薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

このブログは薬局で働く薬剤師を中心とした医療従事者の方を対象に作成しています。
一般の方が閲覧した際に誤解を招くことのないように配慮しているつもりですが、医療従事者の方へ伝えることを最優先としています。
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テネリア

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少し前にテネリグリプチン(商品名:テネリア)の勉強会を受けました。
テネリアはDPP-4阻害剤で初の純国産!国内5番目のDPP-4阻害剤です。
アログリプチン(商品名:ネシーナ)もそうなのではないかと思っていたら、ネシーナは武田薬品がアメリカのベンチャー企業から買い取った薬剤のようですね。
  
  

  

テネリア=テネリグリプチンの特徴

作用時間の長さ

テネリアの売りは24時間持続する作用。
朝飲んでも晩の血糖まで下げます。
半減期の長さ(20mgで24.2時間、40mgで20.8時間)に加えて、結合親和性も高いので効果が十分持続します。
そこで謳っているのが、血糖管理は「どれだけ下げるか」だけでなく、「どのように下げるか」。
低血糖を起こさず、24時間持続して食後高血糖をさげてくれます。
HbA1cが低くても、食後高血糖や低血糖があると心血管リスクに繋がるようです。
半減期だけを考えると
リナグリプチン(商品名:トラゼンタ)>テネリグリプチン(商品名:テネリア)>アログリプチン(商品名:ネシーナ)>シタグリプチン(商品名:ジャヌビア/グラクティブ)>ビルダグリプチン(商品名:エクア)
結合親和性も含めた効果の持続を考えると、リナグリプチンとテネリグリプチンが抜けていますね。
  
  

血糖降下作用

効果の強さも特徴です。
今のところ最強はビルダグリプチンでしたが、テネリグリプチンはそれに次ぐ効果を持っているようです。
ビルダグリプチン>テネリグリプチン>アログリプチン、シタグリプチン>リナグリプチン
IC50で比較するとテネリグリプチンが最強のようですが、実用量ではビルダグリプチンが最強ってことでしょうか?
テネリグリプチンは用量依存的に効果を発揮することができるのも特徴の一つです。
  
  

排泄経路

排泄経路は胆汁と腎が1:1。
腎障害を持つ場合でもAUCが2倍になることはないので通常量で使用できます。
胆汁排泄のリナグリプチンと同様のメリットですね。
超高齢者に使う機会多いので、これは嬉しいなあ。
  

DPPの選択性

あとはDPPの選択性。
DPP-4以外にも、DPP-8やDPP-9が存在し、これらを阻害することで中枢症状、皮膚症状が現れてしまいます。
テネリグリプチンについてはDPP-8、DPP-9とDPP-4の阻害率を比較するといずれも160倍以上です。
他のDPP-4阻害剤と比較してみると…
リナグリプチン>アログリプチン>シタグリプチン>テネリグリプチン>ビルダグリプチン
この選択性がどこまで影響するかはよくわからないところがありますが、どうなんでしょうか?
ですが、未知の副作用に対する懸念を考えると、選択性が高いに越したことはないとは思います。(そうじゃない考えもあるとは思いますが)

あと、一剤形(20mg)の発売なので在庫管理の意味でもありがたいですね。
  

効能・効果の範囲

DPP4阻害剤と言えば気になる適応ですが、
単剤、SU剤との併用、チアゾリジン系との併用となっています。
この併用の縛りはなんなんでしょうね。
他の薬剤にはないのにDPP-4阻害剤だけ。
最初に発売されたジャヌビア/グラクティブの承認の取り方がうまかったのかな?
結果的には他社の使用にブレーキをかけた形ですね。
将来的にはこの適応の縛りもなくなるという噂もありますがどうなることやら。
  

まとめ

個人的には20mgの一剤形、腎機能による用量調節不要、強い血糖降下作用を持つ使いやすい薬の印象です。
純国産ってのも個人的には応援したいところです。
  
DPP-4阻害剤はこの後も二つ発売が控えている激戦区、どうなるでしょうね?

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