薬剤師の脳みそ

調剤薬局で働く薬剤師が脳内で考えていることや仕事の中で得た知識をまとめるブログです。できるだけ実用的に、わかりやすく、実際の仕事に活用できるような情報になるよう心がけていきます。

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ヘリコバクター・ピロリの除菌療法

実務実習を受け入れていると、基本的なことをしっかり理解するのは大事だよなあと気づく瞬間が多いです。
ピロリ除菌も慣れてしまっているけれど、学生と話していると新鮮な気持ちで考えることができるよね。

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みなさん、ご存知のピロリ菌。
正式名称はヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)。
こいつが引き起こす疾患は萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの炎症性疾患から、胃癌やMALT(Mucosa Associated Lymphoid Tissue)リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫などのがんに及びます。
でも、疾患が現れるのは、保菌者の約3割程度。
残りの7割の人は症状が現れない健康保菌者と言われています。

うちの薬局でよく目にする流れは、

   胃の不調を訴えて治療開始
        ↓
 内視鏡+生検(迅速ウレアーゼ試験)
        ↓
      ピロリ菌陽性
        ↓
       一次除菌
        ↓
     一ヶ月(PPIは休薬)
        ↓
    一般検査(尿素呼気テスト)
     ↓        ↓
    陽性      陰性(成功!)
     ↓
    二次除菌へ

って感じです。


一次除菌:PPI+AMPC+CAM
プロトンポンプ阻害薬(PPI)とペニシリン系抗生物質のアモキシシリン(AMPC)とマクロライド系抗生物質のクラリスロマイシン(CAM)を組み合わせた方法。
 PPI → ランソプラゾール 60mg 2× or オメプラゾール 40mg 2× or ラベプラゾール 20mg 2×
 AMPC → 1500mg 2×
 CAM → 400mg 2× or 800mg 2×
日本ではランソプラゾール+AMPC+CAMをセットした薬剤としてランサップ400(CAM400mg)とランサップ800(CAM800mg)が使用されています。

PPIを用いるのはアモキシシリンの抗菌作用が、pHが低くなるほど減弱するため。
PPIを高用量で用いることで胃内の酸度を下げてその抗菌活性を高めるのが狙いです。
あと、PPI自体にも弱い除菌作用があります。

開始当初は90%の除菌率だったが、クラリスロマイシン耐性菌の増加により、除菌率が70%まで低下(3割がCAM耐性菌)しているという報告もあります。
CAM耐性菌についてはLactobacillus gasseri OLL2716(LG21乳酸菌)を接種することで、除菌率が54%まで上昇することが話題になりました。
たしか、連日ヨーグルトが売り切れだったような・・・。
参考リンク → http://www.lg21.jp/

喫煙により除菌率が半分になるという報告もあるので一次除菌中はタバコは避けるべきです。
これを機に禁煙をすすめるのもいい方法かもしれません。
抗生物質多いので禁煙時の便秘と相殺できるし、気管支感染症も減です。
一次除菌の薬剤として日本ではランサップ(PPI ランソプラゾール)が販売されています。
喫煙中の場合はCAMを800mg使用すると成功率があがるという報告があります。

飲み忘れも除菌率を低下させるリスクファクターです。
飲み忘れにより、ピロリ菌の耐性化を招きます。

あとは、副作用。
下痢、嘔吐、味覚障害が代表的なものです。
この場合でも、重要なのは、自己判断で服薬を中止しないこと。
飲み忘れと同様、除菌率を低下させ、ピロリ菌の耐性化を招きます。

基本的に一発勝負の治療なので、服用する一週間をきちんと準備することが大事なのではないでしょうか?
飲み会が何回もある、とか風邪の治療中に服用する必要はありません。
飲みやすいタイミングを考えて一週間頑張ってもらうべきだと思います。

除菌後は一ヶ月以上間を空けての再検査です。
ほとんどが呼気検査だと思うのですが、注意がひとつ。
ピロリ菌の静菌作用を持つ薬剤の服用を検査前二週間は中止する必要があります。
その代表的なものがPPI。
ですので、除菌治療後の胃腸症状にはPPIではなく、H2ブロッカーを用いるのが一般的です。
ほかに静菌作用のあるものとして、抗生物質、メトロニダゾール(商品名:フラジール)、ビスマス製剤、エベカナトリウム(商品名:ガストローム)があります。
これらに関しても、検査前二週間は休薬を忘れないように。

他の注意点として、ペニシリンアレルギー、マクロライドアレルギーの患者さんは使用できないこと。
クラリスロマイシンはCYP3A4阻害作用により様々な相互作用を引き起こすなどがあります。


二次除菌:PPI+AMPC+MNZ
クラリスロマイシン耐性菌を対象とするものなので、CAMをメトロニダゾール(MNZ)に変更します。
 MNZ → 500mg 2×
日本ではランソプラゾール+AMPC+MNZをセットしたランピオンパックが使用されています。
メトロニダゾールによる副作用としてジスルフィラム様作用(アンタビュース様作用、アセトアルデヒデ症候群)があります。
メトロニダゾールはアルコール分解に関わるアルデヒドデヒドロゲナーゼを阻害し、アルコールをアセトアルデヒドとして蓄積させてしまいます。
結果、急性アルコール中毒のような心悸亢進、呼吸困難、頭痛などの症状を引き起こします。
ですので、二次除菌中〜終了後三日間は必ず禁酒が必要となります。


二次除菌でもダメだった。
つまりは、CAM耐性、MNZ耐性のピロリ菌を保菌している人はどうすればいいか・・・ということで、三次除菌も検討されていますが、現在は保険外の治療となります。
いずれもニューキノロン系抗生物質を加えたもので、
 PPI+AMPC+STFX(シタフロキサシン)
 PPI+AMPC+LVFX(レボフロキサシン)
などがその例です。


近年の研究では、PPIの代謝に関わるCYP2C9の遺伝子多型を調べ、それに合わせたPPIを選択するテーラーメイド医療によるピロリ菌除菌も研究されています。

また、次クエン酸ビスマス140mg+メトロニダゾール125mg+テトラサイクリン125mgを1日4回服用することでCAM耐性ピロリ菌に高い効果を発揮したという報告もあります。
海外ではこの3剤を充填したカプセル剤(パイレラカプセル)も販売されています。


ピロリ菌は唯一、発ガンに関わることが判明している細菌です。
また、ピロリ菌を持っている方が花粉症になりくいとか、持っていると蕁麻疹の原因となるとか、まだわかっていないことも多い細菌です。
今後、どのような研究がなされていくか、とても楽しみにしています。