薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
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DPP4阻害薬(エクアとトラゼンタ)の適応拡大

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(ここからが記事本文になります)

2010年に公表、2012年7月から実施されている「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」。
第3相試験に「併用療法長期投与試験(非盲検併用療法長期投与試験)」が盛り込まれ、併用が想定される組み合わせについての長期投与試験を行うように求めています。
つまり、今後は治験薬と市販されている他の経口血糖降下薬(SU剤、ビグアナイド剤、グリニド系、αグルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジン系、DPP4阻害剤)を1年以上併用した場合の安全性を調査した上で承認が行われるようになるということです。
  
  
糖尿病薬の効能・効果を見ると併用にしばりがあるものが少なくありません。
昨日の記事を参考にしてみてください。
http://d.hatena.ne.jp/pkoudai/20130326/1364310039
  
先日、2013年2月28日、ビルダグリプチン(商品名:エクア)がこのガイドラインに準拠した国内長期試験の結果から、2型糖尿病の効能・効果を取得しました。
つまり、エクアは併用している糖尿病治療薬の有無、種類に関わらず服用可能になったということです。
さらに続いて、2013年3月25日、リナグリプチン(商品名:トラゼンタ)も同様の効能・効果を取得しました。
  

エクア・トラゼンタの元々の適応は?

ちなみに、元々の効能・効果を見てみると・・・
  

エクア

2型糖尿病
ただし、下記のいずれかの治療で十分な効果が得られない場合に限る。
①食事療法、運動療法のみ、② 食事療法、運動療法に加えてスルホニルウレア剤を使用
  

トラゼンタ

2型糖尿病(ただし、食事療法・運動療法のみで十分な効果が得られない場合に限る。)
  

エクア・トラゼンタの適応上の制限

エクアはSU剤としか併用できず、トラゼンタにいたっては単剤でしか使用できなかったんです。
効能・効果の点で他剤に出遅れていたこの二つが先に適応拡大したってのは面白いですね。
後ろからやって来て他のDPP4阻害剤をごぼう抜きしちゃった感じです。
  
  

エクアとトラゼンタの特徴

また、この二剤はDPP4阻害剤の中でも特徴的です。
ビルダグリプチン(商品名:エクア)はDPP4と共有結合(他剤は水素結合)することで、DPP4阻害剤の中で最も強い効果を発揮します。
リナグリプチン(商品名:トラゼンタ)は世界初の完全胆汁排泄型DPP4阻害剤で腎機能が悪い患者にも安心して使用することが可能です。
最も強い効果をもつDPP4阻害剤と腎障害患者への安全性をもつDPP4阻害剤。
  

エクアの特徴は?

エクアは専門医の先生を中心によく使われているイメージです。
一日二回という用法が欠点と言えば欠点ですが、既存のDPP4阻害剤の全てが一日一回で十分な効果を維持できるかと言えば微妙な部分もあるので、一日二回の用法でも効果が維持できる方がいいかもしれませんね。
一日二回の理由はビルダグリプチンが加水分解を受けてしまうためなのですが、DPP4の代謝回転を考えると半減期が長すぎても困りますね。(共有結合なので結合は基本的に不可逆)
  

トラゼンタの特徴は?

トラゼンタは超高齢者が多いうちの薬局では非常に使いやすい。
効果が弱いイメージがありますが、DPP4阻害剤の強さの差がどこまで影響するのかと考えると安全性重視の方が使いやすいのかもしれません。
特にSU剤併用の場合など腎機能によってDPP4阻害剤の濃度が急上昇→低血糖なんてリスクもありますから。
DPP4阻害剤は効果の個人差も大きい気がしますから腎機能の影響を除去できるのはありがたいです。
  

まとめ

エクアの処方はよく見るんですがトラゼンタの方はまだあまり見かけないので、今後は見る頻度が増えそうですね。

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