薬剤師の脳みそ

調剤(保険)薬局の薬剤師が日々の仕事の中で得た知識や新薬についての勉強、問題を解決する際に脳内で考えていることについてまとめるblogです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。基本的に薬剤師または医療従事者の方を対象としています。

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世界初のβ3アゴニスト ベタニス~新規過活動膀胱治療薬

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アステラス製薬は6月29日、過活動膀胱(overactive bladder/OAB)治療剤「ミラベトリック」(一般名=ミラベグロン)が米国で承認を取得したと発表した。
・・・・・・ミラベトリック?
う~ん・・・。
ああ、ベタニスのことか!
  
  

ベタニスの特徴

ミラベグロン(商品名:ベタニス)は日本では2011年9月に発売された世界初のβ3刺激による過活動膀胱治療薬はです。
  
下部尿路機能障害(LUTD)の代表として挙げられる過活動膀胱(OAB)の治療薬としては、現在、ムスカリン受容体拮抗薬が最も多く使用されています。
ただ、これらの薬剤を使用する上での一番の問題は、抗コリン作用により口腔内乾燥、便秘、霧視などの副作用が起こることです。
また、コントロールされていない前立腺肥大症に代表されるように、排尿機能に悪影響を与えることも知られています。
  
近年発売された、コハク酸ソリフェナシン(商品名:ベシケア)、酒石酸トルテロジン(商品名:デトルシトール)、イミダフェナシン(商品名:ウリトス/ステーブラ)では受容体選択性、膀胱選択性を高めているが、それでも副作用は少なくありません。
  
  

ムスカリン受容体拮抗薬とβ3受容体作用薬の違い

排尿を行う際、アセチルコリンが膀胱のムスカリン受容体を刺激することで、膀胱が収縮します。
アセチルコリンがムスカリン受容体を刺激するのを防ぐことで、膀胱収縮を抑制するのが、ムスカリン受容体拮抗薬です。
  
それに対し、畜尿の際は、ノルアドレナリンが膀胱のβ3受容体を刺激することで膀胱が弛緩します。
OABの場合は畜尿の際にもアセチルコリンが放出され続けてしまうために膀胱括約筋が弛緩せず、うまく畜尿を行うことができなくなることが知られています。
そこで、畜尿の際のノルアドレナリンの作用を助けて膀胱を弛緩させるのがミラベグロン(ベタニス)というわけです。
抗コリン作用を有さないために、従来のOAB治療薬がもつ副作用を回避できるのが一番のポイントです。
  
  

ベタニス使用時の注意点

抗コリン作用がないのであれば使いやすい!
といいたいところですが、けっこう注意点が多い薬剤となっています・・・。
  
  

警告

ラットを用いた動物実験で、精嚢、前立腺および子宮の重量低値あるいは萎縮等が見られたため、「生殖可能な年齢の患者への投与は避ける」よう警告が出ています。
つまり、若い人には基本的には使われることがないということになりますね。
処方時にここにはすぐ気付けるようになっておきたいです。
  
  

禁忌

特徴的な禁忌が多く存在します。
  
まず、「重篤な心疾患を有する患者」が禁忌となっています。
心拍数の増加やQT延長・心室性不整脈の報告があるためのようです。
  
「妊婦及び妊娠している可能性のある婦人」も禁忌となっています。
動物実験(ラット、ウサギ)で、胎児において着床後死亡率の増加、体重低値、肩甲骨等の屈曲及び波状肋骨の増加、骨化遅延(胸骨分節、中手骨、中節骨等の骨化数低値)、大動脈の拡張及び巨心の増加、肺副葉欠損が認められているためです。
  
「授乳婦」も禁忌です。
これは、動物実験(ラット)で乳汁移行が認められていること。
また、授乳期にミラベクロンを母動物に投与した場合、出生児で生存率の低値及び体重増加抑制が認められているようです。
  
血中濃度が過度に上昇するおそれがあるため、「重度の肝機能障害患者(Child-Pughスコア10以上)」も禁忌です。
つまりは、重篤な肝障害ですね。
  
さらに、CYP2D6の阻害作用を有していることから、「フレカイニド酢酸塩(商品名:タンボコール)、プロパフェノン塩酸塩(商品名:プロノン/ソビラール) 」については、血中濃度の上昇が見られるため禁忌となっています。
CYP2D6阻害であれば、三環系抗うつ剤なども併用される可能性があるので注意が必要ですね。
  

粉砕は禁止

ベタニスは徐放製剤なので、一包化はできても、粉砕・半割は付加となります。
高齢者に処方されるケースも多そうなので、投薬時に嚥下の確認はしておきたいですね。
自己判断で割って飲んだりしているケースもあると思います。
  
  

まとめ

けっこう注意点が多い薬剤ですが、やっぱり抗コリン関係の禁忌・副作用がなくなるのは嬉しいですね。
特に高齢者への使用が多い薬なんで、認知機能の低下等の問題も気になりますから。
抗コリン薬との併用もだんだんと見られるようになっています。
  
ただし、初回投与の際にはいろいろとチェックが必要なので注意したいですね。

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