもそうでなくても(アジルバ)効果に差がなかったため、日本国内ではアジルサルタン(アジルバ)として販売されました。
  

アジルサルタンの特徴

アジルサルタンの特徴(ドラッグエフェクト:drug effect)は他のARBよりも強い降圧効果が長時間持続すること。
アジルサルタンはAT1受容体との結合力が強く、これが優れた降圧効果に繋がっていると考えられています。
また、脂溶性が高く(カンデサルタンの4倍)、優れた組織移行性を示すので、速やかに全身・局所のRA系を抑制することができると考えられています。
  

夜間高血圧に対する効果

24時間以上に渡って優れた降圧効果を発揮するため、リスクの高い早朝・夜間の血圧に関しても十分な効果を発揮することが可能で、特に夜間高血圧に関してはリスクの高い血圧変動のタイプを正常型に近づけることが可能です。
夜間高血圧の分類

  • dipper型:夜間血圧の下降度が10〜20%(正常)
  • non-dipper型:夜間血圧の下降度が10%未満(不十分)
  • riser型(inverted dipper型):夜間血圧が通常とは逆に上昇
  • extreme-dipper型:夜間血圧の下降度20%以上(過剰)

どのタイプであっても正常なdipperに近づける、つまり血圧曲線をシフトさせるのでアジルバシフトと呼んでいるそうです。
  
ここで生じる疑問が2点あります。

  • 服用のタイミングを工夫すれば他のARBでも同様の効果が発揮できるのでは?
  • extreme-dipperを正常型(dipper)にシフトさせるということは血圧を上昇させるのか?

夜間血圧の分類はあくまでも血圧曲線(縦軸が血圧、横軸が時間)の形による分類です。
アジルバシフトと呼んでいるのは血圧曲線の形を正常な形(dipper型)に近づけるということです。
extreme-dipper型の場合、夜間が低いというより、日中が高すぎるため、相対的に夜間の血圧が低くなっていると考えられます。
降圧剤、特にARBの性質として、血圧が高い場合は降下させますが、血圧が低い場合は過剰に降下させにくくなっています。
ということで血圧の高い日中は強く降下させ、血圧の低い夜間はあまり降下させないことでextreme-dipper型をdipper型に近づけるということです。
これは一日中十分な効果を発揮しないと意味がないので、他のARB(の降下が十分持続していないのであれば)の服用のタイミングを工夫してもさほど意味がないってことになりますね。
  

そのほか期待される効果

尿中アルブミンの低下に関してはカンデサルタンと同等。
インスリン抵抗性の改善に関してはオルメサルタン(オルメテック)と同等ってことも言ってましたね。
アジルサルタンがアディポネクチンを増加させると期待させているって話もあるんですが、そのへんの話は詳しく聞けませんでした。
  

CCBとの配合剤

あとは2013年4月24日にアジルサルタンとカルシウム拮抗薬(CCB*1)アムロジピンとの配合剤に関する製造承認申請を行ったって話。
(その後、承認、発売されたザクラス配合錠のことですね)
降圧利尿剤との配合剤に関しても承認申請中ってことでしたが、利尿剤は国内他社と同じくヒドロクロロチアジド?それとも海外(イダービ)に合わせてクロルタリドンとの合剤なんでしょうか?
ちなみに、海外ではアジルサルタン+クロルタリドン(商品名:イダーバクロー)として売られています。
(日本国内ではアジルサルタンとサイアザイドの配合剤は発売されませんでした)
  
クロルタリドンの思い出
日本ではクロルタリドンはハイグロトンとしてノバルティスから販売されていましたが、2008年に製造中止となってしまいました。
クロルタリドンはALLHAT*2試験でCCBやACE阻害剤と同等、αブロッカーより有意な降圧効果があると証明されていたにも関わらず、日本ではほとんど使用されなくなってしまいました。
国内の降圧利尿剤配合剤にヒドロクロロチアジドが使用されたことが一つの原因だとは思います。
クロルタリドンはヒドロクロロチアジドに比較してカリウムは下げにくいし、効果も長い(48時間)などのメリットもあったのですが・・・。
エビデンスがこれだけ叫ばれている中で、エビデンスがあるクロルタリドンが姿を消したのは不思議な気がしますよねー。

*1:Calcium Channel Blocker

*2:Antihypertensive and Lipid-Lowering treatment to prevent Heart Attack Trial

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